残り者 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575669466

作品紹介・あらすじ

時は幕末、徳川家に江戸城の明け渡しが命じられる。官軍の襲来を恐れ、女中たちが我先にと脱出を試みるなか、大奥にとどまった「残り者」がいた。彼女らはなにを目論んでいるのか。それぞれ胸のうちを明かした五人がが起こした思いがけない行動とは――激動の時代を生きぬいた女たちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 朝井まかての大奥もの、というか、幕末ものでしょうか。
    仕事に生きてきた女性たちの、江戸城最後の日を描きます。

    江戸城の無血開城が決まった後。
    天璋院篤姫が出立前に一同を集め、粛々と城を出ていくように諭します。
    荷物はすべて後から送ってくれるはずだからと。
    天璋院が去った後、奥勤めの女中たちは皆右往左往して、出来る限り荷物を持って我先に出ていくのでした。

    呉服之間に勤めるお針子だったりつは、もう一度部屋を確かめたくなり、戻ります。
    お蛸という女中が天璋院の猫を追いかけているのに出くわし、一緒に捜し歩きます。
    すると、ちかという女中もまだ残っていました。
    さらには御中臈のふきと、和宮のほうの呉服之間に仕えていたもみぢがいました。

    御中臈のふきは、りつなど顔を見たこともないほど雲の上の女性。憧れの存在です。
    もみぢは、会ったことこそないけれど、呉服之間には腕利きがいると聞き及んでいました。
    5人の女性が残った理由。
    まだすぐには去ろうとしない理由は。

    大奥というと、美しい女性が豪華な衣装で上様に侍るイメージですが。そういう女性は数限られていて、実際はその世話をする組織で働いている女性が多い。
    キャリアウーマンの集まりでもあったのでした。
    その職場が失われるとき。

    無念さやこだわり、別れを惜しむ気持ち。
    突っ張っていたのが、しだいに打ち解けて語り合い、2日目を迎え‥
    荒々しく乗り込んできた武士たちを物陰から見る。

    後の世にまた再会するエピローグが、とても素敵です。
    お気に入りの作品になりました。

  • 朝井まかて、 初読み。今回手に取ったきっかけは、舞台が「大奥」だからだったのだが、よくある女のドロドロものというわけではなく…5人の女中にスポットをあてた、きめ細やかなお仕事小説であった。
    時は幕末、大奥の最後の日。そこにとどまる女中達の思いとは…。
    それぞれの女中達の過去と今のエピソード、そして幕末の大奥が何故終わりを迎えることとなったのかが丁寧に語られる。分かりやすい派手さはないが、時代物なのに女中達にすごくシンパシーを感じている。己の仕事に対するプライド、愛着のある職場(大奥)が失われることの心許なさは、現代にも通じるのではないか。
    何より、「残り者」の5人の女中達のキャラクターがよい。仕事も立場も年齢も異なる彼女達、この非常時だからこそ知り合えた関係。この期に及んで何を企んで城に居残っているのか…己の感情をぶつけ合う彼女達。あんまりな罵りにドン引きした場面もあるが、とことんさらけ出した結果、生まれた絆。スリリングなクライマックスからのエンディングへの展開が好きだ。
    解説の言葉を借りるなら、私はこれまで大奥を「愛の狩人が集う華やかな場所」と捉えていた。駆け引きだらけの愛憎ドラマも好きだけど、今回改めて、大奥は「職場」なのだなと思った。今までとは違う視点から大奥を見ることができて、とても満足だ。朝井作品、これからもどんどん読んでいきたい。

  • コンプリートってこと 最後になってしまったけど、残り者を読んで朝井まかての文庫本を読み終える。表示で決めるのは良くないので こんなに江戸のど真ん中の話だとは、明治維新かなとか勝手に思いました、大奥に中奥に本丸に、構造も難しい 難しいけど順繰りとごふくのまとか出て来るから、楽しいし40歳になるリツがフキの本当の理由を解き明かすラストに惚れた。百も承知二百もガッテン。不思議な5人だったら でも心意気が結び付けてずーっと長く友になるってこと フキのテヤンデェーが1番好きかも

