日本史に学ぶマネーの論理

著者 :
  • PHP研究所
3.58
  • (3)
  • (8)
  • (5)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 120
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569842936

作品紹介・あらすじ

なぜ政府は貨幣を発行するのか。「誰かの負債」が「みんなの資産」になる? 貨幣と国債に違いはあるのか。インフレーションは悪夢なのか。日本史の事例から考える、人気エコノミストによる令和時代の貨幣論。電子マネーの競争が激化し、貨幣がなくなりつつある今、改めて貨幣とは何か、マネーとは何かをつきつめる。
「貨幣の歴史は知的好奇心を刺激してくれる面白い話題である。海外の制度と比較しても独自性の高い日本のマネーの歴史――一見奇妙であり、それでいてどこか先進的な存在を知ることを通じて、間接的に得られるものも少なくないのではないだろうか。
貨幣とは、貨幣の未来とは何かというテーマにとどまらず、現代とは異なる貨幣のシステムを楽しむ――そんな動機を持って本編に進んでいただければ幸いである。」(「はじめに」より)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 経済学的アプローチで見た日本史ではなく、ひたすら貨幣の話。

  • ヤップ島(グアムとパラオの中間、100平方キロ、人口1万人) 石貨の島☆東京日比谷公園に実物ありP89

    古代律令制期の銭、江戸時代の寛永通宝→異なる理論に支えられている

    663年白村江の戦い 人口の1%を動員 広範な統治体制があった証拠

    683年 天武天皇 銅銭使用の命令・銀銭禁止/3日後にやっぱり銀OK→無文銀銭・10gとする説あり/計数貨幣(整えられた形式・個数枚数を基準に取引に用いられた)
    無文銀銭→縁起物、厭勝銭、絵銭として用いられた・当初は新羅から銀は輸入
    富本銭→683年の天武天皇の詔の銅銭の事とする説有力 シニョリジを得て藤原京の造営費とした

    商品貨幣(原材料の価値と貨幣額面が等しい)⇔名目貨幣

    皇朝十二銭(こうちょうじゅうにせん)/本朝十二銭(ほんちょうじゅうにせん)
    ①和同開珎 708年 珎を寶/宝の略字と考えてかいほう 珍の異字体 710年平城京遷都
    10gの銀貨=6g和同開珎銀貨 名目貨幣として成功
    6g和同開珎銀=和同開珎銅銭10枚(銅50g)

    発行13年後721年 銀銭1枚=銅銭25枚 銀地金1両42g=銅銭100枚
    銅の価値はまだ高すぎ→翌年には銀地金1両42g=銅銭200枚
    和同開珎銅銭と銀の交換比が銅地金と銀地金の交換比に近づく→私鋳造のインセンティブがなくなる

    天平期(730年代~760年代)各地で銅山 銅銭の増産以上のスピードで銭の流通拡大
    銭需要の旺盛さ→需要が多いから銭の価値が高い→1文で買える商品が多い→銭の枚数で測った商品の価値=物価は低い 物価とは貨幣価値の逆数である

    銅そのものがなければ発行量を増やせない→新貨幣の鋳造

    ②万年通宝(まんねんつうほう) 760年 1枚=和同開珎10枚
    ③神功開宝(じんぐうかいほう)
    ④隆平永宝(りゅうへいえいほう)
    ⑤富寿神宝(ふじゅしんぽう)
    ⑥承和昌宝(じょうわしょうほう)
    ⑦長年大宝(ちょうねんたいほう)
    ⑧饒益神宝(じょうえきしんぽう)
    ⑨貞観永宝(じょうがんえいほう)
    ⑩寛平大宝(かんぴょうたいほう)
    ⑪延喜通宝(えんぎつうほう) 907年 小型2.5g 銅の含有量が極小
    ⑫乾元大宝(けんげんたいほう) 958年 62村上天皇 小型2.5g 銅の含有量が極小

