アウシュヴィッツのタトゥー係

  • 双葉社
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  • / ISBN・EAN: 9784575242041

作品紹介・あらすじ

イギリスで130万部、全世界で300万部を突破したベストセラー、待望の翻訳。第二次世界大戦下のアウシュヴィッツで同胞に鑑識番号を刺青する役目を割り当てられたユダヤ人の男がその列に並んでいた女性と恋に落ちて「絶対に二人で生きてここを出る」と心を決め、あまりに非人間的な日常の中でささやかな人間らしさと尊厳を守り抜くために重ねた苦闘と誓いの物語。「タトゥー係」本人の証言による実話に基づく。

感想・レビュー・書評

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  • この本は、新聞広告で見かけて、広告には、「全世界感涙のラブストーリー」と書いてあったので、興味を持っていましたが、フォロワーさんがされたレビューなどを拝見すると、どうも様子が違うようでした。アウシュヴィッツは『アンネの日記』とあとは『アウシュビッツの図書係』をかなり後半まで読んだことがあるのですが、途中までしか読めませんでした。

    『アンネの日記』のアンネは、アウシュビッツで命を落としてしまいましたが、この本の主人公は生き延びて家庭を持つことができた。そこが、唯一救いのある点だと思いました。
    このフィクションのモデルとなったラリとギタは、収容所内での仕事も、他の収容されていた人々とは違って特別だったし、男女交際をしていても、とがめられていないのはすごいことではないかと思いました。(国民性もあるのでしょうか)ラリは拷問も受けており、死んでもおかしくなかったし、ギタは発疹チフスにも罹っています。
    そして奇跡の再会。ラリは非常に頭がよくて優しい男性だったし、ギタも辛抱強くて賢い女性だと思いました。
    でも、この二人は、かなり運もよかったのではないか。どこかで、何かひとつでも違っていれば、この展開、命はなかったのではないかと思いましたが、そう思うのは間違いのようです。

    訳者あとがきで、金原瑞人さんが、「ラリは、ドイツ兵から、「知ってるか、タトゥー係。間違いなくおまえは、オーブンの中に入って生きて出てきたたったひとりのユダヤ人だよ」さらにラリは無意味に殺されていく人々をみていく。そして最後には運よく、故郷に帰り着くのだが、それを「運よく」といえるのかどうか。タトゥー係という特殊な立場にいたため、普通の被収容者たちが目にしなくてもすむものまでみてしまうし、みせられてしまう。家畜を運ぶ列車でアウシュヴィッツに運ばれてくる途中で死んだ方がましだったかもしれない。ラリはアウシュヴィッツという現実を後世の人々に語るため、その証人として神から遣わされた人物だったような気がする」と述べられています。
    作家のグラム・シムシオン氏は「わたしは無条件でこの本をすべての人に薦める。ホロコーストの物語を百冊読んだことのある人にも、一冊も読んでいない人にも」と書いているそうです。

    私はこの本のラリとギタの物語は時にこれ以上ない酷い話であり、時に素晴らしい話であったと思いましたが、アウシュヴィッツの話は、もうしばらく目にしたくないと思いました。
    最後になりましたが、ギタも明るく賢い女性でしたが、ラリのお母さんは、ラリをとても素晴らしい人間に育てた、やはり素晴らしい女性だったと思いました。

    • まことさん
      やまさん♪こんばんは。
      こちらこそ、ありがとうございます!
      大分寒くなりましたが、お元気ですか?
      やまさん♪こんばんは。
      こちらこそ、ありがとうございます!
      大分寒くなりましたが、お元気ですか?
      2019/11/27
    • KOROPPYさん
      こんにちは。

      ほんと同じタイミングでびっくりしましたw
      ブクログ経由で知った本なので、もしかしてきっかけが同じかしら? と思ったり。...
      こんにちは。

      ほんと同じタイミングでびっくりしましたw
      ブクログ経由で知った本なので、もしかしてきっかけが同じかしら? と思ったり。

      アウシュヴィッツは知っておくべき過去だとは思いますが、やはり心構えというか、気力を要求する内容ですよね(^^;

