ななみの海

  • 双葉社
3.83
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575244892

作品紹介・あらすじ

児童養護施設で暮らす高校生のななみ。「馬鹿にされるな」という祖母の言葉を胸に、医学部進学を目指し受験勉強に励む日々。ダンス部最後の発表会、初めての彼氏、進学費用のためのアルバイトなど、高校生活を色濃く過ごすなか、ななみが自分の意志で選択した道とは――。十代の心許なさや揺らぎを繊細に掬いとり、前途を温かく照らす青春エール小説。

感想・レビュー・書評

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  •  朝比奈あすかさん…子供たちの揺れる感情を文章にすることに長けてますよね!ホント、読んでいて物語上のことながら、私が同年代だったころ、うちの子供たちが同年代だったころのことを自然と思い出させてくれます。

     こちらの作品は、児童養護施設で暮らしている高校生のなつみが主人公…。医学部への進学を目指して勉学に励むとともにバイトもしている。さらにダンス部で友達と切磋琢磨しつつ友情を育み、同じ目標を持つ彼氏もできる…。一見して、順風満帆のような高校生活だが、友達や彼氏との関係、同じ施設で生活する子供たちと職員との関係、将来の夢と、過去のトラウマなど…悩みも多く感じている…。そんな、ななみの成長の物語…。

     作中、気になったのは、『子どもって、大人次第じゃん?』『だったら、いい大人が増えれば、困らない子どもも増えるっていう、単純な原理。でも、本当はそれが世界でいちばん大事なことだと思う』という会話のシーン…。いい大人になるためになるため、子供たちもだけれど、大人だって気をつけなきゃならない…そう感じました。子供たちの数だけ、様々な人生があるし、夢もある…。それを応援できるいい大人でありたいです。

  • 施設を出たあとも、人生は続いてゆくから──児童養護施設で暮らす女子高生が、自らの進むべき道を見いだす青春小説『ななみの海』 著者・朝比奈あすか×アフターケア相談所ゆずりは 所長・高橋亜美 対談〈第1回〉(1/3)|インタビュー・対談|COLORFUL
    https://colorful.futabanet.jp/articles/-/1193

    株式会社双葉社|ななみの海|ISBN:978-4-575-24489-2
    https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-24489-2.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「いい大人でありたい」と思わせてくれる、児童養護施設で暮らす女子高生の眩しい成長物語 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
      ...
      「いい大人でありたい」と思わせてくれる、児童養護施設で暮らす女子高生の眩しい成長物語 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
      https://www.bookbang.jp/review/article/729925
      2022/04/17
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <訪問>「ななみの海」を書いた 朝比奈(あさひな)あすかさん:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.c...
      <訪問>「ななみの海」を書いた 朝比奈(あさひな)あすかさん:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/670796?rct=s_books
      2022/04/18
  •  この作者の本を読むのは、3冊目。どの作品も思春期の女子のモヤモヤする気持ちが、詳細に描かれている。作品と同じ年齢の時に読んでいたら、自分の内面をすべてのぞかれているようで息苦しいぐらいだったかも。

  • 児童養護施設で暮らす高校生、ななみが主人公だ。
    成績優秀でダンス部で活躍し、親友もいるけど、親がいないななみにとって、家族の悪口を言う友達をしらけた気持ちになったり、壁を感じたりする。

    ななみが、中学生唯真の気持ちを押しはかるところが、私の分からなかった感情なのにすごく納得ができて、とても切ない、悲しい気持ちになった。
    怒られて人前で泣いてしまったことがつらくて、悪いことをすることで体裁を保とうとする危うい少年心…。
    子どもは大人次第だと、ななみが思うきっかけになった出来事だ。
    私はこの本の序盤、登場する子どもたちが軽い言葉でしゃべるのが苦手だった。
    ななみと高校の同級生たちの間でも、寮の子たちの間でも交わされる軽い言葉たち。
    その言葉たちの中に、彼の、彼女の本心が全く見えないからだ。
    でも、唯真のこのエピソードを読んで、頭の中ですべて繋がった気がした。
    彼女たちは、みんなと同じ言葉を使うことで、自分の本心をたくみに隠していたり、時に、自分の不安に自分で気づかないようにしていたりするのだったと。軽い言葉を使うのは、この子たちなりの自己防衛だったのだと。
    大人からすると、真面目な話をしてるときに、子どもが軽い言い方をしたら「不真面目だ」「真剣に聴きなさい」と思うだろう。
    でも、10代のとき、私もそういうときがあった。大学受験に失敗したとき、傷付いてないふりをした、大事に捉えてないふりをした、わざと俯瞰的な発言をしたりした。それで親からは「真剣に取り組まなかったからそんなことが言えるんだろう!」と怒られたんだった。
    なんで自分自身のことすら、忘れてしまうんだろう。
    大人になるって、そういうことなのかな。
    そんな自分の変化が、なんだか悲しかった。

    馬鹿にされちゃアいけない、と祖母から言われ、医者を目指していたななみ。
    医者になれば、馬鹿にされないから。
    そんなななみは、やはり子どもで、幼いのだと思った。
    医者になっても序列はある。
    開業できるのは限られた人たちだ。
    組織に属していれば、セクハラパワハラも存在する。医者の中でも、学歴やバックグラウンドで同業者を馬鹿にする人はいる。
    そんな当たり前のことなんだけど、ななみは知らない。いや、医者になれば馬鹿にされないという祖母の教えが刷り込まれて、疑問を挟む余地もなかったのだろう。
    きっと「馬鹿にされないため」に医者になったら、ななみはいつか現実を知って、もっと傷付いたり、馬鹿にされないために意固地になっていったと思う。
    祖母から押し付けられた価値観を、ななみが自分で脱却できたことが、すごく安心したし、嬉しかった。

