翼がなくても (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575522945

作品紹介・あらすじ

陸上200m走でオリンピックを狙う沙良を悲劇が襲った。交通事故に巻きこまれ、左足を切断、しかも加害者は幼馴染みの泰輔だった。アスリート生命を絶たれた沙良は恨みを募らせる。そんな泰輔が殺害され、高額な保険金が支払われた。犯人は誰なのか? また、絶望の底から再起を図る沙良の運命は? どんでん返しの先に感涙のラストが待つ傑作長編ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーというより、障害者スポーツを通した、主人公のスポ根の物語(笑)
    スポーツもののベタな展開には弱いんです。
    わかっていても、最後、熱いものがこみ上げます。
    さらに、本作は犬養刑事Vs御子柴弁護士。これまた面白い。

    陸上200Mでオリンピックを狙っていたアスリートの沙良は、幼馴染の泰輔の運転する車に轢かれ、左足を切断。オリンピックへの道が絶たれます。
    しかし、泰輔は謝罪もないまま、何者かに殺害されてしまいます。
    犯人は沙良?
    沙良の家族?

    目標を失った沙良ですが、パラリンピックに出場する目標を見つけ、レース用の義足を発注し、トレーニングを開始します。
    義足の費用はどこから?

    泰輔には生命保険金が掛けられていて、その管理人が御子柴。
    まさか、御子柴が?

    という展開ですが、本作はその謎解きがメインではありません。
    障害者スポーツの実態。
    義足ランナーとしての再起。ライバルの出現。挫折。そして、アスリートの沙良の勝利への執念。
    この辺は、解説にもコメントありましたが、「さよならドビュッシー」と同じような展開。

    泰輔の死の真相はトリックは別として、おおよそ途中からわかります(笑)

    沙良のアスリートとしての力強い生き方に心打たれます。
    ラストシーンはぐっとこみ上げるものがあります。

    とってもお勧め!

    犬養刑事、御子柴弁護士の性格を理解してる状態で読んだほうがより良いと思うので、それぞれのシリーズを先に一度は読んでおくのが良いでしょう!

    • yyさん
      masato さん

      こんにちは。
      masatoさんのレビューを読んで、さっそく図書館に予約を入れました。
      犬養刑事 vs 御子柴弁...
      masato さん

      こんにちは。
      masatoさんのレビューを読んで、さっそく図書館に予約を入れました。
      犬養刑事 vs 御子柴弁護士 だなんて、
      文字面を見ただけでもわくわくです。
      ありがとうございます☆彡
      2023/01/15
    • masatoさん
      yyさん
      コメントありがとうございます。

      是非楽しんでください。
      お勧めです!
      yyさん
      コメントありがとうございます。

      是非楽しんでください。
      お勧めです!
      2023/01/15
  • 犬養刑事出てる!
    御子柴弁護士出てる!
    これで、面白くない訳がない!

    翼…なくても…ってなってるけど、今もあるんとちゃうかな。
    確かに、凄い事故して、翼がなくなったように見えたけど。
    また、違った翼を手に入れたというか、そういう物理的なものやない気がする。
    その翼を使える人は限られているのかもしれんけど、彼女は使えた!
    でも、使えるようになったのは、ある人の手紙かも…

    確かに、そんなの謝って済むことやないしな…
    でも、これはこれでツラい(T . T)

    御子柴さん、困った時は、彼女をよろしく〜

  • 絶望のどん底に沈むアスリートの復活と
    事故を起こした加害者の謎の死。
    この二つが並行しながら物語が進みます。

    将来を嘱望される陸上競技のアスリート、沙良。
    勤め先企業の名前を背負った全国大会出場が迫る。
    そんな中、沙良は自動車事故に遭ってしまいます。
    事故の加害者は、幼なじみの隣人。

    殺人事件が絡み合うことで、
    単純なスポコン物語にしないあたりは、さすが中山氏。

    ただ、中山七里作品を何冊か読んできた者としては
    犬飼 刑事や、御厨 鑑識官、御子柴 弁護士の登場で
    関心が一挙に刑事事件の方に向かってしまいます。
    とりわけ、犬飼と御子柴のやり取りには目が離せない。
    「御子柴先生、どこか落ち着いた場所で話がしたいのですが」
    「わたしはしたくない」
    これ、これ! 御子柴のこの不愛想! 諦めない犬飼。
    つい拍手したくなってしまいます。

    そして、本来はこちらの方が主であろう 沙良のストーリー。
    テニスが好きな私には、ある選手の姿が重なりました。
    引退した車椅子テニスプレイヤー、国枝慎吾 選手です。

    9歳の野球少年が脊髄の病気に罹り、両足に障害を持つ身に。
    11歳で車いすテニスを始めた国枝さんは宣言します。
    自分はプロになる、と。
    実際、テニス4大大会すべてで優勝。
    「生涯ゴールデンスラム」を達成しました。
    日本のパラスポーツの認知度が格段に上がったのは
    国枝選手のお陰だと言ってもいいのではと思います。

    さらに、国枝さんの後を追いかける選手がいます。
    サッカー少年だったという小田凱人(おだ ときと)選手。
    16歳の小田選手は、今、車椅子テニス会のホープです。
    物語の沙良さんから話が逸れてしまったけれど、
    現実の世界で障害と向き合いながら世界を目指す選手たち。
    応援しています!

