日本人として知っておきたい「世界激変」の行方 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569832241

作品紹介・あらすじ

トランプショック、中露台頭、波乱のEU……。世界はどこに向うのか? 日本の真の危機とは? 世界の「激動の核心」を読み解く渾身の論考。

感想・レビュー・書評

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  • 国際社会における、大きな流れの見方。今の日本の足りないところが、若干難しく書かれています。

  • 2020/08/04:読了

    こういう立場の人
    あの中西輝政が「さらば安倍」宣言:FACTA ONLINE
     https://facta.co.jp/article/201608024.html

    P253
    あとがきにかえて
     日本人はとりわけ「アメリカ一極の世界」への執着が強いから「多極化の世界」と聞くと反射的に、不安定で紛争多発の危ない世界、とのイメージにとらわれるが、じつはもっと安定的で公平な、「いわば「明るい多極化世界」というものがあるのである。
    (中略)
     本書では、それまでのあいだ、つまりその前に待ち受ける「危ない過渡期」への対処を主として論じたが、次作においてはぜひその先にある「もう少し素晴らしい世界」について論じたいと思っている。
     平成28年12月

  • 冷戦後の世界におけるアメリカ、ロシア、中国、ドイツ等の動きを、著者独特の「歴史の土地勘」とやらで読み解く。専門家に「勘」と言われてしまうと、「そうですか」と言うしかないのだが、とにかく日本にとって中国はやっかいな存在である、というのが前提の議論。それはそうなのかもしれないが、その中国ともしたたかに手を組むような方策も検討した跡がないと、なんだか、ただの放談になってしまうのではないか。そんな印象をもった。

  • 2018年、44冊目です。

  •  近年の国際情勢を学ぶのにいい本だった。

    印象的な内容
    ①グローバリズムはアングロサクソン覇権回復のための神話だ
    ②アメリカは対外介入主義・不介入主義どちらにも振れる
    ③EUはアメリカが冷戦戦略から作った入れ物だ
    ④アメリカを動かす力を持つイギリス
    ⑤ファイブ・アイズ同盟-米・英・加・豪・新
    ⑥対米でかつてない中露接近
    ⑦アメリカの最優先事項はドル基軸通貨体制維持
    ⑧ドイツは戦前日本の疫病神、中・露との接近は悪夢の再来
     日独伊同盟から対米英戦争へ
     独ソ不可侵条約での翻弄
     ドイツの軍事支援を得た中国との泥沼戦争

  • 現在の世界情勢について、歴史も踏まえながら論じている点がダイナミックでおもしろい。

    世界は、3つの勢力の三つ巴になっている。
    ・オールド・グローバリズム:グローバル化を主導してきた大手金融機関や投資家、メディア、既成政党。テロや保護主義、極右排他勢力が生まれることを懸念し始めていた。
    ・アンチ・グローバリズム:グローバリズムによって、職を失ったり薄給を強いられつつある人びと
    ・ネオ・グローバリズム:金融規制などに反対し、一層のグローバル化の推進を主張するヘッジファンド、IT業界、ネオコン。無国籍で、徹底的に自己利益のみを追求する。
    ネオ・グローバリストが、処々の規制を食い止めるために、敵の敵であるアンチ・グローバリストを支援したのが、トランプの勝利やブレグジットが実現した理由。

    第一次世界大戦後、アメリカのウィルソン大統領はヴェルサイユ会議で国際連盟規約に調印し、議会の批准を求めた。ウォール街の金融関係者や外交評論家、ジャーナリスト、学者たちは、グローバル化しつつあったアメリカの経済国益を確保するために、自らの立場を「国際主義」と呼び、反対する陣営を「孤立主義」と呼んで批判した。しかし、ウィルソン大統領が第一次大戦に参戦したことによって多くのアメリカ人が戦死したこと、フランスが「勢力均衡」の名のもとに敷いたドイツ包囲網にアメリカも加わるよう求めていることに反発した条約反対派に敗れた。国内問題に集中した1920年代の10年間は、GNPが3倍近くに増大した。アメリカ建国の父であるジョージ・ワシントンも、18世紀のヨーロッパの王国同士が延々と領土拡大の戦争を続けていたことを背景に、1796年に対外不介入主義の演説を行っている。戦後のアメリカの対外関与政策は、建国以来の根本理念とは正反対のものになっている。世論の強い国では、民意の振れ幅が大きすぎるゆえに、政治・外交の振る舞いが反転してしまうため、どちら向きにもなり得る。

