僕たちの戦争 新装版 (双葉文庫)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575519112

感想・レビュー・書評

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  • 2001年を生きている尾島健太と、1944年を生きている石庭吾一。
    サーフィン事故と飛行訓練中の事故によって時代を超えて入れ替わってしまった二人の話。

    荻原浩作品が刺さったとみえて、今度はこちらを。

    壮大なジェネレーションギャップに何とか対応しようとする二人が面白く描かれている。特に吾一が可愛い。
    「皇国代理店だか興国内裏店だか」「みにくうぱ」

    でもすごく切なくなった。
    「「必死 」「一生懸命」って言葉の本当の意味が初めてわかった気がした」
    「人の一生は楽しむためのものではなくて、どんな名誉ある死を迎えられるかを問われるものだと思い続けてきた。しかし、いまはなぜか怖い」
    まさに命を懸けていた時代。
    吾一の考えに耳が痛くなるような、つらいところがたくさん。。

    朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の稔さんの台詞(「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける、自由に演奏できる。るい、お前はそんな世界を生きとるよ」)に号泣した私。
    ごはんを食べること、勉強をすること、海外の音楽を楽しむこと。現代からすると“たったそれだけのこと”と思ってしまうようなことさえ満足にできない時代を生きていた人がいるのに、私はなんて贅沢を言っているんだと情けなく恥ずかしくなってしまう。

    ラストは、“え!これって・・・?”ってなる読者に委ねる感じ。
    もやもやする終わりが苦手な人は嫌かもしれないけれど、わたしはこういう終わりも好きなので満足。

    このタイミングで読めて良かったなあ


    「五十年後の日本は、多すぎる物質と欲と音と光と色の世界だった。誰もが自分の姿を見ろ、自分の声を聞けとわめき散らしている。謙虚も羞恥も謙譲も規範も安息もない。
    これが、自分たちが命を捨てて守ろうとしている国の五十年後の姿なのか?」

  • 現代と過去の生活様式が細かく書かれていて、その時代に馴染むというよりそれぞれの人格で生活していき成長や葛藤していく二人を面白く思う。何故か現代より過去の人間模様の方が濃いと思うのは命がいつどうなるのかが分からない時代だから。ラストの健太の行動やミナミの見た波から見えた姿が健太だと考えると、健太の行動は必然だったと思わずにいられない、二人の物語のようで実は健太の物語で健太とミナミの物語のスタートを見たのだと思う。中盤からは一気読み出来るほど没頭出来る作品。

  • あらすじを読んで「入れ替わりネタか、よくある話かな…戦争関係の話は重いし暗いからちょっと気が進まないな」と思ったのですが、読み進めるとさすが荻原さんといったところ。

    たしかに重くて暗い部分もありますが、その中での幸せやおもしろさを心地よく散りばめてくれて、「つらいから読みたくないな」という気持ちにはなりませんでした。
    むしろ、これからどうなってしまうのか、続きが気になって止まりません。

    荻原さんは、自分が経験されたわけではないのに、対象のもの、雰囲気をリアルに描写されるのが本当に上手なので、戦争、サーフィンを経験したことのない自分も、まるでその場にいるような臨場感を味わえます。

    他の方の感想で、この小説を元に映像化された作品があることを知れたので、探して見てみます。

  • おもしろかった!
    時代が変われば、考え方も変わるのかな。
    自分の考えとか言っているけど、それは周りの環境にかなり左右されているわけで。
    産まれた時からスマホで何でもできる子ども達はどういう考えになるんだろう。

    最後の終わり方が…気になってしょうがない!!

