凪に溺れる

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569847238

作品紹介・あらすじ

僕らは、生きる。何者にもなれなかったその先も――。一人の若き天才に人生を狂わされ、そして救われた六人を描く、諦めと希望の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 2000年生まれの作家さんだそうです。

    2018年10月23日に亡くなったボーカリスト霧野十太27歳と巡る人たちの物語です。

    十太と中学2年生のわずかな間だけ同級生だった、スイマーを目指す大宮夏佳は十太と初恋をしますが、転校により別れ別れになります。十太は夏佳の為に曲を作ります。夏佳はその曲をずっと覚えています。十太との約束も。

    十太の初めての彼女となる高校の少し危ない同級生、小崎聖来。聖来は十太のことを「私の神様」と呼ぶようになります。

    そして2015年。十太とバンドを組んでいたギターの石田正博。ベースの金木梓。ドラムの原田弘毅。やがてバンドは解散してしまい十太は一人になります。

    十太をデビューさせようとするワンダーミュージックの辣腕プロデューサー北沢。北沢は奇しくも十太の父の霧野久太と母親の加奈と同郷で高校の同級生で一緒にバンドを組んでいました。

    そして2019年。フリーのライターの相葉光莉は大学の寮のライブで十太たちの曲を聴いて覚えていました。光莉は水泳選手の大宮夏佳28歳のインタビュー記事を書き夏佳とともに十太の故郷である海辺の町を訪ねます。
    夏佳には婚約者がいますが「泳いでいればまた十太に会えると確信しました」といいます。
    十太と夏佳は特別な間柄の初恋の相手でしたが十太にも聖来がいました。

    「すべてのものは繋がるべくして、繋がっている」登場人物の誰かの言葉が響きました。
    2000年生まれのこの作者の作品はストーリーティングも上手いけれどセリフが光っていると思いました。

    十太の母の加奈「逆よ」「次第にねこうして微笑むことしかできなくなるの」
    夏佳「彼は愛の中で死んだ。宿命には殺されなかった。私はそれが、嬉しくて少し寂しい」
    「私は、わたしがこれまで信じたものを、これからも信じていく。それだけです」

  • デビュー作である「星に願いを、そして手を。」で懐かしさを感じ、発売当時から気になっていた本作をようやく手にとりました。

    デビュー作を書いたのは16歳の高校生、本作は20歳の大学生、羨ましい才能です。

    1人の天才音楽少年・霧野十太の成長期かと思いきや、十太の成長とともに彼の音楽で繋がった人々の物語。

    十太の高校時代から始まった物語は早すぎる彼の死で途切れることはありません。

    十太が作った「凪に溺れる」の歌と共に希へと繋がれていきます。

    前半、中盤から後半入口あたりまではのめり込むようにページを捲りましたが、何故が自分の中で後半に少しだれた感が残りました。

    ラストで希へと繋がっていくストーリーは人と人が繋がる温もりを感じさせてくれましたが、☆4つは...

    楽しみにしていたが故に、厳しくてごめん(^人^)




    自分にも劇的な未来が待っている。
    そう信じられなくなったのは、いつからだろう――。

    16歳にして小説すばる新人賞史上最年少受賞を果たした鮮烈なデビュー作、『星に願いを、そして手を。』から三年。
    現役京大生となった若き才能が、〝青春の難題″に立ち向かう!
    読了後、静かな感動と勇気が押し寄せる、「救い」の物語。

    【あらすじ】
    仕事も恋愛も惰性の日々を過ごしているOLの遥。ある日遥は、無名のアーティストの曲がYouTube上で「バズって」いるのを見つける。その曲にとてつもない引力を感じた遥だったが、数日後、そのアーティストの公式サイトで、「2018年10月23日、Vo霧野十太逝去。27歳」の文字を目にする。なぜ1年も前に亡くなった無名のアーティストの曲が、今更注目を浴びているのか。霧野十太とは何者なのか――。

