ゴサインタン: 神の座

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575232660

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  • ネパールからもらった妻が神だったという話
    重いぞ

  • 山本周五郎賞(1997/10回)

  •  ひどく分厚い文庫だ。原始的な宗教のようなもの。憑依する女。
     結木輝和という代々続く、いわゆる庄屋の農家の息子は、嫁のきてもなくいつの間にか40歳近くなっていた。集団見合いで、ネパールの娘たちと集団見合いをする。その中の日本人に似た顔立ちの女性のカルバナ・タミと、結婚するところからはじまる。見合いの費用は20万円。結婚がまとまった時には300万円の謝礼。それほど、財産を持っていたとしても農家にお嫁さんは来なかったのだ。輝和はカルバナに自分が好きだった女の名前の淑子と名づける。
     母親は、カルバナを気に入り、一生懸命日本語や日本の作法や躾を教える。しかし、カルバナはほとんど日本語を覚えることもしない。「あります。います。まだ。大丈夫」という言葉しか話せなかった。そして輝和は淑子の間に子供を生まれることを期待するが一向にその気配もない。見合いの日に輝和の飼っていた白い猫が死ぬ。そして厳格な父親は寝たきりになっていたが死ぬ。その死に方が不思議な死に方だった。さらに父親が死ぬことで気が抜けたような母親も死んでしまう。兄はアメリカで仕事をして、アメリカで生活する。輝和に全て結城家を任せる。天涯孤独な輝和には淑子がいた。そして、結木家の搾取の歴史。富の形成などを郷土史を通じて知る輝和。結城家は戦後の農地改革で、その土地の大半を失ったものの、結城家には一町歩の畑と貸家が20軒ほどあった。淑子が奇妙な行動を始める。淑子は不治の病気を治したり、探し物のありかを教えたり。いつの間にか淑子の周りに信者ができてくる。淑子は「私を礼拝供養しなさい。心のうちより邪な神を追い払い、私を礼拝しなさい」という。周りの信者は淑子を神様と呼び始める。淑子はいう「強くなってはいけません。強くなることは他の生命を食べてしまうことです」。淑子は、結城家にあるお金や着物や宝石などを信者に配り始める。輝和が相続のために銀行から借りたお金を含めて5000万円を信者にばら撒く。あっという間に、結城家は没落する。淑子は輝和に「全てを捨てなさい」という。立派な庭も屋敷も畑もなくなる。淑子の予言で新興住宅への山からの土砂くづれを予言する。そして、多くの人が助かる。ますます淑子への信者が集まる。そして突然の淑子の失踪。淑子は、ネパールに帰ったという情報を得て、輝和はネパールへ淑子を探しにいく。ネパールの複雑な歴史と少数民族にまつわる宗教。篠田節子は実に丁寧に掘り起こしていく。ネパールに住む生きた女神、クマリ。サンスクリット語で「処女」を意味する。初潮前の幼い少女から選ばれる。そして、初潮が来れば、解任される。クマリを経験したものは結婚することができない。カルバナも、霊峰ゴサインタンの麓のラジ村からきたタマン族の出身で、クマリのようなことをしていた。とにかく、突然憑依する淑子がなんとも言えず神々しい。原始宗教の姿を浮かび上がらせる。
    面白いなぁ。

  • 万人に受けるかどうかは謎。
    でも久しぶりに集中して一気に読んだ!
    猫って、なんかの伏線かと思ってた~。

  • 長編。代々地主で農業を営む40歳未婚の主人公が、外国人女性相手の集団見合いで、ネパール人の妻を迎えてから起こる奇跡とも狂気とも言える出来事を体験する物語。実話かと思うほど主人公の状況や各々の心情や設定が無理なく詳細で、読者も一緒に飲み込まれて行く感じになる。妻が神憑りになるシーンが続くところも、最初は超常現象を否定する主人公の冷静さから段々半信半疑、ついには信じられるまでになる過程はまさしく読者も同じ心情。ラストでは、すべてはこの日のためだったのだ、とすとんと思える。大きな力を感じさせる大作。

  • 篠田節子の筆力をご堪能ください。
    感想はこちら。
    http://xxxsoraxxx.blog11.fc2.com/blog-entry-10.html

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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