  • 江戸城明け渡しの前夜、それぞれの思惑で場内に残る女性たちが5人。
    浅田次郎著『黒書院の六兵衛』を連想してしまうが、内容は全く別物。
    著者は、大奥の風習や作法など、さらにそこで働く女性たちを職業人と捉え、その仕事ぶりを、読者に紹介してくれる。
    それだけでも興味深いが、その5人がどのような行動をとるのかと、最後まで読ませてくれる。
    エピローグは、ホッとする気持ちのいい読後感となる。

  • おお!! 5人の残り者各々が主人公の短編が、ストーリーとしては繋がっていて、非常に読み進めやすかった。大奥ってどうも興味をそそられる!! クセ強のキャラ揃い、なかでもふき殿最高(^^)最後の最後もいい終わり方だった!!

  • 歴史の「その時」を描くとともに、しっかりしたお仕事小説でもあった。
    多くの人に読んでほしい良作。

    幕末、開城前夜の江戸城大奥。
    大奥はハーレムではなく、女性が自らの才知と器量を発揮し、矜持を抱いて働く、数少ない場だった。
    政治と戦争の影響によって、働く場が消失する。
    その場に臨んだ5人の大奥女中が、去り難く、信じたくない思いで、職場であり家であった大奥に留まる。
    彼女たちの思いに共感した。
    いよいよ開城の日、占領する側の男たちの態度ときたら! 憤りを禁じ得なかった。
    女性の働く場を土足で荒らした男たちに、言い得ぬ怒りを感じるのは、現代の諸々を想起させるからと思った。

  • 大奥と呼ばれる職場で江戸城を明け渡す場に居合わせた5人の出自の異なる女性たちの物語。それぞれが如何なる思いで城に残ろうとしたのか、そして、残る者がいるであろうと予測した天璋院の思惑とは。私の知る大奥とは、女性の園で殿様にかしずくだけの所であると思っていたのだか、5人のそれぞれのキャラクターを通して大奥のシステムを垣間見る事ができた。なかなか面白い本であった。さて、この5人は無事に脱出ができたのであろうか。結末やいかに・・・それは見てのお楽しみ。


  • 大奥最後の日に残った5人の奥女中の会話で彩られる本作。

    一人称である「りつ」の目線で物語が描かれるが、1つの会話から枝が広がり話題がコロコロと転がっていく。テンポは良くないのだが、この感じが「りつ」の控えめでありながらも思慮深く武家ならではの芯の強い性格を色濃く反映しており、また話の流れを崩さずに史実を読者に伝えていく形式が非常に上手い。

    大奥でしか生きてこなかった人が急に外の世界に出される。加えて逆賊の一味という刻印を背負っていく。歴史を学ぶ際に彼女らの立場に立って考えたことはなかったが、非常に残酷で恐怖の状況である。それでも前に進まなければならない、皆同じ立場なのだから、と対局的に場を観察し、行動できる「りつ」は本作の主人公たる理由があると感じた。

  • 幕末、江戸城明け渡しの前夜

    大奥に残った5人の女性たち「残り者」
    彼女たちは何故残ったのか。

    大奥勤めという特殊な境遇なれど
    仕事に誇りを抱く女たち。
    江戸城を追われるくやしさ

    女たちの矜持が美しい

  • 江戸城開城の時、大奥に残った女性が5人いた。
    夫々の思いがあり、城を出ることが出来なかった。
    その5人の江戸城での勤めや開城の時何が起こったかをそこに居たかのように、また女性という立場から捉えていて、
    興味深く面白かった。最後にその後話もあり、こうやって江戸は終わっていったのだなあと感慨深い。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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