福岡市が地方最強の都市になった理由

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569837673

作品紹介・あらすじ

福岡市が地方最強都市と言われるのはなぜか。著者の徹底取材によって明らかとなる、福岡市の都市競争力と地方が生き残るためのヒント!

感想・レビュー・書評

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  • このたび九州旅行に行くことになり、フェリーの中で予習を兼ねて読んだ。

    福岡には3回訪問したことがある。それぞれ新幹線と飛行機でアクセスしたが、コンパクトに交通機関が纏まっていて驚いた。ちなみに、私は会社で新潟支社にいたことがあるが、新潟から最も近い支社は、東京ではなく九州支社だった。その理由も納得できる。

    今でこそ九州の中心都市、アジアに近い世界都市として、福岡は揺るぎ無い地位にあるが、戦前は長崎や熊本よりも人口が少なく、重要拠点ではなかったことを知って驚いた。

    行政手動ではなく、強い信念を持つ個人(民間)達が、型破りな戦術を次々と実行して、福岡市を発展させてきたことを知った。当時、他の都市に劣る制限要素をチャンスに変えてきたことは素晴らしいと思う。
    他人に嫌われてでも、目先の「出来ること」ではなく「やるべきこと」に、福岡発展の立役者達は強い気持ちで向き合い続けたのである。

    それに対して、地域活性化を建前としながら、国から補助金をもらうことが目的化しているような政治活動は意味をなさないことを痛感した。

    補助金を貰ったところで、その使い方には何かと制限がかかるのだろう。公務員主導で、スピード感と情熱を伴う意思決定と予算執行は難しいと感じた。

  • 民間主導の都市開発も含め、制約をうまく生かし逆張り戦略でいまの地位まで上り詰める福岡市の経緯を見るには読み物として面白い書籍でした。よく福岡市が取り上げられる理由を知るには良い本です。

    ただ当初のフレーミングによるものだと思いますが、最強の地方都市かどうかはよくわからないのが正直なところ。

    都市開発を民間主導で行い発展したという木下さんの自前の論に当てはまりが最も良い大都市は確かに福岡市だと思います。一方現在も競争力を有する製造業種が豊かな浜松や静岡、広島などは都市圏単位での一人あたり生産額は相当高く、京都市などは一人あたりの雇用者所得も高い水準にあります。このあたりは最強かどうかを見るには基礎データですが全く触れられていないので、福岡市ありきで議論を始めている限界かもしれません。木下さんはマーケティングがうまいのでわかって書いてらっしゃるのだとは思いますが。

    あとはオガールは補助金が入っているので「補助金に頼らない」が何を意味するのか気になりました。

  •  全体を俯瞰すると、民間主導での都市開発が概ね結果を出したケースについて、当然にそうであろうという内容であった。特にサプライズはない。福岡市の発展要素が整理されていることは参考になるものの、他の都市との比較における位置付けに関する見解が弱い。福岡市なのか福岡都市圏なのか、この議論はもっと整えたほうがよいと感じる。
     福岡市が神戸市を上回ったことは殊更に強調しているが、神戸市は関西圏の中で位置付けられるのであって、単独の存在ではなく、足下、関西圏内で劣勢であることは間違いないが、国内最高レベルの医療開発産業都市として新たな役割を持ちつつあることから、福岡市と同列の比較にはならない。例えば、こういった点の議論は上手く整理されていない。

  • 感想

    行政の人材を育てる拠点に
    国際教育都市 福岡


    以下は読書メモ

    常識破りの戦略の積み重ねによる強さ

    多くの人の発想力や挑戦に触れる

    PDCAを回すと当たり前の打算的な打ち手になる

    思い込み
    ・人口の増加で解決
    ・他都市の成功事例を実践
    ・自治体が主体的に
    ・国からの予算最適化
    ・不便だと発展は無理
    ・市民WSは間違いなし

    福岡の非常識
    ・民間主導
    ・まちの中では競争より協調
    ・工場誘致は早々に撤退
    ・空港を郊外移転しない
    ・市域拡大時代に開発抑制

    自分たちの行政サービスに最適化でする人口規模を狙う
    フェイスブックやアマゾンは都市整備に積極的

    天神のエリマネ団体
    ・戦後の立ち上げ
    ・百貨店との協調戦略
    ・博多と天神のエリア競争と協調
     →ライバル関係の好循環

    福岡の覚悟
    ・民間のキーマンが中央集権に迎合せず判断

    集積エリアにはある程度の再開発が必要
    再開発をしないエリアの設定、内需拡大するミックスオープン

  • 福岡で育って、愛すべき故郷を想う身として、
    この本を読んだ人が
    福岡のことを鼻につかないことを祈る。
    最新の状況でまたアップデートしてほしいです!