    戦後、アメリカは西ドイツをNATOに取り込もうとしたが、フランスが拒んだため、当時始まっていたヨーロッパ統合の流れを利用して実績をつくろうと考え、欧州石炭鉄鋼共同体を発足させた。EUも、ASEANも、日米安保も、NATOも、アメリカが作ったパックス・アメリカーナの副産物のようなもの。NATOは米英同盟を核として、仏独などをアメリカについないでいるもの。CIAもNSAも、中国、チベット、南シナ海、ロシアや北朝鮮などの監視機構は、暗号解読や電波傍受を含めてイギリスの協力なく成り立たない。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを含むアングロサクソンによるファイブ・アイズ同盟には、互いに監視基地を持つことができ、極秘の情報を共有する不退転のシステムができあがっている。ドイツ統一は、NATOを東方に拡大させないという約束の下にゴルバチョフが認めたにもかかわらず、ソ連崩壊によって破られた。ロシアの反西側の世論は、このアメリカの嘘に不信感を持ったことが大きな原因。

    ドイツとロシアは、自分たちの合意によってヨーロッパ全体を運営したいという意向がある。ドイツはエネルギーの4割をロシアからの天然ガスに依存し、工業製品も輸出している。プーチンはかつて東ドイツで活動していたことがあり、メルケル首相はロシア語に堪能で、ロシアの女帝エカテリーナ二世の肖像画を執務室に掲げている。歴史的にも、プロイセンが主導したドイツ統一は、ロシアが中立を保ち、普仏戦争でフランスを孤立させたためだった。さらに、ドイツが中国に接近する影響も大きい。1920年代より、中国の国民党政権はドイツから軍事顧問団を招いていた。1933年にナチスが政権をとると、中国に対してさらなる人的支援、武器支援を行い、中国軍の近代化を進めた。日本が日独伊三国同盟を結んだのも、ドイツを中国から引き離すことにあったが、その結果として対米英戦争を招いてしまった。

    著者は、アメリカ一極から多極化への移行は、安定的で公平な世界があるという。次作ではそれを論じたいと書いている。

  • 今の複雑な世界情勢について、俯瞰して理解できる。

  • 久しぶりに当たりだった中西作品。トランプだけでなく国際関係の分析が鋭い。たぶんゴーストライターだろうけど、文体がいつもと違う気がした。

  • 中国、ロシア、ドイツが手を取り合うというシナリオは考えただけで気分が悪くなる。が、それを考えるのが国際政治なのだろう。今まで読んだことのない話だったので圧倒された。

  • 右派の論客として名高い中西先生の最新作。
    すべては25年前の湾岸戦争から予見されていた。。。。

    世界秩序暗転の5つのシナリオが現実化しつつある現在、日本はどうすべきか、一歩でも間違うと多極化の中での一極の位置ですら得られない。日本がアメリカの属国から自立しなければならないと著者は言う。この20年を乗り切れば逆に明るい未来が拓けるとも。
    自立のためには、自衛力の強化はもとより、激変する世界を泳ぎ切るためのインテリジェンスの強化なども必須。

    第一章 トランプのアメリカで世界に何が起きるか
    第二章 日ロ北方領土交渉と売国の危機
    第三章 介入か孤立化 パックスアメリカーナの行方
    第四章 グルーバリズムの限界に直面し流動化する世界
    第五章 地獄のオセロゲーム化するアジア
    第六章 これから十年、日本どうすべきか

    言葉狩りに終始するアホ議員やまともな答弁もできないポンコツ大臣たちに是非読ませたい。
    「転換期の日本へ」、「米中戦争」と合わせて読みたい。

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著者プロフィール

1947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学教授を歴任。石橋湛山賞(1990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(1997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(1999年、2005年)受賞。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。主な著書に『帝国としての中国――覇権の論理と現実』(東洋経済新報社)、『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『国民の文明史』(扶桑社)。


<第2巻執筆者>
小山俊樹(帝京大学教授)
森田吉彦(大阪観光大学教授)
川島真(東京大学教授)
石 平(評論家)
平野聡(東京大学教授)
木村幹(神戸大学教授)
坂元一哉(大阪大学名誉教授)
佐々木正明(大和大学教授)

「2023年 『シリーズ日本人のための文明学2 外交と歴史から見る中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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