      アウシュヴィッツ関連でほかにも気になる本を見つけたのですが、すこし間をあけて読みたいと思います。
      2019/11/30
    • まことさん
      KOROPPYさん♪お返事ありがとうございます。
      タイムラインでKOROPPYさんが、『アウシュヴィツの図書係』を登録されているのをおみか...
      KOROPPYさん♪お返事ありがとうございます。
      タイムラインでKOROPPYさんが、『アウシュヴィツの図書係』を登録されているのをおみかけしました。あの本は私は最後まで、読めなかった本ですので、KOROPPYさんがレビューされるのを楽しみにしています。
      2019/11/30
  • 本書は、実在の人物からの聞き取りを元にして作った小説。
    小説といってもほとんどの出来事は実際に起こったことであるので、本書を読みすすめながら戦慄を感じずにはいられなかった。

    本書の主人公ラリは、スロヴァキア生まれのユダヤ人。ユダヤ人としてアウシュヴィッツの収容所にナチスによって収容されたが、5、6カ国以上の言語を流ちょうに話すことができる持ち前の語学力を買われて、通常の過酷な作業からタトゥー係に抜擢される。何度も死ぬような拷問や病気に蝕まれながらも約3年近くも収容所で生きながらえたラリ。そしてラリを支えたのは同じく収容所に収容されていた若き女性ギタの存在だった。

    いままでアウシュヴィッツの様子を描いた本を読んだのはヴィクトール・E・フランクルの傑作『夜と霧』だけであったが、この本を読んでさらに今までの自分のアウシュヴィッツのイメージが違っていたということが明らかになった。

    どうしてもアウシュヴィッツ収容所というと「ガス室」や「焼却室」というイメージが強すぎて、連れてこられたユダヤ人はすぐに殺されていくというものでしかなかったが、実際にはそうでなかった。

    まず、彼らは「労働力」として強制的に働かされていたのだ。
    アウシュヴィッツ収容所の門にはこうスローガンが掲げてある。
      『働けば自由になれる』
    つまり、最初から全員を殺すつもりはない、働かない人間は殺すということなのだ。

    しかし、収容所の生活は過酷以外のなにものでもない。
    食事は野菜のかけらの少し浮いたスープが朝と夜だけ。病気になっても薬などは当然ない。働けなくなったものは容赦なく射殺される。
    これだけでも、到底普通の人間が受ける待遇ではないのだが、ラリのようにナチスの若い監視兵に取り入ったり、外部から働きにくる町民から食べ物を融通してもらったりしている収容者も存在する。
    驚くべきことに彼が収容所の中で貨幣として使っていたのはダイヤモンドやエメラルドなどの宝石だ。

    どうやって彼はこれらの宝石を手に入れたのか。
    ユダヤ人達は収容所に入る前に持ち物を持ち込むことを許されていた。ナチスがそれを許していたからだ。
    しかし、それは彼らを安心させるための罠で、収容所に入ったとたん、持ち物は取り上げられ、衣服は脱がされ、髪の毛は全部刈られ、腕に収容者番号のタトゥーを入れられる。
    こういった行為は、ナチスの兵士によって直接行われるのではなく、兵士の監視下において収容されているユダヤ人によって自ら行われるのだ。

    ユダヤ人の持ち物の選別は女性のユダヤ人収容者の役目であり、持ち物の中から宝石などの金目の物をその場で盗みとることが可能だった。
    それらをラリが集め、ラリは部外の町民からチョコレートやソーセージなどの食料や薬などを宝石で『買う』ことができた。ラリを助けていた町民にとってみれば、チョコレートやソーセージなどの日用品が高価な宝石に変わるのだからこんなに美味しい話はなかっただろう。

    ラリは入手した食料や薬を他の収容者に与えたり、若い監視兵が欲しがっている物を入手したりし、特別な立場を築いていき収容所内での救世主的な役割を担っていた。
    ラリの行為は当然収容所の規則に反するもので見つかればその場で処刑されるおそれがあったが、ラリはナチスの若い監視兵に贈り物などをすることによって手なずけていたので、見て見ぬふりをしてもらうことができたのだ。