    43元明天皇 711年に蓄銭叙位令(ちくせんじょいれい)/叙位(じょい)とは位階(いかい)を授ける事→高い位が欲しい都の有力者はどんどんモノをお金にかえて貯蓄しそれを朝廷に献上

    新貨幣1=旧貨幣10の公式レート適用→銭は価値を保蔵する事ができない資産とみなされた
    政府は、貨幣を持つもの全てからお金を徴収できた事になる→同じ額の貨幣で買えるモノが減る・インフレへ

    平安期 荘園に不輸(祖の免除された土地)の増加 外交国防の喫緊性がない時代→貴族は日本全体の統治よりも自身の支配地域の利益を重視
    →貨幣政策の空洞化 稲・絹で取引

    P70物々交換の不便さを解消するために貨幣が発明されたのではない
    貨幣的な役割に適したものが貨幣としての役割(保存、持ち運び、分割)を果たす

    価格硬直性を持つもの→賃金 他の財、サービスに比べて変化しにくい

    法定貨幣 政府が発行した1万円→将来それで税金を納める事ができる→貨幣の負債性

    院政期・平氏政権期~戦国期の400年 渡来銭や私鋳銭が貨幣としての役割を担った
    中世古銭 北宋(960~1127) 南宋(1127~1279) 明(1368~1644)
    元(1271~1368)は銭貨発行せず

    宋との貿易では地金で決済 船を安定させるためのバラストとして宋銭が持ち込まれたとの説あり
    銅そのものの地金として使った説→仏具、同製品の原料へ 無文銀銭に近い性質

    貨幣を国内で鋳造しないので貨幣量は増えない→精銭(宋、明から輸入された良質な貨幣)、鐚銭(びたぜに/私鋳造した模倣品、何も書いていない穴あきコイン)を混入してもOK
    →経済の規模拡大に対応

    戦国大名 米が貨幣として扱われる状況は兵糧調達に都合が悪い・鐚銭の使用も認める
    石見銀山から大量の銀(灰吹法)→輸出、ヨーロッパの銀の増量、銀で測った商品価格の高騰、欧州での銀の価値低下、銀を基準に納税していた封建領主の経済力低下

    江戸幕府 街道整備、治水必要→中世と異なり貨幣政策を取る事が可能

    1600年1603年 大判・小判、丁銀→慶長金銀

    金 1両(4.4匁・16.5g) 分(1両の1/4) 朱(1分の1/4)
    ※重量単位としての1両は37~38g 金のみ1両16.5g

    銀 1匁(3.75g) 1貫(3.75kg) 43匁=3.75×43=161.25gを包銀、褒美の銀1枚の銀判

    1636年寛永通宝 参勤交代の利便性向上のため 単位は文、重量は1匁(3.75g)、10枚を1疋ひき

    グレシャムの法則・悪貨が良貨を駆逐する→金銀の含有率が異なる貨幣があった時、良貨は人々が貯めて流通せず・悪貨ばかり流通する
    →金属としての貨幣として流通しているとき

    発展途上国 自分の将来のために子供を多く持つ→他の貯蓄手段がないため・急激な人口増加

    鉱山収入減、家康以来の備蓄が枯渇→1695年金・銀の改鋳を命じる 元禄金銀
    荻原彦次郎重秀おぎわら_ひでしげ
    慶長金 86%銀14%   慶長銀 80%銅20%
    元禄金 57.37%42.63% 元禄銀 64%銅36%

    1697年元禄二朱金 当時の日当は40文・年収は×300日で1万2,000文 1両は4,500文~4,800文
    1両小判は100万円札の感覚で使いづらい 二朱金は600文

    貨幣改鋳への批判 新井白石「慶長小判を溜め込むはずだ!」→実際には慶長小判は順調に回収、鋳造された

    改鋳によるインフレも酷いものではなかった・1695~96冷夏、1703元禄大地震、1707宝永大地震富士山噴火で物価高騰 
    1706 二ツ宝銀
    1708 寛永通宝大銭
    1710 永字銀、三ツ宝銀
    1711 四ツ宝銀
    1710年代~インフレが顕著 1712年将軍家宣は荻原彦次郎重秀を罷免

