本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569849898

作品紹介・あらすじ

残業なし、大学費は無料、大の議論好き、無借金国…似て非なる国の日本とドイツ。サスティナブルな日本社会をつくるために今できること。

感想・レビュー・書評

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  • 「職業:ドイツ人」(引っかかるがちゃんと冒頭で解説してくれている)のマライ・メントラインさん、おなじみ池上彰氏と増田さんによる対談形式。初版が昨年の9月だからまぁまぁ情報は新しい。

    マライさんの事は今回初耳だったけど、会話の端々から知性や有能さが滲み出ている…二度の日本留学に加え、15年の在日歴でも「毀誉褒貶(きよほうへん)」って言葉が出てくるか?
    自分が対談の場にいたらドイツの話よりも先に、彼女について色々聞き出そうとするかも笑(他のお二方の手前、聞かずじまいになるのがオチなんだろうけど…)

    ドイツ国内の土地柄から対談は始まる。各地方を日本の地方に当てはめ、特に「同じドイツ語圏のウィーンは京都に似通っている」ってくだりは、行ったことすらないのに納得できた。その感覚がまた刺激的で面白い!
    池上氏は相変わらず会話が解説になっていた笑

    全章要約したいけど自分の技量では…(以下略)恒例の、特に気になった箇所だけ抜粋↓
    【労働】
    バカンス好きとかノー残業のイメージは前からあったけど、仮に残業したら別の日から残業した時間分を差し引く「時間バンク」って制度まで備わっている。ノー残業然り、そうやって長所ばかりに目が行っちゃうんだよなー笑 でも「日本は全然なってない」とか言って優劣付けちゃうのは違う気がする。
    あちらはあちらで即戦力第一主義だったりと、就活面はなかなかに厳しそうだし。

    【教育】
    「(日本の学生は)出来合いの正解を求めている」マライさん…手厳しいけど的を得ています。テスト形式一つを取ってもそう。マークシート形式が一般的な日本で論述問題を出そうものなら、「採点基準は先生の主観だ」といちゃもんを付けられる。今まで意識してこなかったけど、「平等/公平」へのこだわりはここにも表れていたのかと。
    平等を唱えているわりに、教育格差が出ちゃうプロセスもまた嫌らしい。

    【政治】
    わが国の首相が短期間で変わる理由について、以前別の本の著者が「彼らも日本人でシャイだから、顔を覚えられる前に辞めたがるんだ」ってジョークを飛ばしていたのを何故か思い出した。実際、戦後-昨年9月時点でドイツでは8名が首相を務められたが、対して日本は34名。
    ドイツでは周辺国からも支持されるから長期政権化し易い。日本側だって勿論シャイな訳じゃないけど、世襲制に近いから変な義務感に囚われて長続きしないのかなと思えてくる。


    …読後はまぁまぁ息切れ状態。
    この世の諸問題を一身に浴びたみたいなのもあるけど、途中何度も立ち止まって考えていた。それだけ思うところがあったり、或いは曖昧にしたまま生きてきたんだと痛感したり。
    同時に「隣の芝生は青い」と言いますか、お国事情が違う他国を引き合いに出す思考にも陥りがちだったのかと。

    何が正しいのかをまずは自分の頭で考えアウトプット出来るようになっておかねば…と言うのが、何もかもが主体的な御三方を見て導き出した答えである。

  • ドイツの○○は素晴らしい、それに比べて日本は、、、

    というドイツ礼賛(らいさん)の発言をしばしば耳にします。
    教育や環境問題や働き方や政治の在り方など、日本の抱えている問題に何か意見したい時に、
    ドイツでできているのだから日本でもできるでしょ。と主張するための根拠にしているわけです。

    「必要以上にドイツを褒めちぎることは、ドイツの正しい理解に繋がらない。」
    「日本のマスコミは都合のいい部分しか報道していない。」
    と、ありのままのドイツを知って欲しいと思っているのが、マライ・メントラインさん。

    池上さんと増田さんは、マライさんに何を語らせるかのネタ振り役だと思って読みました。

    実はこういうことだとの説明がいろいろとありました。
    そのうちの幾つかを簡単に紹介しておきます。

    メルケルさんは、東日本大震災で起きた福島の原発事故を教訓にしてドイツでの脱原発を決めたみたいに日本では報じられています。
    実は、チェルノブイリの放射能がドイツにも汚染問題を作っており、脱原発と福島はあまり関係はなく、2000年くらいからその方針だった。
    メルケルさんはむしろ原発利用の延命策を打ち出していたが、その矢先に福島で原発事故が起こり、早期の脱原発へと舵を切り直すはめになったのだと。

    教育では、評価するのに、テスト結果3割、日常の授業7割くらいの比重らしい。
    日本だとほぼテスト結果だけで評価されるので何故?と思いました。
    ドイツではテストは論述なので、先生の思想や好き嫌いに左右されるという親からの批判があるのだそうです。
    だから、授業での発言内容や課題に取り組む姿勢を評価ポイントにせざるを得なくなっています。

    マライさんが驚いたというのが、日本のマークシート方式で採点するテスト。「問題の答えが書いてある。ドイツでは考えられない!」
    自分の描いた文章が中学の国語のテストに使われていたことがあるそうだ。
    この時の筆者の気持ちを問うのに5択で回答を選ぶ。マライさん自身の答えは2と3の間くらいかな?だったと。