  • 予科練の特攻隊員と現代の若者が入れ替わってしまうタイムスリップもの。
    最終的に特攻は回天になるんだけど、最初から回天の練習生にしなかったのは「特攻」のイメージと「回天」の一般への知名度の問題だと思う。マニアの壁を考えなければ、最初から「回天」にするだろう。特攻隊員が現代に来たときに「異世界」であると少年倶楽部の小説から思いつく。当時から「異世界」という概念はあったのです。
    で、この物語の仕掛けは、入れ替わるということで、同時並行で現代と太平洋戦争末期が描かれるます。この手法は使えるかなと思うのです。異世界転移したときに現代人が異世界に行くだけではなく、異世界から現代の方にもやってくる。等価交換、質量保存の法則みたいな感じで。
    それが魔王討伐中の勇者でもいいし、なにか異世界で重大な役割をもっていた何かする。
    そして、現代、異世界両方の世界をクロスさせ描写する。全然関係ないと思われる場面を描き、それが1本の物語に収束していく形は、高野和明氏の「ジェノサイド」とかホラー、サスペンスなどで多く使われている手法なのだけど、ちょっと違うか……
    この手法はWEB小説には向かないと思うし。
    お互いが違う世界で困惑し元の世界に戻ろとする話はありかと思う。

  • 1944年に生きる海軍兵の吾一と、2001年に生きるフリーターの健太が、飛行機の墜落とサーフィン中の事故によりタイムスリップで入れ替わってしまう。それぞれの時代に慣れるべく必死な2人の努力はコミカルだが、現代人だからこそわかる戦争の愚かしさや、戦時中の人間だからこそわかる現代人の平和ボケが、小説なのにリアルに伝わるのが面白い。ラスト、2人は元に戻れたのだろうか。

  • 現在と過去のギャップ、その現実に必死になって適応していく健太と吾一。少し笑えて少し泣けて、戦争の愚かさが悲しくて切ないとっても良い小説でした。5つ星⭐️どころか10っこ星⭐️でした。

  • 我慢が足りず、将来の夢はあるものの実現のための地道な努力を続けることはしないフリーター。
    終戦間近の日本で予科練卒の飛行機乗りとして一人前になろうと頑張っている兵士。
    タイムスリップのいたずらにより、二人は時代を乗り越えて入れかわってしまう。
    半端ではない既視感がストーリーから感じられる。
    フリーターと売れない芸人の差はあるにしても、故今井雅之さんの舞台「THE WINDS OF GOD」にそっくりだ。
    実際に舞台を見たことがあるせいか、余計に似すぎている設定・展開が気になって仕方なかった。

    終盤ではまともに操縦も出来ない石庭が回天搭乗員として大津島に配属されている。
    訓練中の事故も多く、当時としては貴重な特攻兵器だった回天は技術を習得した優秀な者から出撃させられた…と何かの資料で読んだ気がする。
    終戦の玉音放送後も戦闘を続ける描写といい、何かしっくりとしないものを感じた。
    物語なのだから多少の脚色もいいだろう。
    けれど実際にあった戦争を題材にするならば、それなりの配慮がほしいと思うのは間違いなのだろうか。
    戦死した人たちを尊ぶ気持ちが物語の中でも感じられるような、そんな展開にしてほしかった。
    たしかに石庭は物語の登場人物に過ぎない。
    それでも…と思うのは、最近よくテレビで終戦特集をやっているせいだろうか。

  • え、え~。
    後は、読者に任せるってか!
    でも、なんかいい。
    出てくる子たちもいい子だね。
    こんな話もあって、そして読んでほしいねえ。

  • 最近のお気軽読み本の中ではいちばん面白かった
    オーソドックスなテーマであり、ベタベタなストーリーで、展開はひとつしかないのだけれど、
    エンディングはそうくるか?!ということで賛否併記ができますね
    でも、ミナミちゃんのある一言で、どちらが戻ってきたか分かるようになっているような気がするのだけれど……
    うがち過ぎかもしれないけどね
    ーーーーー
    “根拠なしポジティブ”の現代のフリーターと、昭和19年の「海の若鷲」にあこがれる軍国青年が時空を超えて入れかわった!それぞれの境遇に順応しつつも、ふたりはなんとか元の時代に戻ろうとするが…。おもしろくてやがて切ない、愛と青春の戦争小説。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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