  • 感動した。読み終わったあと、爽快感と切なさとで胸が熱くなった。

    日本代表を目指す陸上200メートルの選手沙良は、幼なじみの泰輔の運転する車に轢かれて左足を切断した。加害者の泰輔本人や母親から賠償も謝罪すらなく、一時は絶望し生きる希望を失った沙良。
    そんな時、加害者の泰輔が自宅の部屋で刺殺死体で発見される。

    警察からは泰輔を恨む理由のある関係者として疑いを持たれる中、沙良は義足で走るパラアスリートのことを知り、自分もパラアスリートとして陸上に復帰することを決意する。
    そこからの沙良が本当にすごい。
    たった一人で競技用義足を製作する技術者を見つけ出し、次はその義足の限界を悟ると世界的権威のもとへ義足製作とコーチングの打診にまで行ってしまう。無謀と言えば無謀。でも、沙良のひたむきさと情熱には感嘆し涙がでた。
    そこから沙良はどんどんストイックに日本のトップパラアスリートへと上り詰めていく。

    何が彼女をそこまで頑張らせるのか…
    そこの答えは終盤に明かされた。その真実にまた涙。
    こんな悲しい事故が起こる前に泰輔を助けることはできなかったのか。

    さすがは中山七里先生。ただのパラアスリート誕生物語ではないところが、さらに感動を深くする。
    御子柴弁護士、今回も悪かっこよかった!

  • 実業団の女子200メートル選手 市ノ瀬沙良(20歳)は、オリンピックを目指す若手有望株だったが、隣家の幼馴染み 相楽泰輔が無免許で運転するライトヴァンに轢かれて左足切断、アスリートの夢を絶たれてしまう。沙良に謝罪の一言もない泰輔も、何者かに殺害されてしまう。やがてパラリンピックに出場するという新たな夢を見つけた沙良は、絶望の淵から何とか這い上がり、特注の義足を付けてトレーニングを再開した。

    中山作品レギュラーの犬養刑事・御子柴弁護士が登場するが、ミステリーの要素は弱かった。半分くらい読んだところで結末は大体分かったし、犬養の推理もご都合主義的でちょっとなあ。むしろ本作、アスリート沙良の凄まじい執念が光るスポ根小説と捉えるべきかな。「わたしの身体はわたしのものです。どう使おうが、酷使したせいで寿命が短くなろうが、わたしの勝手です」(by沙良)。

  • 陸上200m走でオリンピックを狙う沙良。幼なじみの泰輔が運転した車の事故により左足を切断することになった。沙良は泰輔に激しい怒りをぶつけるが、泰輔が死体で発見される。沙良は障害者スポーツに光を見出す。泰輔を殺した犯人は? そして沙良は障害者スポーツでのライバル選手に勝てるのか。
    犬養刑事と御子柴弁護士が出てくるとは思わなかったな。その二人のやりとりと、沙良がどう変わっていくかが読み応えあり。音楽のお話同様、走るシーンは臨場感たっぷり。沙良の経験するどん底からの這い上がり、一連の心の動き、すっぽり物語の中に入り込んでしまった。刑事さん弁護士さんは(豪華な)脇役で推理ものというより一人のパラアスリートの物語かなあ。盛り沢山な一冊。読んでよかった。

  • 事故で片足を失った一之瀬紗良の、アスリートとしての再生を描いた作品
    どんでん返しの要素は少なめで、爽やかなスポーツ青春物語のようです。
    トリック以外の顛末は途中からなんとなく予想できました。

    泰輔の人柄について触れられたのがほぼラストだけだったので、あまり泰輔への思い入れや同情はありませんでした。
    しかし、自分の命を捨ててでも誰かの人生を支えたいと願った泰輔の気持ちを思うと少し切なくなります。

    紗良は20歳そこそこにしては、随分大人びた考えをするなと思いました。

    好きなキャラ、御子柴がわき役で登場したのは嬉しかったです。

  • これほど被害者の存在感がないミステリーもないと思うけど、パラスポーツを扱った作品としては面白かった。パラアスリートはある意味サイボーグ。道具の良し悪しで勝敗が決ししまう側面もあるけど、それを駆動するのはやっぱり人なんだよね。

  • 一ノ瀬沙良は、西端化成陸上部に所属する陸上200mのスプリンター。
    しかし、ある日、大きな悲劇が彼女を襲う。
    かつての幼馴染みの相楽泰輔の運転する車にはねられ、何と左足(膝下)を切断することに...

    スプリンターにとって、足がどんなに大切なものか...
    沙良は、悲嘆にくれる日々を送るが、ある日、加害者の泰輔が、何者かに刺殺される事件が発生する。
    一体誰が、何のために?

    やがて、沙良は、障害者スポーツの世界を知ることにより、走りに特化した義足をまとい、新たなスタートを切ることに。

    一見、障害を乗り越える苦難の物語と思いきや、しっかり『ミステリー』になっているところが、さすが中山七里氏の作品ですね。
    最後のどんでん返しも健在です。
    まさか、あの人が、真犯人とは!

    御子柴弁護士や犬養刑事など、他の作品のお馴染みの面々が登場するのも、嬉しい限りです。

  • 昔、「羊の皮をかぶった狼」という車のキャッチフレーズがあったが、この小説はさしずめ「スポーツ小説の皮をかぶったミステリー」かと。
    主人公は、交通事故によって片足にギブスを装着しなければならなくなったアスリート。彼女の、もがき苦しみながらも走ることへの熱量溢れるパフォーマンスに圧倒されるばかり。
    彼女を通して、障害者スポーツの課題問題点も提示される。出場するまでのアスリートたちの背景に思いを致し、今年のパラリンピックは、より深く見ることができるのでは。
    本筋は、彼女の事故の加害者が殺害されるという事件。
    保険金も絡むその真相を巡って、御子柴弁護士と犬養刑事が対立!勝敗はいずれに。ファンにとっては、贅沢ともいえるシチュエーション。
    期待し、予想される結末に、読後感も爽やかに。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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