戦争というもの

著者 :
  • PHP研究所
4.12
  • (34)
  • (34)
  • (13)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 394
感想 : 43
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569849652

作品紹介・あらすじ

歴史探偵が綴った最後の原稿――。太平洋戦争を理解する上で欠かせない名言とその背景を解説し、「戦争とは何か」に迫る著者渾身の書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「日本文明を読む」第10回 半藤一利『戦争というもの』(PHP研究所、2021年) | passport | 大阪観光大学の学生や教員が運営するWEBマガジン(2021.08.11)
    https://www.tourism.ac.jp/passport/column/1121.html

    特集ワイド:今、聞きたい 半藤末利子さんの戦争体験 人間を人間でなくす狂気 | 毎日新聞(2023/5/10 有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20230510/dde/012/040/007000c

    編集者 北村淳子さん 「戦争は絶対にダメ」 祖父・半藤一利さんから受け継いだ非戦の思い | 東京すくすく | 子育て世代がつながる ― 東京新聞(2022年8月21日)
    https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/kazokunokoto/59263/

    戦争というもの | 半藤一利著 | 書籍 | PHP研究所
    https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84965-2

  • 半藤一利さんの遺作。
    亡くなる1年3か月前、酔って転んで脚の骨を骨折したのが入院のきっかけだそうです。
    (私も気をつけねば)
    でも最後までしっかりお仕事できたのは、さすがです。
    戦争へ暴走しないために、戦争経験者の立場から
    私たちにたくさんのことを教えてくれる本です。

    自分が淋しかったのは、
    つい昨日『角川まんが学習シリーズ 世界の歴史 13 帝国主義と抵抗する人々 一八九〇~一九一〇年』を読んだばかりで
    東南アジアの人たちが、列強の仲間入りをした日本に倣い
    日本に協力してもらって自分たちも独立していこうという思いをいだいているのですが、どうも日本の思惑は違うようだと気づき始める。

    半藤さんがこう言っています。
    〈高村(光太郎)さんのように、本気になってアジア開放のためにアジアの人々のために戦争に向き合い、戦犯視された人はほかにもいることはいました。その数は決して少なくなかったと思います。
    しかし、残念ながらほとんどの日本人は、まずアジア諸民族を軽蔑しきっており、それらの国を欧米列強のかわりに日本が支配する。つまり大東亜共栄圏の名のもとに、大日本帝国がアジアの盟主となって支配する、そのための絶好の機会をとらえての戦争と、まことにいい気になっていた、と言えます〉

    平和な時代に生きる私たちが当時の人たちにとやかく言う資格はありませんが、少なくても自分は「驕慢」にならないよう、心に留めておこうと思いました。

  • 半藤一利氏が雑誌『歴史街道』に「開戦から八十年—名言で読み解く太平洋戦争」を執筆する条件として、PHP研究所に籍をおく孫娘が編集を担当することで連載が始まりました。企画段階で37篇の「名言」が掲載される予定でしたが、2021年1月帰らぬ人となり、本書の14篇をもって遺稿となりました。 半藤氏の東京大空襲で九死に一生を得る戦争体験をとおして語られる著作からは、凄惨な歴史から学ぶべきことの重要さが切々と伝わってきます。戦争の語り部から戦争をなりました知らない読者へ、平和の願いを託された最後のメッセ-ジです。

  • ーえっ? 日本が昔 アメリカと闘っていた?
    という言葉を この耳で聞いたことがあります
    まだ10代の若者であったとは言え…

    なんとも いえない 嫌な気持ちになったことは
    今でも 覚えています

    ー八月や 六日九日十五日
    俳句の世界ではすこぶる有名なんだよ
    (本文より)

    私は(周知のことであるとは)知りませんでした

    ー十二月八日
    のことを 全く知らない若者には
    何人も出逢いました

    最後の方に
    「戦争は
     国家を豹変させる
     歴史を学ぶ意味は
     そこにある。
          半藤一利 」
    の手描き(鉛筆)の文字が
    心に迫ってきます