    新井白石による正徳・享保の改鋳1714~ 金の含有用を高める・慶長小判と同等へ→幕府の備蓄銀は減少
    貨幣量の減少→みんな貨幣を保有したい→貨幣で買える物はどんどん増える→デフレ

    米の価格下落→農民、武士(米価格で換算した俸級)の生活を悪化
    デフレ 農民は借り入れの返済が困難→土地を失い小作化・都市に流入する土地なし農民増

    吉宗・享保の改革 1720年代 疲弊した農村に対処 年貢率40%から50%へ 年毎の収穫(検見法)ではなく過去の平均値を適用する定免法 上米の制 → 幕府の財政をある程度回復

    米の増産策は米価に対しては引き下げ要因

    1736年大岡忠相 元文小判13g(金8.6g銀4.4g) 元文銀(46%銅54%) 貨幣量を増やす目的
    旧貨の享保小判17.7g(金15.4g銀2.3g) 享保銀(80%銅20%)

    1767年田沼意次 明和五匁銀(重さではなく計数貨幣とした)→失敗 南鐐二朱銀 ☆難しくて意味不明

    11代将軍家斉 1818年・文政小判 社会の安定 名目貨幣として流通、貨幣発行益が主要な財政収入
    1837年 天保一分銀(2.3匁=8.6g・ほぼ純銀) 4枚で1両(金1両=34.4g)

    1856年ハリス総領事 金銀に対する同種同量交換を認めさせる 当時の海外のレート金:銀=1:15
    天保一分銀経由の日本のレートは1:4.6
    天保一分銀4枚を天保小判に変えて海外へ→金が海外へ大量に流出
    →国内の物価が高騰☆理由はイマイチ理解できず!/貨幣を信用せずにモノで持ちたい人多い→貨幣で買えるモノが少なくなる→多くのお金を出さなければならない→物価が上がる??

    貨幣発行益=発行から納税まで無利子で国債を発行した事と同じ効果

    P234個人はなぜ貨幣を保有したがるのか?→財・サービス購入に必要だから(人々の行動の終着点を消費と考えている) 貯蓄そのものから得る満足=貨幣愛があるのではないか?→物価下落・デフレの理由では?

  • 日本史上の貨幣政策の転換機に焦点を置いて、貨幣制度について論じた一冊。
    日本史にはある程度、知識がありましたが、このような切り口で貨幣制度の歴史を学んだことがなかったので、非常に興味深かったです。
    経済学をしっかりと学んだことがないので、なかなか理解できない部分もありましたが、好きな日本史に絡めてくれたおかげで読了することができました。

  • 日本の貨幣発行の歴史から、貨幣とはどのようなものかを探求した興味深い一冊です。自分は、日本史に造詣があまり深くないので大まかな日本史としても楽しめました。日本の昔の貨幣は主として通貨発行益を得て、政府・朝廷の財政を潤すための発行が多かったということが、良く分かります。「通貨」とは、貯蓄の手段となり(価値保存機能)、資産価値を表示する単位になり(価値尺度機能)、支払いの方法として用いることができる(取引決算機能)この3つがそろえば明確な通貨と評価できるということも理解できました。今後、著者の研究が進み、本書につづく続編ができるならば、是非読んでみたいと思います。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 国家にとって「貨幣」とは何かー律令国家が目指した貨幣発行権(はじまりの貨幣/本格的名目貨幣としての和同開珎/その後の和同開珎と銭のない時代)/第2章 貨幣の基礎理論を知るーマネーは商品か国債か(物々交換神話とマネーのヴェール観/負債としてのマネーと貨幣法制説/貨幣の完成と無限の循環論法)/第3章 信頼できる債務者を求めてー貯蓄への渇望が銭を求めた(古代から中世の日本経済/銭なき時代から貨幣の機能を考える/中世銭貨はいかにして貨幣となったのか)/第4章 幕府財政と貨幣改鋳ー日本における「貨幣」の完成(三貨制度と江戸経済の260年/元禄の改鋳ー名目貨幣への道/転換点としての元文の改鋳/完成する日本史の中の貨幣)/終章 解題にかえてー歴史から考える転換期の貨幣