    ドイツは難民を大量に受け入れていますが、それが問題だとし、難民を入れるなと強く主張していた政治グループがあります。
    ところが、コロナによる人々の移動制限により、自ら何もしないうちに実現してしまったので、新しい主張を作らざるを得なくなりました。
    それが「反マスク」運動。コロナ禍の最中になのに?と日本だと受け入れられない主張です。
    これも、"ナチスは緊急事態宣言を出して国民の自由な権利をどんどん奪っていった"、という日本には分からないドイツならではの闇の背景があるためだそうです。

    ドイツでは歴史でナチスを必ず取り上げ、皆で議論し、反面教師としているそうです。
    だから、コロナ禍でも「反マスク」運動容認となるのに納得いかない面もありますが、、、
    日本では現代史はほとんどやらず「あとは教科書を読んでおいて!」で済ましてしまうのとは大違いですね。

    国境を9か国に囲まれているドイツでは、地政学的条件を加味した近隣諸国との関係を維持するのも大変です。
    そして、今のドイツは西と東が統一されて成っています。
    ドイツ国民は「どうしてこれが必要なのか」を論理的に説明し実践する政治家を選び、難しい問題を克服してきました。

    マライさん曰く、
    日本人は「国が決めた」から仕方がないとあきらめムードに入ってしまう。
    何かを決めるのは"国"ではなく、その時の"政府"。
    その"政府"を変えることができるのは国民。
    賛成するのも反対するのも人間(国民)の役割だと思う。

    日本人は政治に無関心で役割を果たしていない、と言われています。
    もうすぐ衆院選がありますが、日本国民はどういう意志表示をするのでしょうか?

  • 池上さんの本130冊目で、いつのどの本か覚えていないけど
    大学受験の年に東大入試が無かったとあったので
    池上さんは東大を受けたかったのではないか?と書きました。
    でも、この本で東京教育大(現・筑波大)であることが判明しました。

    さてこの本は池上さんと、私がすでにコンビの本を6冊読んでる増田ユリヤさん、そしてマライ・メントラインさんとの鼎談。

    マライさんは「職業:ドイツ人」おそらく30代後半
    ご両親は戦後世代、母方の祖父は元ナチス親衛隊
    父方の祖先はドイツ共産党員でナチ政権下で投獄されていた
    そしてお姉さんは同性婚だそうです。

    そんなお三方の鼎談、すごく面白かったです。
    こんなに頭の良い池上さんでも、「ベルリンの壁」崩壊を生きて目撃できるとは思っていなかった。
    マライさんはなぜHikikomoriが日本に多いのか?という。
    などなど、働き方、教育、社会保障、政治、環境問題…いろんなテーマで語ります。

  • 密かにドイツ移住を企んでいるので読んでみました。
    ドイツ賛美の意見には触れることが多かったけど実際どうなの?というところを知れて、非常に参考になりました。

    改めていいなと思ったのは、ドイツでは多くの人が「子どもは社会全体で育てる」という意識を持っている、という点です。
    教育も自己責任な日本から比べると理想郷のように思えますが、それでも移民の教育水準が上がらなかったり、10歳のタイミングで将来の進路を決めないといけなかったり、大変なことも多いということも知りました。

    人間がやってる以上完璧な制度にはなり得ない、というのは本当にその通りだと思います。

    あと、エコに対して意識高いマウントとか、ビーガンマウントとかが存在してたりするのも面白いなと思いました。

  • ドイツ人と日本人、結果は似ていても、根拠やプロセスがまるで違う。

  • ドイツのことがとても良く分かる本。
    知っていたつもりが改めて理解させられた内容であった。マライ・メントラインの日本語能力、コメント力は凄い。池上彰氏の知識量はさすがだ。

  • 御三方は、テレビでお馴染みの方でとても楽しく読み進められました。比較しながら、ドイツと日本のことを考えられ、ドイツという国をもっと知りたくなりました。

  • ドイツ
    俺ルールを合法的に周囲に押し付ける

    家を出たらすべてが政治
    10歳で大学進学か、職業専門学校(15歳~)の技能職かを決める
     大学進学率41% 大学まで無料 塾は無し
    日本史と世界史があるのは日本だけ? ヨーロッパの歴史では日本は登場しない
    定義されていないことはやらない サービス砂漠

    親の経済状況ではなく子供の福祉 児童手当は一律 「子供は社会で育てる」
     日本人:社会的な問題への突き放しと無関心

    積極的土下座外交
     ドイツの謝罪=被害者への直接の謝罪+賠償金+罪の自覚と再発防止

    森の民 環境意識
     食事にはこだわらない 味ではなくプロセスや品質を求める

  • 日本とドイツの比較論。比較することによって、日本に足りないところ、伸ばすべきところが見えてくる。

    一つ、大きくドイツを見習うべきことは「論理立てて説明する」「筋を通す」ということを非常に大事にしている、ということかと思う。日本に住んでいると、こういったことが足りずに不満がたまっていくのを実感する。

    日本をよくしていくために、また、ドイツを知るために非常に示唆に富む一冊。

  • マライ・メントラインさんの記事を気になったので、数少ない著作の一つとして手にとって見た。

    日本とドイツの違いについて、エネルギー、SDGs、家族、政治、バカンス、仕事、教育などの観点で鼎談。


    ドイツでは残業がほぼゼロで、休暇も1ヶ月以上連続で休むのが普通だそう。うらやましいと思った。。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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