    一人の天才音楽青年と、彼が作った「ある曲」を軸に、夢と理想、そして現実とのはざまで藻掻く6人の人生を描き切った、著者渾身の青春小説。

    出版社からのコメント
    プロローグ 眠れぬ夜 二〇一九年 遥
    一章 さよならワンダー 二〇〇六年 夏佳
    二章 白ゆき 二〇〇九年 聖来
    三章 うまれる 二〇一五年 正博
    四章 blind mind 二〇一八年 北沢
    五章 破顔 二〇一九年 光莉
    エピローグ 聖来
    内容(「BOOK」データベースより)
    仕事も恋愛も惰性の日々を過ごしているOLの遥。ある日遥は、無名のアーティストの曲がYouTube上で「バズって」いるのを見つける。その曲にとてつもない引力を感じた遥だったが、数日後、そのアーティストの公式サイトで、「2018年10月23日、Vo.霧野十太逝去。27歳」の文字を目にする。なぜ1年も前に亡くなった無名のアーティストの曲が、今更注目を浴びているのか。霧野十太とは何者なのか。一人の天才に翻弄された六人の人生を描いた、著者渾身の青春小説。
    著者について
    2000年、愛知県生まれ。2016年、『星に願いを、そして手を。』で第29回小説すばる新人賞を史上最年少で受賞して、作家デビュー。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    青羽/悠
    2000年、愛知県生まれ。2016年、『星に願いを、そして手を。』で第29回小説すばる新人賞を史上最年少で受賞して、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • NetGalleyJPで読了。
    発売は7月11日。

    デビュー作から3年、二十歳の著者は大学生になっていた。
    すごいなぁ、二十歳でも若いのにさぁ。。。もう言葉がありませんわ。

    若者らしい溌剌さ、
    というよりは若者らしいもどかしさと
    誰かといても誰といても
    孤独感が溢れる作品だった。

    1人のミュージシャンの
    一曲に多くの人の感情が年月を越えて絡み合う、
    芯のある作品だった。

    十太に知って欲しかった思いがありすぎて切ない。
    #凪に溺れる #NetGalleyJP

  • 読み終わったあとうまく息ができなかった、
    自分も「凪に溺れる」のタイトルと共にどこか遠くへ行ってしまうじゃないかと不安になった
    良い話だった、面白かったそんなありきたりな言葉で片づけられない。もっと魂の奥底で響くような話
    この話を読んで感じたのは、人は皆どこかで繫がってるんだなと強く感じたこと。
    この物語は、霧野十太に影響を受けた者達が、その影響を信じていいのかというところでそれぞれ葛藤していく物語。



    個人的には、夏佳が十太とくっついてほしかった
    でもくっつかなかったこそ、十太は皆が一目置く存在になったとも思う。

  • プロローグを読んだ時点で、ほぼストーリーがわかるような構成になっており、
    読みやすい。1日で読み終え、素直なつくりなので、読者として迷いはなかった。登場人物は「ネットワーク(繋がり)」を持っている点もキーワードかもしれない。彼は遠くに何が見えていたのだろうか?
    また、次の作品を読んでみたくなった。楽しみ。

  • 音楽が持つ残酷さを、そして音楽の持つチカラを思う。
    「バンド小説」というとどうしても激しさや熱さを思い浮かべるけれど、静かな力こそが、音楽の持つ本当の力なのかもしれない、とふと。

    たった一つの曲が、誰かの人生を変えていく。
    自分の人生を導いてくれる、背中を押してくれる、そして夢をあきらめないことの大きさを教えてくれる。
    人生の中でそんな一曲に出会えたら、多分その曲が生まれた背景を知りたくなる。
    誰がどんな風にこの曲を作ったのか。どんな思いを込めたのか。
    動けないでいる自分の「今」を肯定してくれる、そしてそのあとにある未来に一歩踏み出す力をくれた、その意味を知りたいと思うだろう。

    中学三年生で十太と出会った夏佳。東京からの転校生、自分の居場所を見つけられない二人の間に生まれた曲。
    そのたった一つの曲がつなげる13年間。
    高校生の聖来が大学生の正博がプロデューサーの北沢がライターの光莉が語る十太と「凪に溺れる」という曲のこと。
    プロローグですでに主人公十太の死が語られる。動かしようのない結末に向けて時間は動いていく。
    十太はなぜこの曲を作ったのか、なぜ13年経っても人の心を動かし続けるのか。そしてなぜ、十太は死んだのか。
    偶然ではない出会い、多分、それはみんな必然。
    人生の凪。その刹那に人はきっと何かをつかむのだろう。動かない今が持つ、次なる波への可能性を。