  • 東2法経図・6F開架:337.2A/I26n//K

  • むずか

  • 『日本史に学ぶマネーの論理』

    【目次】
    はじめに

    第1章 国家にとって「貨幣」とは何か――律令国家が目指した貨幣発行権 
    1 はじまりの貨幣 
    日本最古の貨幣/貨幣に関する用語整理/古代貨幣の謎――富本銭の発見/無文銀銭から富本銭へ/富本銭プロジェクトの限界
    2 本格的名目貨幣としての和同開珎 
    プロモーション戦略と改元/「つなぎ」としての和同開珎銀銭/和同開珎銅銭の受難
    3 その後の和同開珎と銭のない時代 
    貨幣の3機能/価値尺度機能と貨幣発行益/古代貨幣の黄昏/皇朝十二銭――〈価値保蔵機能〉の喪失/貨幣発行益の本当の目的/政府貨幣の古代史の終焉

    第2章 貨幣の基礎理論を知る――マネーは商品か国債か 
    1 物々交換神話とマネーのヴェール観 
    欲求の二重一致/交換の要としての貨幣/貨幣は中立的か非中立的か/価格硬直性と貨幣の役割
    2 負債としてのマネーと貨幣法制説 
    贈答関係とマネー/貨幣法制説と政府負債/貨幣発行益が生まれる条件
    3 貨幣の完成と無限の循環論法 
    貨幣の本質はどこにあるのか/貨幣であることのプレミアム

    第3章 信頼できる債務者を求めて――貯蓄への渇望が銭を求めた 
    1 古代から中世の日本経済 
    律令制と古代の高度成長/分権化する経済支配/衰退の中世と繁栄の中世
    2 銭なき時代から貨幣の機能を考える 
    信用経済は現金経済に先行する/債権者がいない負債/資産と負債の割引現在価値/貯蓄手段の渇望
    3 中世銭貨はいかにして貨幣となったのか 
    商品説から生まれ法制説によって成る/不足する銭とデフレーション/金融業の隆盛と室町時代の最適期/さらなる「信頼できる債務者」の登場/マネーの量は何が決めるのか/信用経済の終焉とその後の貨幣

    第4章 幕府財政と貨幣改鋳――日本における「貨幣」の完成 
    1 三貨制度と江戸経済の260年 
    本位貨幣としての金・銀/寛永通宝とグレシャムの法則/新田開発ラッシュと江戸の経済成長
    2 元禄の改鋳――名目貨幣への道 
    慢性化する財政赤字/名目貨幣の復活としての元禄改鋳/二朱金の発行と改鋳の進捗/改鋳による利益と改鋳への批判/貨幣発行益はどこから来るのか
    3 転換点としての元文の改鋳 
    正徳の改鋳がもたらしたデフレーション/重商主義の誤謬と根拠/享保の改革の意義と限界/そして元文の改鋳へ
    4 完成する日本史の中の貨幣 
    田沼期の政治と金貨の銀貨化/家斉・忠成の改鋳と名目貨幣の完成/「日本の貨幣」の終焉

    終章 解題にかえて――歴史から考える転換期の貨幣 
    税金クーポンとFTPL/信頼できる債務者としての政府/定常不況と貨幣の呪術性・神秘性/シニョリッジは誰のもの?/暗号通貨と複数通貨の可能性

    おわりに 
    参考文献  

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1975年生まれ。エコノミスト。明治大学政治経済学部准教授。東京大学経済学部卒業後、同大学院経済学研究科博士課程単位取得。内閣府規制改革推進会議委員などを兼任。主な著書に、『経済学講義』(ちくま新書)、『これからの地域再生』(編著・晶文社)、『マクロ経済学の核心』(光文社新書)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)などがある。

「2018年 『新版 ダメな議論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

飯田泰之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×