    その他、収容所内では想像を絶するさまざまな問題が存在していた。例えば、収容者同士でも、新入りと古参の収容者との収容者同士でのいさかいや「ジプシー」と呼ばれていたロマ人収容者達へのさらなる差別などがあった。
    また、見た目の美しい女性ユダヤ人は強制的にナチス幹部の性奴隷にさせられるということで髪の毛はそのままにされ、やせ細らせないように食事の面で特別待遇を受けていたことなど、さまざまな非人道的な行為が繰り返されていた。
    まさにアウシュヴィッツはこの世の地獄であったのだ。

    このようにアウシュヴィッツ収容所に入れられたユダヤ人は問答無用ですぐに皆殺しにされていたものという僕が思っていたイメージとはだいぶ違うものであった。
    実際に、収容されていたラリも後に『ホロコースト』と言われるような、これほど大規模な殺戮が実際に行われていたということは知らなかったのではないだろうか。それは、収容所のナチス兵なども同じだっただろう。もちろん、アウシュヴィッツ収容所を解放したソビエト兵達もナチスによってこれほどの殺戮が行われていたということは知らなかったに違いない。

    実際に『ホロコースト』の全容が明らかになったのは、終戦後のことだ。
    多くの虐殺の証拠は隠蔽され、その遺体も地中深くに埋められ発見が難しかった。当初は100万人程度のユダヤ人が殺されたのではないかと言われていたが、実際には900万人から1000万人もの罪のないユダヤ人たちが虐殺されていたのだ。

    この小説で書かれていることはホロコーストで行われたごくごく一部のことであり、主人公のラリは本当に奇跡的にラッキーな立場にいたというだけだったのだ。

    人間はどこまで残酷になれるのであろうか。
    戦争という狂気の中で、人間は良くも悪くもそういったことに『慣れてしまう』のだ。

    ホロコーストに関与したナチスの大幹部アドルフ・アイヒマンが終戦後に逮捕され、裁判で語った言葉がある
      「私は命令された自分の仕事をしただけです」
    と。
    そこには罪の呵責など全くない。
    ただ事務仕事のようにユダヤ人を殺していた。
    なによりもアイヒマンを見た多くの人々が衝撃を受けたのは、彼がふてぶてしい大悪党ではなく、何処にでもいる小役人的な凡人にしか見えなかったということだ。

    このように、多くの『普通』のドイツ人たちが、ホロコーストを起こしていた。
    もちろん、ナチスの中には生まれながらのサディスト的な人間もいたかもしれないが、多くの兵士は普通の人間であっただろう。そういった『普通の人間』を機械的に変えてしまうのが『戦争』の恐ろしさなのだ。

    戦争だけでなく、よく無差別テロや無差別銃発砲事件などのニュースで「犯人」が「女性や子供にも容赦なく銃弾を放った」などと報道されるが、そういった「犯人」の思考回路は完全にこのホロコーストを起こした人間と同じで、相手をもはや『人間』だとは認識していない。
    つまり、「犯人」の思考回路の中ではもう相手の「人間」は『人間』ではなく「虫けら」や「害虫」などといった「殺してもよいもの」「殺すべきもの」に変化してしまっているのだ。
    そういった「犯人」に対して「女性」だから「子供」だからなどという、相手に「情け」を求める行為は全く意味をなさない。
    なぜなら「犯人」の思考からみれば
      「害虫のメスはさらに多くの害虫を産み出すから真っ先に殺さなきゃダメだろ」
      「害虫の子供はこれから害をなす存在だから、害をなす前に殺さなきゃダメだろ」
    という思考回路になっているからだ。
    自分でこのレビューを書いていてなんだか気分が悪くなってきてしまったが「戦争」というものは普通の人間をこんな風に変えてしまうということなのだ。

    今に生きる我々は、絶対にこのことを忘れてはいけない。
      人間は『暴力』に慣れる。
      人間は『残酷さ』に慣れる。
      そして、人間は『狂気』に簡単に取り憑かれる。