  • 施設で暮らす高校生 ななみの、「18歳で施設を出て自立しなければならない」という現実が重い。
    帰る場所があって一人頑張るのと、そうではなく一人で頑張らないといけないのとでは気持ちの上では大きく違う。

    医学部を目指すななみの青春の日々。受験、部活、恋、アルバイト、友人とのすれ違い…。
    焦りや不安、いろんな苦しみや葛藤を乗り越えて、ななみが本当に喜びを感じる道に向かえて良かった。

    『子どもって、大人次第じゃん?』

    『だったら、いい大人が増えれば、困らない子どもも増えるっていう、単純な原理。
    でも、本当はそれが世界でいちばん大事なことだと思う』

    ななみと友人の会話が胸に深く刺さった。ホントその通りだと思う。
    虐待のニュースを見るたびに心が痛む。

    学校も、親も、社会に出たって現実は素晴らしい大人ばかりじゃない。だからこそ、子どもたちに心の拠り所や救いとなる存在の大人がいて欲しいと思う。
    痛みを知るななみが、将来子どもたちが頼れる大人の一人になってくれたら嬉しい。

    どうか子どもたちの未来が素敵な出会いにあふれ、明るいものでありますように。
    自分も誰かにとっての頼れる大人の一人でありたいと思いました。

  •  児童養護施設で生活する高校生の岡部ななみが施設を出るまでの2年間を描いた青春小説。

         * * * * *

     「施設で暮らす」ということがどういうことか。きちんと考えさせてくれる作品でした。

     ななみは一般的な高校生からすると非常によくできた高校生です。そんなななみでも、茫漠と広がる(自身の)将来を連想させる「海」が好きではありません。

     18歳で退所し自活することを迫られる。これは大学進学を志すななみにとっては深刻な問題です。何より1人で大海原に漕ぎ出さねばならないという不安は17歳の少女には荷が重すぎると言えます。
     また如才なく振る舞えるななみゆえ施設暮らしを学校の友人たちにカミングアウトできない苦労もあるでしょう。これら大小さまざまな気苦労は本来する必要のないことです。ななみでもそうなのだから、もっと不器用で不安定な寮生たちの心理的負担はいかばかりでしょうか。

     子どもたちを取り巻く社会を作っている大人の責任の大きさ。真摯に受け止めて置かなければいけないと強く感じさせられました。
     少し斜め上から物事を描くいつもの朝比奈作品とは違う、素直でストレートな作風が新鮮でした。

  • 主人公をはじめ、子どもたちの心が繊細なタッチで綴られていく。その細やかさに時に涙が出そうになった。施設で暮らすななみは成績優秀な高校生。「家の子」とのギャップに悩みながら出自を言えない。「馬鹿にされないため」勉強に励み、時に爪を噛むのをやめられない。そんな辛さが読む者の胸に突き刺さる。

    読後は心があらわれる。大人になって何十年もたってしまったが、あらためてきちんとした大人になりたい、と素直に思った。

  • 施設の子と一括りにすることはできない。
    そこには、一人一人、全く違う悩みを抱え、
    生きている子どもたちがいる。
    親がいるから、家があるから、幸せか?
    それも一概には言えない。 
    皆、それぞれに苦しんでいる。

    だから、世の中には、いい大人が必要。
    ストレートだけど、強いメッセージ。

  • 3ヶ月かけて読了。

    高校2年生、社会福祉施設(通称 寮)で暮らすヒロインななみの成長を描いた作品。

    今の高校生、多分、こんな感じなんだろうなぁと思いつつ、そののりにちょっとついていけなかったため、なかなか読み進められませんでしたが、友達とは何か、大人になるっていうのはどういうことなのかを考えさせられた作品。

    良い大人というのはどういうものなのか具体的に文章では表されないですが、むしろそこがよく、そして、それがわからなくともヒロインななみが確実に良い大人に向かってるなと思う作品でした。

  • 児童養護施設で暮らす高校2年生のななみ
    仲の良い学校の友達にも施設で暮らしていることは明かしておらず、普通の高校生としての毎日を送っている

    こういう物語としてありがちな
    いじめだとか偏見だとか酷い嫌がらせは出てこない
    かといって、出てくる人物がみんないい人だったりもしない

    ただ、普通の人たちが『普通に』暮らす中に入ると
    施設に過ごすななみはそこここに隔絶を感じてしまう

    やはり一番大きいのはお金の問題
    アルバイトをしながら進学費用を稼ぎ、その疲れた体で定期試験を受け、大学に入るための勉強もしなくてはいけない

    『家の子』が親に言われて嫌々塾に行って勉強をするのに対して
    『寮の子』は自分がここから抜け出すために必死で頑張っている

    家の子だからといって幸せな家庭ばかりではない
    ななみから見たらとても裕福な家庭で問題なさそうな家の子であっても
    心に暗い闇を抱えていたりする

    また、寮の子にも更に一人ひとりの違った家庭環境があり
    親がいても一緒に暮らせない場合もある
    その関係性もまた難しい

    どんなところで育っていたとしても
    子どもが何かを願った時に
    それが叶えられる世界であったら幸せなのにな

    そう思う

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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