- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575241990
作品紹介・あらすじ
花仍は吉原にある西田屋の女将。主の甚右衛門に拾われた花仍は、店の娘分として育ったのち、甚右衛門の妻になった。十三年越しの願いが叶い、甚右衛門はお上に傾城町を作る許しを得たが、築かれたのは果たして「女の城」だったのか? 江戸幕府公認の遊郭・吉原の黎明を描いた傑作長編小説。
感想・レビュー・書評
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吉原を一から作り上げた西田屋・甚右衛門。その妻・花仍(かよ)の視点で初期の吉原から移転した後の新吉原の姿まで五十年に渡る歴史を描く。
御公儀公認の『売色御免』を得るまで十年以上、葦原と呼ばれる湿地を埋め立て建物を建てるために莫大な費用と時間を掛けて、その間にも御公儀からはあれやこれやと注文が入り…と実に大変な事業だったことが分かる。
なのに御公儀からは吉原の外に遊女の派遣は禁止、夜の営業禁止、さらには新しい場所に移れと次々難題を突き付けられる。その度に名主である甚右衛門は吉原の店主たちから何故そんな難題を突き返さないのかと批判される。
こんな大変な事業をお上の一言で簡単に引っくり返されるのなら商売替えすれば…とも思うが、吉原の面々は諦めない。
吉原ならではのシステム、環境、磨き上げた女たち。
一方で吉原外の、御法度の筈の売色商売もまた強かに生き延びている。
花仍の西田屋は良心的な店だと思う。遊女たちに無体なことはしないし、年季明け後は嫁入りの世話をしたり、それで出戻って来たり年季明け後にも行くところがなければ遣り手婆として雇ったりしている。それどころか花仍は店の者に甘いと言われるほど遊女たちを思いやっている。
親に売られた惨めな娘たちが吉原で磨き上げられ、ついに大店の主人や旗本やさらには大名とも渡り合える、外も内も見事な女になる。
それでも西田屋は女性たちの一番輝く時を奪う外道な商売をしている。その自覚を持って吉原を盛り上げるために花仍は走り続ける。
吉原の歴史を描くという点では興味深いが、話がサクサクと進むのが勿体ない。もっと掘り下げて欲しかった。
特に親子ほど年の違う甚右衛門と花仍夫婦の関係は希薄で、甚右衛門が花仍のことをどう思っていたのか分からなかったのが残念。甚右衛門の言葉の端々からそれなりに花仍のことを思っていたことは分かるものの、夫婦としての心の絆はどうだったのか。花仍は知りたがるのは粋じゃないみたいなことを言っていたが、私は知りたかった。
むしろ番頭の清五郎や幼なじみの由蔵との関係の方がしっかりしていて違和感があった。
また血の繋がらない娘・鈴も、友達の親が吉原での法度を犯したとは言え甚右衛門により磔刑にされるという恐ろしい出来事がありながら、西田屋の商売を引き継ぐのだが、そこに行き着く心の変遷を描いて欲しかった。
甚右衛門の時に鬼にすらなる覚悟と忍耐を引き継ぎ、その願いを叶えた花仍だが、嘘と真が巧妙に絡み合う不夜城の進化を更に見守っていく。出来れば若いときに花仍が夢見た一面の桜で彩られる不夜城を花仍に見せて上げたかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
吉原、ここに始まる。
江戸時代初期、幕府公認の傾城町が誕生した。
幕府からの次々の難題に立ち向かいわたし達のよく知る吉原を作り上げた庄司甚右衛門。
物語は甚右衛門の妻である「かよ」の女将の一生を
描いたものです。
面白かった!
朝井まかてらしく読みやすい!
吉原に興味がある方はぜひ読んで欲しい!
装調も色っぽくて素敵です(〃ω〃)-
2022/10/08
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じゃ恋歌から読んでください〜
西條奈加もどうぞよろしく!六下落々とか
葉室麟の蜩の記とかも_φ(・_・じゃ恋歌から読んでください〜
西條奈加もどうぞよろしく!六下落々とか
葉室麟の蜩の記とかも_φ(・_・2022/10/09 -
2022/10/09
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mofuさん、おはようございます。
レビューを読みました。
この本は、レビューが多いので何度か書店で手に取りましたが、字が小さくてその都...mofuさん、おはようございます。
レビューを読みました。
この本は、レビューが多いので何度か書店で手に取りましたが、字が小さくてその都度これは読めないと諦めました。
mofuさんのレビューを見て楽しんでいます。
有難う御座います。
やま2019/11/07 -
やまさん、こんにちは。
いいね、とコメントをありがとうございます。
まかてさんの作品は好きでよく読みます。特に今回のようにスカッとし...やまさん、こんにちは。
いいね、とコメントをありがとうございます。
まかてさんの作品は好きでよく読みます。特に今回のようにスカッとした女性の作品は読んでいてこちらもスカッとしますね。
やまさんに気に入ってもらえると嬉しいです。
字の大きさは大丈夫だったでしょうか?