    これが人間の本質なのだ。

    このことを常に我々は肝に銘じ、人間が過去に起こした罪を忘れることなく、生き方を戒めながら、この先も生きていくことが必要なのだろう。

    • やまさん
      kazzu008さん、こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      レビューを読みましたがアウシュビッツ関係の本は、まだ読んだ事が無いと思い...
      kazzu008さん、こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      レビューを読みましたがアウシュビッツ関係の本は、まだ読んだ事が無いと思います。
      私も読みたいですが、字の大きさを見て考えていきます。
      やま
      2019/11/08
    • まことさん
      kazzu008さん♪おはようございます。

      おかげさまで、読了しました。先日はご助言ありがとうございました!
      ラリとギタの物語は素晴...
      kazzu008さん♪おはようございます。

      おかげさまで、読了しました。先日はご助言ありがとうございました!
      ラリとギタの物語は素晴らしいと思いましたが『夜と霧』は、たぶん読めないだろうと思いました。
      でもこの物語のアウシュヴィッツの苛酷さは忘れないでおこうと思いました。
      これは、確かに、ただのラブストーリーではなかったです。
      2019/11/27
    • kazzu008さん
      まことさん、おはようございます。
      『アウシュビッツのタトゥー係』読了お疲れさまでした。
      そうなんです。ラブストーリーという感じではないで...
      まことさん、おはようございます。
      『アウシュビッツのタトゥー係』読了お疲れさまでした。
      そうなんです。ラブストーリーという感じではないですよね。
      収容所の過酷さのほうが勝ってしまって男女の色恋なんて楽しめる状況じゃないです。
      本当にラリとギタは幸運だったというしかないですね。
      他の収容所で同じような境遇にあった人たちのほとんどはたぶん虫けらのように殺されてしまっていたのでしょうから・・・。
      本当に僕たち人類はこのような地獄が過去のあったことを忘れてはいけませんね。
      コメントありがとうございました!
      2019/11/27
  • あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。

    今年の読了一冊目は、「実話をもとに綴られた、全世界感涙のラブストーリー」(帯のコピーより)。
    ホロコーストの舞台である悪名高きアウシュビッツの収容所で、ユダヤ人のラリとギタが育んだ愛の姿を描く小説。

    ラリもギタも生き残ろうという強い意志を持っていた。そして、奇跡的な運も重なった。基となる実話が語られ、小説になること自体が稀少であり価値がある。

    学ぶことは非常に多いし、こういう本って、読まないよりは読んだ方がいいに決まっている。しかし、残念ながら、時制や人称がぎこちない、というか、ピタッとそぐわない感じがどうにも気になって、僕は小説の世界に入り込めなかった。冷めた頭のまま読み終わってしまった感があるため、評価は3点。


    ー ひとりを救うことは、世界を救うこと。(P49)
    ラリが信条にしていた言葉であり、ラリ自身もこの言葉により助けられる。非常に含蓄に富んだ言葉で心に残った。意味を噛み締めて考えたい。

  • 全世界感涙のラブストーリーという帯の言葉とは裏腹に(ごめんなさい)たんたんと粛々と進んでいくストーリー。
    ラリはハンサムで茶目っ気があって語学が堪能で、現実的だ。

    今を生きるためにはどうすればいいのか。
    生き地獄と言って余りある状況に置かれながら、今を、1時間後を、明日を生きるためにどうすればいいのか。ラリは淡々と、諦めず、そう、虎視眈々と日々を生きている。

    「朝、目が覚めたなら、今日はいい日だ。」
    3年間。1000回以上、思い続けたのだろうこの言葉の重さにくらくらする。1000回以上、そして、1000回で終わるともわからない恐怖、そして反対に、そう思えるのは今朝が最後かもしれない、そんな毎日を生き続ける恐怖。想像を絶するという言葉すらも軽く思える地獄で、ラリとギタは生きていた。互いに明日また会うことだけを信じて。

    弱気になるギタにラリはいつも明日会おうと言う。ラリの逞しさには勇気をもらえる。持ち前の茶目っ気や優しさを失わないしなやかさにも。ラリに諭されるようにギタも明日を信じるようになる。長い収容の続く中、収容所内部の反乱、ソ連軍による解放の兆しが見え始める。混乱する収容所の中、ラリはギタに後の行動を指示する。そして、他の友人にお礼を言うラリに、ギタは自ら言う。
    「なにもいわないで。」
    「絶対に、ひとこともいっちゃだめ。」
    「ただ明日会おうとだけいって。」

