赤い刻印

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575239638

感想・レビュー・書評

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  • 「傍聞き」に登場した女性刑事の短編の後日譚を含む短編集。大きな謎ではないが、日常の謎までは小さくない、この作家さんらしい謎が読みやすい。特に2作目の「秘薬」がお気に入り。短編の中にも、たくさんの伏線が張ってあり、すごく読みごたえがあった。

  • 4話からなる。
    「赤い刻印」
    親から子へ、子から孫へと、受け継がれて行った赤ちゃんの手形。
    そして、名前のない贈り物 お守り。その生地に描かれたナナカマド。
    一つ一つの暗号のようなものが、最後に、結論を引き当てる。
    母親が、自分の生みの親の犯した罪を暴くことになる。

    「秘薬」
    頭の側頭部に血腫で、倒れた水原千尋。
    もうすぐ薬理学の試験があるのに、覚えられない。
    少しづつ、身辺整理をしつつ、薬の一覧表で、名称、効能、用途を暗記する毎日であるが、、、、記憶障害であろうか?、、
    自分の準備をするたびに、後からペナルティを科すことに解決策を考えた久我に、千尋が、取った行為は、ビックリするものであった。

    「サンクスレター」
    子どもが無くしたメモ。
    それだけのことに、校舎の3階から飛び降りて自殺した息子。
    好きであったカードゲーム。
    そのカードゲームで、引き当てた子供は、、、我が子の臓器を移植した子供であった。

    「手に手を」
    介護の問題である。
    母親の介護と、186㎝100キロの弟の面倒を見ないといけない和佳は、婚期も逃し、ストレスをためている。
    幼友達の医師海老原が、母親の病気を診てくれるのだが、、
    口承法の漢字の覚え方「辛抱」の「辛」に一棒足して「幸」にするんは、、、

    スーッと小説の中へ入って行けるのだが、暗号のような、一つ一つをジグソーパズルの空いたところにはめていくような小説である。
    ピタッと収まっても、答えが出るような話でないのが、少しすっきりしないのであり、又ほかの作品は同なのかと、気になる作者である。

  • 傍聞きの続編の短編が良かった。全部まさかの結末!。

  • 人間の繊細な心の動き、哀しみ、憂い、

    怒り、驚き、怯えが細やかに描き出されている。



    この作家さんの短編には、いつも、唸らされる。



    いつのまにか、思いがけない結末に導かれ、

    それでも、違和感はなく、納得してしまう。



    「傍聞き」に登場した母娘が再び登場する

    表題作の「赤い刻印」ほか、3編。



    中学三年の菜月は、刑事である母、啓子から、

    自分には二人の母親がおり、実母はまだ生きているのだと

    聞かされる。



    そんな母のもとには、毎年春、お守りが届く。

    送り主はわからない。



    そして、物語は、ある事件への結末へと繋がっていく…。

    (「赤い刻印」)



    主人公の女子医大生が記憶障害に陥る。

    医師になる道は閉ざされた。

    だが、物語は淡々と続く。



    一日一日、記憶をなくしていく彼女に

    医師は日記を書くよう指示するが…。

    (「秘薬」)



    小さな謎が解き明かされる時、

    心が動かされることに気づく。

  • 4つの短編を集めた作品集で、病気や子どもの自殺、介護など、どれもテーマは重い。

    謎が解き明かされると、なるほどとじんわり沁みてくるし、真面目で地道なよさは確かにある。でも、『傍聞き』『教場』もそうだったように、残念ながら時間の経過とともに私の記憶からは消えてしまいそう。
    個人的には、トリックもいいけれど、地味なりの深みや凄みが加わってほしいな、という感じ。

  • 短編の上手い作家さんだといつも思うのだが、今回は切ない話が多かった気がする。ただいつもよりインパクトに欠けた感じがした。

  • 『傍聞き』再び。気をつけていないと見過ごしてしまう巧妙な伏線と登場人物の心の機微。あの人物も登場。感嘆の4篇だが前作のような衝撃はない。

  • 短編4編。「サンクスレター」はちょっと出来すぎかなと思ったのですけど、表題作は文句なし。「傍聴き」の続編と言うことなので、そちらも読んでみようと思います。

  • あっという間に読めて良い。
    どんよりとした作風だけど、どの話もしっかり作られていて真相には感心させられる。

  •  長岡弘樹さんの新刊は今回も短編集である。全4編は少ないが、いずれも濃密。同じ双葉社から刊行されている『傍(かたえ)聞き』と、コンセプトは近い。

     「赤い刻印」。『傍聞き』の表題作に登場した、刑事の母と、娘が再登場。関係は改善したようだが…母は養子だったと、娘は急に聞かされる。母の「産みの母」との交流が始まるが…。母がしたことは、職業上当然なのか。新聞記者志望の娘は割り切れない。だが、同時に母娘の情を知る。また冷戦状態にならなくて、何より。

     「秘薬」。医学部生の彼女が、厳しい現実に直面する。苦手な学科長との定期面談を課されるが…。聡明な彼女は違和感に気づき、学科長に詰め寄るが、意図は見抜かれていた。患者だった女性にも。生来の「貧乏性」が、幸いしたと言える。専門家でもない僕は、少しでも回復することを願うしかない。医師の道は厳しいだろうが…。

     本作中最短だが、一押しの「サンクスレター」。小学生の息子を自殺で亡くした父が、学校側に対し、とうとう強硬手段に出た。それで自殺までするのかと思わなくもないが…隠したくなる心理もわからないでもない。しかし、その賭けは、ちょっとどうなのか。担任はともかく、この父親には寛大な処分を願いたい。

     現代的テーマに迫る「手に手を」。母の介護と弟の世話に追われ、婚期を逃した女性。彼女自身の肉体も、楽ではない。ニュースで聞く度、やるせなく感じるものの、当事者でなければその苦悩はわからない。身近にいい医師がいたことが、唯一の救いか。何も解決はしていない。それでも、ちょっとだけ温かくなれる、そんな1編。

     本作を読んで気に入ったなら、文庫化されている『傍聞き』も、是非読んでほしい。十分長編にアレンジできそうな内容を、短編で気軽に味わえる、この至福の時。短編でここまで読ませて、強く訴える作家は、なかなかいない。

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著者プロフィール

1969年山形県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。2003年「真夏の車」で小説推理新人賞を受賞し、05年『陽だまりの偽り』でデビュー。08年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。13年刊行の『教場』は「週刊文春ミステリーベスト10」の1位、「本屋大賞」6位などベストセラーとなった。他の著書に『線の波紋』『波形の声』『群青のタンデム』がある。

「2022年 『殺人者の白い檻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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