    そんな今だからこそ
    読まれて欲しい 一冊です
    そんな今だから
    手にしてほして 一冊です

  • 企画の段階では、37の「名言」を取り上げる予定だったが、2021年1月に著者が亡くなり、14の「名言」となりました。残り23の言葉についても、著者の説明と共に知りたかったです。

    学生時代には、戦争のことを学ぶ機会もあり、修学旅行などで、原爆資料館などを訪れることもあり、戦争の悲惨さを知り、憲法9条の問題なども、もう少し、日ごろから考えることがあったように思う。
    しかし、社会人になり、日々の生活に追われるようになると、いつの間にか、戦争のことを正面から考える機会が無くなっていく。
    徐々に、戦争だけは絶対にいけない、そんな上っ面な言葉だけが自分の中に残りつつも、戦争とはなんだったのか、新たに知ることも、知っていることを改めて見つめることも、積極的にはしなくなってきた。
    そこへきて、昨年からの新型コロナ、オリンピック。心なしか、これまでよりも戦争について取り上げているメディアが少なかったように思うのだ。そしてそれを、まあ仕方ないよなあ、こんなご時世じゃなあ、なんて思っている自分がどこかにいた。

    しかし、この本を、8月は積読にしたまま過ごしてしまい、9月に入って読み始めた途端、はっとした。そう。本当に、はっとしたのだ。自分の戦争のことを考えなくても仕方ない、戦争はしちゃだめだってわかってるから大丈夫、みたいな気持ちを、心底浅はかだと思った。
    この本は、名言を軸に、戦争と言うものがどういうものだったのか、そこから何を感じ学ぶべきなのかを、平易な言葉で綴ってくださっています。でもだからこそ、難しい資料を読むよりも、胸に迫ってくるものがある。
    言葉って怖い。その言葉によって、思い込んだり、思想として叩き込んだりすることで、社会が間違えた方向に向かっていくのが怖い。

    そして、著者がこう記しています
    『悲しい事実は現代にもつづいています。6月23日の沖縄全戦没者追悼式のときに、歴代の首相は挨拶のなかで、きまって「県民の心に寄り添って」といいます。そして美辞麗句で哀悼の意を表しますが、ついぞ国家としての謝罪をのべたことはないのではないか。わたくしはそう思うのです。しかも、いまの自民党政権たるや工事費一兆円をかけて辺野古の米軍新基地の建設を、沖縄の人びとの心のうちを無視して強行しているのです』
    『三枝昴之といういま活躍している歌人がいますー略ー彼がじつに見事に、いまの悲しい事実を三十一文字にまとめています。「沖縄県民斯ク戦ヘリ」「リ」は完了にならず県民はいまも戦う』
    私は特に右でも左でもないし、自民党政権を全否定する立場でもない。それでも思う。安倍政権から続く現政権も、戦没者追悼式に限らず、著者の言う「美辞麗句」が多すぎやしませんか?オリンピック開催にあたって繰り返された、安心・安全と言う言葉。菅首相は、戦没者追悼式で読み飛ばしもしました。人はミスを犯すものではある。けれども、上っ面じゃない、心からの哀悼の気持ちがあったら、原稿をただ読むだけ、だから読み飛ばしも起きてしまう、と言うことは無いのではないか。

  • はじめて手にした半藤一利さんの本が遺作になってしまったことが悔しいです。
    もっと続きを読みたかったです。

    後半、特に沖縄のところは胸に迫るものがありました。「県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と残して自決された司令官の大田実少将の電文に心打たれました。
    こんなふうに沖縄の人々に寄り添った人もいたのだと胸が熱くなりました。