    ラリの思いは覚悟か否か。ギタの思いは、願いか否か。
    史実はときに物語よりも数奇なものだ。こんな悲劇の中で愛が生まれた奇跡とそれを生んだ戦争を忌避する気持ちと、心がめちゃくちゃになる。私はただ、書いてあることを読んでいるただそれだけなのに。


    巻末の2人の笑顔の写真を見て、初めて涙が出た。
    確かに生きていたんだな、2人が笑える明日が来てよかった、そう思った。明日を信じて生き抜いた、魂の物語。

  • アウシュヴィッツで、被収容者たちに管理番号のタトゥーを入れていた、ルドウィグ・アイゼンバーグの話をもとにした、フィクション。

    長い間生き延びられたからこそ見聞きできた、おぞましい行為の数々に、改めてぞっとさせらる。

    何の非がなくても処罰される、圧倒的に弱い立場でありながら、そもそもの最初から、管理側の目を盗み、危険な行為を繰り返すのに、やや違和感。

    比較的安全な地位を手に入れたあとならともかく、うまくいきすぎな感じ。

    管理側と比較的うまくやり、特権的な立場を保持できた人たちの話は、珍しい。

    • まことさん
      KOROPPYさん♪こんばんは!

      なんか、同じ日に同じ本のレビューをされていたので、嬉しくなって、コメントしています(*^^*)
      酷...
      KOROPPYさん♪こんばんは!

      なんか、同じ日に同じ本のレビューをされていたので、嬉しくなって、コメントしています(*^^*)
      酷い話ではありましたが、ラリとギタは本当に奇跡的に助かりましたね。
      私は、しばらくアウシュヴィッツの本は読みたくないと思ってしまいました。
      では、では。
      2019/11/27
    • KOROPPYさん
      >まことさんへ
      こんにちは!

      ほんと、びっくりのタイミングでしたね。
      ブクログのレビュー経由で興味を持ったのですが、きっかけがおな...
      >まことさんへ
      こんにちは!

      ほんと、びっくりのタイミングでしたね。
      ブクログのレビュー経由で興味を持ったのですが、きっかけがおなじだったりして。

      冒頭の感じから、最後は助かりそうだとは思っていても、やっぱりきつい内容ですよね(^^;
      2019/11/30
  • 絶滅収容所を生き延びた恋人たちの数奇な物語 ヘザー・モリス「アウシュヴィッツのタトゥー係」|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12740367

    アウシュヴィッツのタトゥー係 The Tattooist of Auschwitz | 双葉社
    https://www.futabasha.co.jp/introduction/2019/TOA/index.html

    "The Tattooist of Auschwitz" with author Heather Morris - YouTube
    https://www.youtube.com/watch?v=Rwlw2Uj599I

  • 小説であるけれどルポのよう,フィクションだけど限りなくノンフィクションのよう。
    ラリがモリスに語ったものをまとめて,それがさらに翻訳されているという過程を経ていることもあって物事が淡々と進んでいるように写る。どんな卑劣で凄惨なことも,どんなに感動的なことも。良くも悪くも。
    ビルケナウでの出来事は本当にこの世で起こったものとは思えないというありきたりな感想しか出てこず,己の語彙力の低さに辟易する。過酷,苛酷そんな言葉で表現できない死と隣り合わせどころか,たまにそちら側に足を踏み入れながら,なんとかこの世にとどまっている収容所での生活は何度も吐きそうになるほど胸糞悪かった。ただ,その中で生きる希望を見出すラリとギタに救われる。事実は小説より奇なりという言葉がストンと落ちてくる。この二人が家庭を築き,ゲイリーがこの本の結びの言葉を綴ることは幾つの奇跡の連続の結果だろうか。
    ラリが放った「明日も生きて朝を迎えてくれ」という言葉の重み・切実さがずっと心に響いている。
    感じたことは沢山あるのに,まとまらない。久しぶりにそんな本に出会った。
    何度も読み返す類ではないけれど,心にずっと残り,伝えたくなる本だった。

