- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784577050002
作品紹介・あらすじ
りぼんちゃんはさ、オオカミといっしょに暮らしているんだよ
朱理のクラスに転校してきた大きなりぼんの女の子、理緒。
クラスでお子ちゃまあつかいされてきた朱理が理緒のお世話係になり、
朱理の世界はあざやかなものへ変わった。
けれど、ある出来事から理緒がかかえていた痛みを、暗闇を、
朱理は知ってしまう。
この世にあふれている〈オオカミ〉とたたかうには?
朱理が、理緒が出した答えは———?
村上雅郁、20代最後に贈る「祈り」の物語
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
小柄でなにかとあかちゃんあつかいされる6年生の染岡朱理(あかり)
転校生でリボンかざりの髪ゴムをした中村理緒(りお)と仲良くなる
二人で楽しい毎日をすごしていたが、朱理はあるとき理緒の抱える深く重い悩みを知ってしまう
「りぼんちゃんはね、オオカミといっしょに暮らしているの」
「どうしたら、あかずきんちゃんにりぼんちゃんを助けられると思う?」
理緒の力になりたい朱理は必死で物語をつむぎ〈オオカミ〉と対峙するが……
デビュー作『あの子の秘密』(2019年)が第49回児童文芸新人賞(2020年)を受賞、2作目の『キャンドル』(2020年)も話題になっている大型新人が20代最後に贈る一冊は、複雑になりがちな劇中劇をたくみに取り入れた希望の書
表紙カバーのりぼんちゃんと目があうと、裏表紙ではあかずきんちゃんがほっぺたをみょーん
イラストの早川世詩男と装丁の城所潤が“ガールミーツガール”の物語に魔法をかけて、思わず手にとってみたくなる“本”にしあがっている
本体の表紙から裏表紙に続くイラスト、扉の二人のイラストは読後にあらためて見直すと味わい深い
舞台はみたび粟船駅近くの甘縄小学校
プールに甘縄行政センターに甘縄図書館、ヤマカワマーケット、県立粟船ボタニカルセンター……地元に土地勘のある読者にはたまらない
以下、ネタバレにならない範囲で、名セリフ集
自らが望まない場所で、苦しみながら生きつづけることと、そこから逃げ出して死ぬこと。
そのふたつは、どちらがまだましなのかな。
「あなたは、いつまでもずっと、小さなわけでも無力なわけでもないわ」
「あとは、きみが一歩踏み出すだけだよ。だいじょうぶ。きっとうまくいく」
「だったらなに? 弱いことっていけないことなの? ちがうでしょ! いけないのは弱い人を傷つける人のことだし、こまっている人を見捨てる人のことだよ!」 -
知識は暗闇を照らす光
6年生の朱理の大切な友達は、転校してきた理緒だ。ある日、理緒が父親の心理的虐待に悩んでいることを知った朱理は、大人たちに助けを求めようとするが……。知ること、おこること、たたかうこと、そして言葉の大切さを描いたお話。
「どうせわかってもらえない、じゃダメなんだ。
わたしはわかってもらわなきゃいけない。」
子どもに読ませるには重たすぎるかもしれないと躊躇する気持ちが芽生え、容易に勧められないが、虐待などに直面している子やその友達のリアルはこの物語に描かれているとおりなのかもしれない。
子どもの言葉に心と耳を傾けようとしない大人に、なんとかして気持ちを伝えようとする朱理の姿が印象的だったし、大人の自分が読むと、子どもと丁寧に向き合うことの難しさや大切さが感じられた。 -
村上雅郁さんの作品は、どれも私の心に響きます。
この作品も、主人公の想像の物語が挿入されていたりして、普通なら私は苦手な方ですが、主となるストーリーのおかげか今までの2作品と同じく一気に読みました。
これは児童書だけど、大人に読んでほしいと思います。
-
いい意味で裏切られた。大好きになった友だちが親から精神的な虐待を受けていることを知ったあかり。あかりは戦う。わかってもらえなくても、信じてもらえなくても、友だちを救うために自分の言葉で大人たちにちゃんと伝える。そして大人たちが動き出す。あかりの強い想い、言葉で伝えようとする勇気、素晴らしかった。世間では救えなかった虐待や児相の無力さ、可哀想な子どもたちがクローズアップされることが多いが、それ以上に児相や社会の制度のおかげで救われている子どもたちだってたくさんいる。「大人の身勝手さに立ち向かう子ども」のシナリオが溢れる世の中、信頼に値する大人や子どものために奮闘する大人だってちゃんといる。この本を通して子どもたちに伝わったらいいなと思う。おもしろかった。
-
かわいい表紙のイラスト、そして『りぼんちゃん』というかわいいタイトル。りぼんのかわいい女の子のお話と思っていたが裏切られた。良い意味で。少女たちの一人称がうち、というところにはひっかかりがあったが、(うちってそもそも関西の方言な気がするので)内容はすごく、社会派。背が低くて赤ちゃん扱いされる主人公の朱理と転校生理緒の友情の物語。朱理は物語を書いていて、自分を赤ずきんちゃん、理緒をりぼんちゃんとして登場させている。ある日、朱理が物語を書いていることを理緒に話したところ、理緒が「りぼんちゃんはオオカミと暮らしている」と言ったところで、りぼんちゃんこと理緒の抱える闇が少しずつ明らかになっていく……。子供は知らない間に大人になる。理緒の未来が明るいものであることを祈らずにいられない。
-
かわいい表紙とタイトル、序盤のあかずきんちゃんとおばあちゃんの話などからは想像できない内容。
読み進むにつれてどんどんリアルな苦しい方向へ行くのでびっくりしたけど、一気に読んでしまった。
小学校高学年から中学生に読んでほしい本。 -
表紙の絵がかわいかったから、もっと楽しい話かと思ったら、つらい話でびっくりした。
理緒は、お父さんが虐待するのに、がんばっていたのが、大変だしかわいそうだと思った。お母さんのことをかばったのに責められて、ショックだったはず。周りから見たら、お母さんもお父さんに虐待されているからしかたないけど、かわいそうすぎる。元気になってうれしかった。
理緒を助けるのに一生懸命だった朱里は、赤ちゃんみたいで、話を聞いてもらえない子だった。だけど、がんばってみんなを味方にすることができた。がんばってた姿が、かっこよかった。
朱里は、物語に助けられてた。ぼくも、物語に助けられることがある。みんな本を読めばいいのにな。(小6) -
子どもでも大人でも誰かに頼るって、すごく難しい。
朱理ちゃんも理緒ちゃんも、環境は違うけれど、どちらも大人にあきらめていて。でも、悔しいけれど自分の力ではどうにもできないこともたくさんあって。
"余計なことしないで"の気持ちも、うん。となるし、ふたりとも、相手は違うけれどそれぞれが言われているところにも、うぐ。っとなる。自分だったら躊躇しちゃうだろうな、ということを朱理ちゃんは、すごかった。
子どもでも大人でも、はっ。とさせられることたくさんある一冊だった。
知らないより知ることの大切さ。
優しさは自分ができるとき、誰かへつなげる。
"助けて"の心、の自分の気持ち。(その、助けて、の状況
が自分でもわからないことある。)
うんうん。うんうん。ってうなずきながら読みました。