こちらこそ、これからもやまさんの本選びを参考にさせてください。
ありがとうございました(^-^)
2019/11/07
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太平の世を開いた江戸初期のエネルギーを吉原の誕生を舞台にその立役者である甚右衛門・花仍夫婦の視点で描いています。本作の評価が高いようですが、ドラマとしては推進力が弱いと感じました。吉原の成り立ちを紹介するためのドラマ仕立てに見えます。朝井まかての傑作群に比べると随分見劣ります。一方、本書の表裏表紙の美人画は華やかで素晴らしい。画家の黒川雅子さんは他書にも多くの挿画をされておりいずれも魅力に富んでいます。
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遊女屋の女将花仍の一代記
花仍の亭主の甚右衞門は、十年来の念願であった「売色御免」の許しを幕府より取り付け、大阪や京都に引けを取らない傾城町『吉原』の創設という大事業に乗り出す
亭主を支え、陰になり、時に表に立ち、世間の傾城屋に対する冷たい目、何度にも渡る御公儀の無理難題、度重なる大火を乗り越え、遊郭=吉原と後世にも認識される傾城町を作り出したのだ
畳に大きな紙を広げ、大小の傾城屋が頭を寄せ合って、町割りを考える様、あちこちで普請が始まり、表に籬(まがき)という朱色の格子が組まれていく様、映画で見る吉原の風景が出来上がっていく様子には、わくわくした
家の借金のかたや人さらいに売られた年端もいかない女の子が、必死に見習奉公をし、芸を磨き、端女郎、格子女郎・・・と年季が明けるまで勤めあげ、一人前の女になっていく
長襦袢から打掛まで三貫目もある衣装を身につけ、内八の字を描きながら道中を歩く姿、その凜とした笑みに女の意地・気概を感じる
不浄のもの、卑賤のものと蔑まれながらも、家族を支え、男社会を支えた女性たちがいた
江戸の文化の一翼を女性が担っていたのは、間違いないことだろう
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江戸時代初期、吉原町を作ったとされる、実在の庄司甚右衛門の妻、加仍が、女将として活躍し始める、23歳から、大祖母様と呼ばれる立場で、息を引き取る瞬間までの人生が書かれた本。
単に、苦界に身を落とした、遊女達の悲哀を描くのではなく、度重なる、公儀の無理難題に、知恵を絞り、吉原の地位を確立していく内容が、読んでいて、気持ち良い。
元吉原を作る際に、見世の格に合わせて、格子の籬が張られている情景は、応為の「吉原格子先之図」が思い起こされた。 -
江戸初期、幕府公認の遊郭・吉原という町を造り上げた、西田屋甚右衛門の妻・花仍の生涯を描いた作品です。
公儀と根気強く交渉を重ね、町造りに励む甚右衛門がいつも淡々としているのに比べて、花仍はすぐカッとなったり逆にクヨクヨしたりと、人間味はあるもののそこが女将として若干未熟な部分かなという感があります。ただ、その辺をトラ婆や同業の女将たちがフォローしていて、花仍の周りの女性キャラ達が魅力的なのがさすが朝井さんです。
公儀からの無理難題や、大火によって町ごと焼失してしまうなど、度重なる困難を乗り越えながら吉原という異世界を作り上げた人々の姿に逞しさを感じました。 -
“売色御免”幕府公認の傾城町「吉原」ができあがる頃、舞台は江戸初期。
庄司甚右衛門は実在だろうし、聞いたことがあるけれど、その嫁、西田屋女将の記録はあるのかなあ。主人公は、吉原創成者であり惣名主である西田屋の甚右衛門の妻、花仍(かよ)を中心に描かれる。
すごく切り取られた狭い異世界、異質だよなあ、吉原の歴史って。出自もわからず拾われて、色里のなかで育てられた花仍だからこその、ときどき見せる視点の偏りみたいな言動が、吉原という場所の特殊な枠を逆に彩る感じがした。
犠牲になりつづけだった若菜はとても哀しい半生だったけれど(親はほんとに胸糞悪い(0皿0#))それでも、苦界に沈んだ多くの女たちのなかでは、まだましなんだよなあ。物語の表面にすら登場できない行間の網目の奥の奥の、なんのために生まれてきたのかわからないまま辛い思いだけで朽ちた命がたくさんあっただろうことに、改めて思い馳せる。
甚右衛門の心中はあまり描かれないんだけれど、どういう思いだったんだろうな。必要悪の使命に生き貫いた男、彼を描いた作品はいろいろあるだろうからまた探してみようかな。ひとの親なら女なら、心削られる世界ではあるけれど、季節や衣装の描写などは素晴らしく、むかしむかしの江戸の異世界に心を飛ばせる一冊。この方の作品は間違いないなぁ、読んでよかったです。 -
吉原遊廓創設者とされる庄司甚右衛門とその妻の話。
やはり遊郭の物語は切なさを伴う。
遊女を題材にした作品は何作も読んだ事があるが、
吉原成り立ちについて書かれたものを読むのは初めて。
吉原と幕府の戦い、知らなかったなぁ。
かなり興味深く読んだ。
花仍はジメジメとした感じがなく、一本筋の通った潔い性格で読んでいて気持ちが良かった。