    奥様(エッセイスト)の解説とお孫さん(編集者)の編集後記にも感動しました。

    著者本人の企画書のとおり、まさに“孫に知ってほしい”戦争の名言の数々、
    若い方こそ読むべき本ではないかと思います。

    知りたい事はまだまだあるので、今後も戦争関連の本は読んでいきたいと思っています。

    本書も定期的に再読したい本です。

  • 半藤一利さんは特に近現代史の研究家として第一人者であろう。しかし、安倍前首相や、その取り巻き達からは嫌われていた。第2次大戦における後世に伝えたい言葉を紹介したこの本は、半藤さん最後の著書である。
    まずは山本五十六。真珠湾奇襲にあたり指揮官だけの会議において「日米交渉が成立したら、例え攻撃機発進後でも直ちに帰投せよ」と指示したところ、機動部隊司令長官南雲中将は「実際問題として実行不可能」と発言。山本長官は「兵を養うは、一に国家の平和を守らんがためである。これができない指揮官は即刻辞表を出せ!」と叱責。各指揮官は全員シュンとなったという。司馬遼太郎は当時の日本について「現実の日本は、アメリカに絹織物や雑貨を売って細々と暮らしている国で、機械については他国に売るほどの製品はなかった。陸軍の装備は日露戦争時に毛の生えた程度の古ぼけたもの(主力小銃は三八式歩兵銃、主力戦車はブリキと揶揄された)で、海軍は連合艦隊が1ヶ月も走れる石油はなく、その石油もアメリカから買っていた。大戦争など起こせるはずもなかった。」と書いている。自称保守派連中でも、この現実を理解していない者が多すぎる。
    半藤さんは、昭和20年までの教訓で第一のものは「国民的熱狂を作ってはいけない」ということだという。
    また、アジア解放を掲げアジアの人々のために戦争に向き合っていた日本人もいることはいた。しかし残念ながら殆どの日本人はアジア緒民族を軽蔑しきっており、それらの国を欧米の代わりに日本が支配するというものだった。もし当時の日本人に岡倉天心や高村光太郎のように、苦しんでいるアジアの民を自分の苦しみとしていたならば、後々まで憎悪されるような圧政はなかったのではないかと書いている。
    沖縄戦において大田少将は大本営宛に「沖縄県民斯く戦へり。県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と電報を打った。しかし米軍基地問題等、沖縄の人々の心の内を無視して強行しているとも書かれている。実際このような考えは上だけでなく、例えば本土から来た警察の機動隊員が現地の人を「この土人が!」と呼び蔑んでいることを見ると、行政の末端に至るまで浸透していると感じる。
    参謀次長河辺中将手記には戦争末期、北の国境にソ連軍の大群が集結しているのを確認しておきながら、攻めては来ないと結論付け、ソ連の日本侵攻の報に接し「ソは遂に起ちたり。予の判断は外れたり」と書いた。そのお人好しさに滑稽感があるばかりとして、軍上層部の情報収集能力や国際感覚のなさを指摘する。これは株をやっている人にもお馴染みの、自分の都合のよい判断をする「正常性バイアス」というものだ。
    著者の企画メモにはこの本に記載されたもの以外にも、政治家や軍人らの有名な言葉が書かれている。それらに対する半藤さんの考えも読んでみたかったのだが残念である。

  • 毎年8月は極力戦争に関する本を読むようにしています。戦争を知らない私が、日本とは?日本人とは?という問いに向き合うときに戦争を知らなくていいのか?という想いがあるからです。戦争に触れれば触れるほど、平和な今の時代に戦争を知らないことの怖さを感じます。

  • 名を知りながら読んだことのなかった半藤一利さんの本をはじめて読みました。平易でわかりやすい書きぶりでページも少ないのに胸がいっぱいになりました。
    「沖縄県民斯く戦へり」の章はいつまでも私のこころに残るでしょう。
    ありがとうございました。

  • 今年の1月に90歳で亡くなった昭和史研究の第一人者「歴史探偵」の半藤一利さんの遺作です。「孫に知ってほしい太平洋戦争の名言」をエピソードとともに書いてあります。80年前、日本はなぜアメリカとの開戦に踏み切り、膨大な犠牲者が出てもなお戦い続けたのか…。この本を読めばわかります。この本には、沖縄での悲劇に代表される戦争の悲惨さ、当時の政治家、軍部などの無能さが詰まっています。文章も柔らかく、若い世代向きに書かれています。二度と戦争をしないためにも、すべての人が読むべき本だと思います。

全43件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

半藤一利の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
原田 マハ
宮部みゆき
アンデシュ・ハン...
朝井 リョウ
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×