透明な耳。

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 266
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243598

作品紹介・あらすじ

都立高校2年生でダンス部員の由香は、ある日交通事故に遭い、聴覚を失う。その時、家族は、友達は、恋人は……。それぞれの思いが交錯し、すれ違いながら織りなす人間模様を葛藤を描いた葛藤と再生の青春群像劇。90年代~00年代にかけて数々の広告賞を受賞したCMディレクターで映画監督としても活躍する著者初の書き下ろし小説。

感想・レビュー・書評

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  • ああ、これは動いている感じがするな、と思いながら読んだら、作者は映画監督だった。
    なるほど。音があって(音がしなくて)情景があって、それぞれに成長がある。

    映画化されないかな。ぜひ観てみたい。

    さて。肝心のストーリーは。
    ということで、以下ややネタバレあり。注意。



    スケボーとの接触事故で聴覚を失ってしまったことから、お話は幕を開ける。

    由香を取り巻くノイズが、彼女自身を苛んでゆく。
    誰よりダンスが好きで、将来の夢でもあったのに。
    もう治らない。
    あちらの世界とこちらの世界のどちらにも属していない、そんな気がして、立ちすくむ。

    彼女を取り巻く親や友人、恋人もまた、理解と変化を迫られる。

    「(由香に対する)責任のある人と、責任のない人」

    そんな台詞に触れて、でも、どちらも「本人ではない人」でしかないんだと、思った。
    最近、私は「本人の立場に立って」考えることの壁にぶつかって、どうしたらいいか分からないことがあって。自分だったらと考えることは、その人自身を傷つけることだったかもしれないって、立ち止まってしまった。

    だから、このお話に登場する、由香を思って怒り、悲しみ、行動する友人や恋人を、由香はどんな風に見つめているのかを追っていた。

    海のシーンは、読みながら泣いた。
    「WanteD! WanteD!」で平手友梨奈が踊っているMVを思い出した。

  • 1日で読み終えた。読んでいて涙がでた。
    今まで考えたことなかったけど、いつも通りの日常がかけがえのないものだと改めて気付かされた。
    由香の強くなっていく姿と周りの温かさに涙がとまらんかった。

  • ダンスが好きな女子高生が、ちょっとした事故によって両耳がほぼ聞こえなくなってしまう。それでも諦めない母や彼氏、友人達、そして新たな出会いにより、前向きに歩め始めていくストーリー。
    後天的に難聴になる人の気持ちや当事者が感じる世界の変化が分かりやすく、よく調べられたのだなと感じた。
    またストーリーのテンポもよく、少し長めのドラマを見ているような感覚になる。映像化しやすいだろうな。
    個人的にもう少し主人公の心情や周囲との関係を深められたら面白いのになとは思ったが、それは趣味嗜好が異なるだけ。
    読んでいるのに音やリズムが伝わってくるように感じて、この作品はこのくらいの書き方と分量で合ってるのだと思う。

  • 世界に確かなものなど何もなくて、
    それでもそばに信じられる人がいること。
    何が本当で、本当じゃないかなんて、
    自分で決めればいいこと。
    今、生きていること。
    そして、これからも生きていくこと。
    あなたは独りではないということ。

  • 中途失聴になった主人公と、その子を取り巻く家族、彼氏、友達、周りの大人たちの物語。
    自分が置かれた現実を受け入れる強さ、そのためには自分自身だけではなくて、周りの人の支えも大切なんだと思った。
    手話は世界が広がる言語だと改めて感じた。

  • 私も作中に出てきた新潟の病院にいって、ハーブティーを飲みながら中庭でゆっくりしたいと思った。

  • 周りからとても愛されている事が伝わるからか、真っ直ぐな素直さというか、力強さがずっとあって、辺にねじれる事がないので、凄くシンプルに話が胸に入ってくる。
    中途失聴の辛さや苦しさももちろん描かれているけど、逞しさや若さ、可能性の方を強く感じます。

  • 健常者のダンス部所属の女子高生が交通事故で耳が聞こえなくなる話

  • 事故で耳が聞こえなくなってから自分を受け入れるまで精神的、身体的、社会的観点から見事にストーリーに盛り込まれている。
    ただ、少し言い回しがもどかしかった。

  • 思えば、今まで聞こえていたものが何も聞こえなくなるというもはや、心底恐ろしいのとだと感じた。
    作中でも、それは描かれており、主人公の感じた、恐怖や絶望を読者も深く感じることができた。
    自分が一番好きなシーンは、それこそ一番最後のシーンで、主人公と彼氏の会話が、「」表記になっていたことだ。それまでは、手話での会話は、明確に違う表現として『』表記になっていた。これが変わったということは、2人や周りの多くの人が、時間をかけて、手話での会話を、違和感のない当たり前のものにしたという事なのだろうと自分は解釈した。

    なにそれ素敵やん////

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