半分生きて、半分死んでいる (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569837567

作品紹介・あらすじ

コンピュータなんて吹けば飛ぶようなもの――80歳を迎えた解剖学者が何にも囚われない筆致で現代人の盲点を突く。「平成論」も収録。

感想・レビュー・書評

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  •  ①死とは親しい人の死、二人称の死に決まっている。人が死を感じ、死が人を真に動かすのはその場合だけ。②意識という機能の大きな役割の一つは、「ああすればこうなる」である。情報化社会は、要すればすべてが意識化される社会。都市文化とは意識の産物。③嫌いなのは好きと同じで、向きは違うが関心は強い。

  • 養老さんの本を読むと、アタマがほぐれてすっきりする。
    いつも刺激をくれた橋本治さんがいない現実がつらい。
    これは2018年の本だけど、コロナ禍の中、
    すでに世の中はあちこちで煮詰まっていたことが分かる。
    白か黒かの2択、あるいはゼロか1か、
    個別の現実の事例を、統計を取り平均化して、データとして扱えるくらいにまでそぎ落とす。
    一般化することで楽をして、分かったような気になっても、
    そこから漏れた一般化できないものはなくなるわけではなく、理解しがたいものとして残り、
    ときに表に出て日常を脅かす。
    人の心の暗部であったり、自然災害であったり、今のコロナもそうだ。
    コントロールできないものに出会って、分かりやすさだけで組み立てた頭には対応できない。
    戦争が終わり教科書に墨を塗った経験、
    虫を観察し多様性に向き合い変化を見つける経験、
    信じられないものと信じられるものの基準が、養老さんの本を読んでいて信頼できるところ。

  • 2018.5.30 amazon

  • 今回二度目の読了、改めて養老先生の自然体の生き方を素敵だと感じました!

  • いつもよりかなり洒脱かつ陰湿な感じの文体が非常に生々しくて好き。禁煙主義者の章とか飲み屋でクダ巻きながら話した内容をそのまま本にしたみたいでめちゃくちゃ笑える。シニカル養老先生が読める一冊。

  •  初めて養老さんの本を読んだ。この本を読むまで恥ずかしながら養老さんのことは知らなかった。本書は2回読んだ。父に勧められて本書を読んでみて、難しいと思いながらも、養老さんらしい表現の仕方に感心し、勉強になる部分も多かった。自分とは全く違う視点で日本の問題や世間を見られているなあという印象だった。
     今は「世間があっという間に飽和する時代」という表現や「煮詰まる」という表現。今の社会が抱えている問題に養老さん独自の視点から喝を入れられており、その解決のヒントのようなものも感じられた。
     「人生の意義は自分の中にはない」自分が死んでも、困る自分がいなくなるから自分は困らないという表現。人生とは世のため人のためであることを再認識した。
     コンピュータは人の意識行動に取って代わるものであり、人自身に取って代わるものではない。
     「現代は「意味のあるもの」にあふれている」だから人は意味のない自然を求める。というのは、共感できなるほどと思った。
     現代について深く考えることができた本だった。2度読んだがまだ理解できてない部分があるような気がする。また時間のある時にゆっくり読んでみたいと思った。

  • 人は昔から自然に暮らし、自然の一部だった。しかし、今や道具に囲まれて人工的な環境に暮らしている。人はただのデータと化している。

    確かに、若者の私は虫が嫌いだし、自然の風より冷房の方が気持ちいい。

    人工的、効率的に生きることを目指している癖に、宗教やファンタジーを捨てられないとは、なんて人間らしいのだろうと思った。私は、人間の信じることが大好きなところが大好きだが、愚かと言うこともできるなぁ、と。
    養老先生曰く、その精神は地下鉄サリン事件の温床だと言うので。


    解剖学は人体を説明する学問だけれど、説明したって人体に変化はない。

     ふと思ったのは、
    心理学は心を説明する学問だけれど、説明したって心に変化はない。
     と当てはめられそうだ。

    本書の別の部分での、人は分かりやすさを求めているという論につながってる!と思った。

  • 養老節が心地よい。もう流れる様に書いているんだろうな。言葉で世の中は変えれないから、安心して書いているそうだ。なるほど。

    一般論は具体よりも優越する。その理由は人間にとって楽だから。人は易きにつくもの。現代社会の楽は一般化にある。楽をするとどこかで元がとられる。シッペ返しがくることになる。それは言わないことになっている。楽が出来なくなるからである。

    ほぼ80歳にいたるとはいえ、またそこまで大人になれていない。だからお若いですねぇ、と言われるのかもしれない。要するに社会的な発育不良。大人ってなんなんでしょうね。20歳になったら成人なんですが、自分自身ではいつになっても大人になりきれていない感がある。

    日本の国土防衛はそもそも磐石。何故なら最終兵器を沿岸に50基余り並べているから。事故の後1週間以内に5000人の中国人が帰国した。アメリカ艦隊も近海まで来たが引き返した。凄く皮肉な結果だが実際そうなんだな。他国にはない現象らしい。

    戦時はまさに両者が命がけで戦っているので横から何を言われても無駄に決まっている。むしろ真の中立は両者から敵とみなされるのが普通。中立である為にこそ、あらゆる意味での力が必要なのだ。

    「どうすればいいのか」という質問自体が「ああすればこうなる」である。現代人はその中をひたすら右往左往している様に見える。確かに誰かに指示してもらいたい病。
    生きていればあとは死ぬだけ。意識が主人か身体が主人か?

    嫌いなのは好きと同じで、向きは違うが関心は強い。その関心がなくなってきたら気にならなくなる。

    子育ての問題に現代人は本気ではない。待機児童の存在が問題だと切って捨てている。切って捨てられているものは、子供自身の子供の人生。子供は大人になる事を前提として扱われている。世間から子供自体としての価値が消えた。それを補っているのはペット。少子化になるのも無理はない。

    コンピュータにできない仕事。人は何のために生きるのか?人生とは何か。そんな青臭いことを考える時間が必要。答えは出ないけど、考える価値はある事だと思う。

  • 色々多方面のエッセー…に近い?

    冷静と淡々とテレビでは話している印象がある養老先生ですが、若い時はなかなか湯沸かし器だったようですね。
    普段腹を立てている自分がおかしいのか?と悩む場面もありましたがちょっと安心しました。

    この書のおかげで、竹村光太郎さんをしれたのが良かったです。竹村光太郎さんの書籍を読み、とても面白かったです。

  • 失礼ながら「生きていたんですか、もう死んだと思ってました」と言われたエピソードに笑いながらもドキリとした。養老さんまだご存命だったのか。と。隠居生活をおくる偏屈爺さんのつぶやきといった体だが、隠居生活ゆえに忌憚なく述べられるあれやこれや。驚くべきことはいつのお年になっても本を読み、山を歩き、趣味の昆虫採集に勤しむアクティブさ。デジタルに対するアレルギーは見受けられないがSNS社会には眉をひそめるが、否定はしない。「じゃあ現物の私とは何か。ノイズ、つまり雑音の集合体である」

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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