  • 『アンネの日記』からはじまって、
    ナチスのユダヤ人迫害、大量虐殺には
    ずっと何か気になるものがある。
    人が人として扱われないこと、
    例えば目線ひとつで殺される理由になること、
    一度に人をたくさん殺すためだけの目的で
    わざわざ施設が建設されたこと。

    「ひとりを助けることは、世界を助けること」
    とうい言葉は心に残りました。
    世界を見れば広すぎて途方がないけれど、
    目の前にあるただひとつに心を寄せればいい。
    いま自分がやるべきことをやる。

    ホロコースト。
    どうしてそんなことができるのか、と思うけど
    立場を変え、場所を変え、シュチュエーションを変え、
    あちこちで今も起きていることだと思う。

  • 中学生用選書。
    うーん。訳の感じも含め自分の受持層には厳しいかも。

    ホロコーストに関して読んだ、見た作品は多くありませんが、人間という生き物のいろんな可能性を強く感じたこの作品。
    虐げる者と踏みにじられながらも抵抗する者、そして口を半開きにしてページをめくっている私。全部同じ人間っていうのが到底信じられないじゃないですか。

    「全世界感涙のラブストーリー」なんていうチープな帯をよくもつけてくれたなぁとか毒を吐いたりもしたのですが、アウシュビッツという舞台において、そのチープコピーが持つパワーってとてつもないものだと思います。
    アウシュビッツを語る上で、奪われる「愛」じゃなくて、育まれる男女の「愛」を語ることができるんだ!と。

    また、こういっては語弊があるとわかりつつ言ってしまうと、想像していた地獄とは少し空気が違うと感じました。
    もちろん劣悪な環境で、被収容者の人としての尊厳なんてクソとも思われていないのは十分伝わるんですが…日曜日は休みなんだ!とか、特権とはあえ1人部屋の可能性があるんだ!とか、見張り役がクズだけど憎み切れないぞ、とか。

    でも、それがすごくリアルなんですよね。人間、地獄の中で馬車馬のように休みなく働かされ続けたら死ぬ。あっという間に労働力が無くなる。
    そして、そんな中で普通にどんどん人が消えていく。煙に、灰になっていく。

    フィクションとはいえノンフィクションに近いこのストーリーの主人公ラリ。生き抜くことが最大の抵抗だと信じ才能と学と愛と運をフル稼働させられる判断力と精神力。そして確かにイケメン。

    自分だったらって考えると、退場ポイントの多さに辟易します。貨物車の時点でドボンですね。
    ソ連のポン引きやってる時なんて、最後にお偉いさんの仕事だけ片付けて逃げよう。いや、お手当もらえるって言うし、屋敷が引き払われるまではのんびりやるか。とか言いかねない。
    速攻で自転車にまたがるラリだから生き延びられたのでしょう。

    引きの強いPOPを作るから、あとがきと息子の言葉も含めて、なんとか読んでもらいたいなあ。

  • 恐怖と絶望しかない感じない場で、生きることに執着するひとりの男が生きることの価値を一人の女を愛することによって見出していく。
    この男は最初から不思議なくらい前向きだ。
    発疹チフスになったこと、タトゥ係になった経緯やギタやチルカとの出会ったこと。
    ギタがラリに本当の名前を教えなかったという話が一番印象深い。教えたところで、自分の人生の終わりがいつなのかわからない(今日かもしれない)のに…。この世からナチに消されてしまう運命にある自分の名前が一人の男に記憶されることを自ら否定している一人の女の思いが絶望感に満たされているといっていい。

    私は読みながら、この話はほんとにあったことなのか?それともフィクションなのか…何度かよくわからなくなった。ギタとラリの写真を見て、ああ、これは事実のなかの物語の一つなのか…とわかり、ああ、こんなことは金輪際あってはならない、と思った。

    その矢先、ハマスとイスラエルの間の国際的な緊張のニュースを聞き、相互に否定し合い、排斥することの恐怖を改めて知る。2000年前から始まる排斥が原因なのか?
    絶望はくりかえされるのか? ただただ恐ろしい、としか言いようがない。

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