  • 一つの音楽によって様々な人の心を動かし交わり合っていく話。音楽は違う存在と思いながらもどこか照らし憧れ、共感している。
    何かに感動する気持ち、無性に心が動かされるものに助けられては縛られるような感覚を覚えたのがあったと思い出した。成長にするにつれ過去となっていくが原動力の一つだったと思った。


  • 霧野十太(ジッタ)
    無口で、遠い目をしてギターを奏でる青年

    どこかへ行きたい。
    でも、どこへも行けない自分。

    いま何故、ここにいるのかわからない。
    周りとの距離を感じて孤独を感じる人。

    居場所がなく、常に死にたいと思うが、
    ただ愛されたいと切望する人。

    何処まででも行けると信じれた、 
    何かが始まる予感がした。
    でも、その震える思いが分からなくなった人。

    何十年と時を経て諦めたはずなのに、
    僅かなきっかけで、もう一度、夢を思い出した人。

    このままで良いのか悩んでいるのに、
    その思いに蓋をしてやり過ごす毎日。
    思いがけない出会いから、踏み出すことを決めた人。


    十太の歌に出会って、震えた心が、
    ここではない、何処かで遠くに行けると信じて
    歩き出した、それぞれの物語。



    〜〜〜
    文中より

    どこかへ行きたい。っていうのは、
    どこへもいけない。と同義なんだ。


    あんなに一生懸命になれたものに、
    熱量を感じられなくなった自分に気づいて唖然とする同時にそんな自分に漠然とした不安を感じる。

    何かをガラッと変えてしまいたいほどの
    不満があるわけでもないけど、
    このままで良いのか?という
    一定量の不安が頭の片隅から離れない。

    変わらない、変えられない自分への閉塞感が、
    安定とも言えるはずの日常を息苦しくさせる。

  • 十太、そのタイミングで死ぬんか…。
    私にとっての十太は、不可思議/wonderboyさんだ。
    同じようにYouTubeで知って、はまって、
    これからというときに同じように突然なくなった。
    十太に重ねて、彼の人生につい思いを馳せた。

    こういう天才っているよな、と
    才能は長けていても
    なぜかそういう運には恵まれない。

    直前に朝井リョウさんの「桐島、部活やめるってよ」を読んだばかりというのもあって
    構成が正直似てて、もしかしてちょっと桐島を意識したのかな?ともふんわりと思った。
    群像劇って面白いなあ…よく考えられてる…

    文章から若さを感じた。
    良くも悪くも青臭さがあった。
    今後に期待の作家さん。

  • 青羽さんの作品は初めてでしたが、言葉の表現が美しかったです。特に「水」にまつわる言葉の表現が個人的には好きでした。透明感のある描写で、心にスーッと響きました。

    一つの曲にまつわる人たちを描いた青春小説。
    中心人物としては、あるバンドのボーカル・霧野十太。
    霧野に関係する人達を全5章+αに分けて、7人の視点で物語は進行します。
    題名の「凪に溺れる」は、バンドの曲名。それは中学生の頃に誕生した。曲にまつわる歴史、それに影響される人が描かれていて、そこには嫉妬や葛藤なども描かれています。
    その人達の心理描写は多く共感するところがあり、昔を思い出す自分がいました。何かをしようともがく姿が丁寧に描かれていて、グイグイと世界観に引き込まれました。

    曲によっては、その人の心を鷲掴みにさせます。何が響くかは人それぞれですが、曲に対する影響力は計り知れないなと感じました。それによって前に進もうとする、頑張ってみようと思わせることは素晴らしいなと改めて思いました。

    次々と浮かび上がる霧野の人物像。なんとなく孤独感のある人だなと感じました。
    なぜ死んだのか?は後々に明らかになります。ミステリー色を期待してましたが、特にありませんでした。霧野視点の表現はないため、こうなのでは・・・ということで締めますが、霧野の人生はどことなく悲しみを感じました。一人であるが故の寂しさが、色んな人の物語を読んで感じ取られました。
    「凪に溺れる」ぜひ聴いてみたいなと思いました。

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著者プロフィール

2000年、愛知県生まれ。2016年、『星に願いを、そして手を。』で第29回小説すばる新人賞を史上最年少で受賞して、作家デビュー。著書に、『幾千年の声を聞く』(中央公論新社)、『青く滲んだ月の行方』(講談社)など。

「2023年 『凪に溺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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