  • 民主導で発展してきた都市。官が目立ち始めている今は終わりの始まりか。

  • 以前は「転勤するなら福岡」だったが、今や「移住するなら福岡」。職住近接のコンパクトシティ代表格。その福岡市の強さの源泉を木下斉氏が分析・解説。九州といえば維新の雄である薩摩藩の鹿児島県、鎮西鎮台を有した背景から第五高等学校を構えた熊本県が廃藩置県後の主役であった。その後工業化の波に合わせた国策である官営八幡製鉄所の北九州市と比べて、福岡市は目立たぬ地味な自治体であった。流れが一変したのはアジアの貿易・交通の要(朝鮮戦争含む)として、その地理的優位性が注目され時代の要請に応じた民間主導のコンパクトシティを作り上げたことにあろう。高度経済成長期やバブル期での右倣えの没個性的なまちづくりに走ることなく、産官学一丸となって「地方都市としての役割・機能」の指針を見失わずに先人たちが愚直に邁進した結果がいまの福岡市の飛躍的な成長と類を見ない成果に繋がったといえる。

    本書では著者が歴史的な背景を紐解き、制約や弱さをクリエイティブな強みに変えていった経緯を学べる。難点としては後付け的にほか自治体比較での優れた点を網羅・列挙しすぎて、コアな部分・概括的にはどうかが読み取れないところか。読んでいて「結局どういうことだろう?」と思う部分があり、もう少ポイントが絞られていると良いかもしれない。

  • 木下斉コーチの著書。
    都市経営の視点から福岡市を分析した一冊。

  • 過去にこういう人がいたり、こういう歴史の偶然があったから、福岡市が成功したよ、という……タイトル通りの本です。
    自分の地元をなんとかしたい、参考にならないだろうか、と思いこの本をとる人も多いかと思いますが、そういう人の参考になる本ではありませんでした。

    都市計画は20年、50年で結果が見える
    他の成功例を真似しても駄目。1番目しか成功しない。
    行政ではなく民間が主導しないと成功しない。
    など、理屈はわかるのですが、これから他の地域の再生や都市計画をする際に、そこから何を学ぶのか、というとなかなか難しいところです。

  • 自分の興味関心のまちづくりに関する本として読了。
    でも、仕事の仕方とか働き方、福岡の街の今後のトレンド(2年くらい前の本だけど)っていう意味で勉強になったな。

    ・100人の合意より1人の覚悟が街を変える
    →レガシー企業の会社員として心に染み渡り、なんかズキズキする言葉。組織は合意を取りたがるし、責任の所在がよくわからなくなりがち。下のものは上を見て仕事してる。

    ・何のためにそれをやるのかという大目的を考え抜いて掲げる。そして、やるべきことは何かを導き出し、自分が行動していく。
    これが地域を変えるプロセス。

    ・条件が悪い中でもビジネス取引を考え抜く。ex 路面電車敷地とソラリア計画の容積率

    ・福岡メソッド
    ①制約条件が特異な戦略を作り出す
    ②技術革新が起こるとき、競争論理は変わる
    ③議会や市民理解を必要としない民間資本が尖りを作る

    ・マーケティング近視眼
    アメリカの鉄道会社は自分たちを鉄道会社と定義したのが衰退の原因

    ・福岡のこれからの制約
    ①九州衰退
    ②アジアの多様な成長衰退混乱
    ③大学の国際競争、若い人材の獲得競争の激化
    ④急速な成長による凡庸化、過剰集積
    Ex チェーンテナントより個人店
    需要を食いつかさない、フェラーリマーケティング一台売り残す

    ・イノベーション産業集積の他都市との競争激化
    →地域特性×クリエイティブによるライフスタイル産業の開発
    ①特定のライフスタイルに合致した体験サービスを提供して地域で稼ぐ
    ②特定のライフスタイルに必要とされる商品市場で独自のブランドを築き、稼ぐ

    ・都市の魅力を創出する人を増やす

    ・ネアカな姿勢

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著者プロフィール

木下斉
1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、00年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。08年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、09年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。15年から都市経営プロフェッショナルスクールを東北芸術工科大学、公民連携事業機構等と設立し、既に350名を超える卒業生を輩出。20年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。著書『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

「2021年 『まちづくり幻想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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