IGPI流 ローカル企業復活のリアル・ノウハウ (PHPビジネス新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569829654

作品紹介・あらすじ

地方は衰退するものという認識は間違いだった! 日本経済復活の鍵を握るローカル企業。経済を活性化するための実践論を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 「ローカル企業復活のノウハウ」 富山和彦著 

    【本書の概要】
    本書は、元産業再生機構のメンバーらが設立した「経営共創基盤」の事業と実践内容について紹介しています。経営共創基盤は、大企業ではなく、各都道府県で事業を営む中小企業を支援しています。中小企業の競争力と利益力を高めるための具体的な考え方と実践論が記述されています。

    【本書のターゲット】
    本書は、中小企業で働いている方や、クライアントに中小企業がいらっしゃる方にお勧めです。中小企業の経営課題や改善策に関心がある方にも参考になると思います。

    【本書のポイント】
    本書のポイントは、経営共創基盤が経営分析する際の4つの視点と、情報を集計、分析するときに大切な2つの視点です。

    【経営分析の4つの視点】
    経営分析の4つの視点とは、事業、組織、ガバナンス、財務です。財務は結果/アウトプットであり、そのアウトプットを高めるインプット要素がそのほかの3つの視点です。具体的には、事業、組織、ガバナンスとなります。
    中小企業では、納税のために決算はしていますが、決算の裏側にある数値の実態(事業、顧客、そして仕入れ先、外注先)把握まで行っているケースは少ないです。そのため、経営共創基盤は、経営支援を行う折に、事前準備として情報を整理し、分析します。
    その際に重要なのは、以下の2つの問いに答えることです。
    •儲かる事業は何か?または儲かっていない事業は何か?
    •儲かっている顧客はどこか?または儲かっていない顧客はどこか?
    これらの問いに答えることで、事業の強みや弱み、顧客のニーズや満足度、競合との差別化などを明確にすることができます。書籍にありますとおり、これは当たり前のことですが、この当たり前のことを行うということがどれほど重要なのか?も記載しています。

    【情報の分ける化と見える化】
    情報を集計、分析するときに大切な2つの視点とは、「分ける化」と「見える化」です。

    「分ける化」とは、一定の基準をもとに「仕分け」を行うということです。前章にあるとおり、事業であれば、事業別に利益率を算出し、儲かる事業と儲かっていない事業を仕分け、区別するということです。

    「見える化」とは、仕分けた結果情報を、経営側で判断しやすい状態に加工することです。書籍では、ウォーターフォールグラフも引用しています。
    ウォーターフォールグラフとは、最初の値から最後の値までの数値の増減と内訳をビジュアル的に表現するグラフです。ウォーターフォールグラフは、数字の根拠や構成を説明するのに適しているため、プレゼンや報告などでよく使われます。例えば、売上や利益の増減要因分析、製品別の売上構成、キャッシュフロー分析などに活用できます。

    【本書を通じた学び】
    本書を読んで、私が学んだことは以下の3つです。
    1;分ける、見える化は基本であること。
    情報を分けることで、問題の本質や改善の方向性が見えてくる。情報を見える化することで、経営判断の根拠や効果が伝わる。

    2;実行、計測、修正を連続させること。
    実行しっぱなしにしないこと。経営改善は一回きりではなく、継続的なサイクルである。実行したことの効果を計測し、必要に応じて修正することで、より良い結果を得ることができる。

    3;委員会活動をレビューすること。
    企業体に委員会(戦略、リスク、ガバナンス)がある場合は、情報源として活用するが有効であること。なぜならば、全社的な経営情報にアクセスできるため、経営判断の一助になるから。委員会は、経営の透明性やチェック機能を高めるだけでなく、経営の効率化やスピード化にも貢献する。

    【まとめ】
    本書は、中小企業の経営改善に役立つノウハウを紹介しています。経営分析の4つの視点と、情報の分ける化と見える化の2つの視点を理解し、実践することで、中小企業の競争力と利益力を高めることができます。本書は、中小企業の経営に関心がある方にお勧めです。

  • 流石、冨山和彦氏と思って大いに学びながら、後半失速。当たり前の内容の羅列が目立ち始めた。それでも、有益な内容で反復学習にも役立つ。

    人口ボーナス論に対し、著者は旗幟鮮明にし、生産性こそ重要だと強調する。次のような論理だ。ー 需要に対して供給力、特に労働力が不足している状況は本来は、相対的に景気が良い状態。そもそも過去100年で世界全体の経済規模は約40倍になったと言われているがその間世界の人口は4倍程度にしかなっておらず、残りの10倍分はイノベーションによって生産性が高まったことによるもの。

    歴史的な事実として、人口要因よりも生産性要因の方が経済成長に効果的だったと言う事は理解しておく必要がある。

    その上で融資、買収の重要性を次のように述べる。
    ー 成長市場において他社よりもその成長の価値を享受しようとしたら他人のお金を使ってでも成長市場を取り込んでいくことが合理的である場合が多い。特にグローバル産業はスケールメリットが効くことが多く、他社よりも力強い成長路線を描くためには売り上げの機会を他社よりも先に獲得することだけでなく競争優位性を同時に強める必要がある。そのために他社を買収する。

    だが、以下の本質論も外さない。
    ー 大抵の場合、成長し続けなければ負けてしまうと言う環境に置かれている事はまずない。むしろ過度な成長志向は自らの破滅を招くことすらある。成長よりも安全性や持続性が重要。そうなると財務リスクを取ることよりも、手元資金バッファがある方が良いと言う場合もあるし、外部からハイリスク・ハイリターンを要求するエクイティ性のある資金を調達する必然性が高い局面はそんなに多くない。

    KPIだROE、ROICだと今更だが、企業が多用し始めているのは、日本企業による株主軽視の見直しであり、それにより日経平均株価への好影響もあるのだが、リスクを取ってまで更なる成長が本当に必要なのか、それが何かしらの外圧に因るものではないか冷静に考えたい所。その上で、生産性を上げる必要があるなら、社会全体で過剰な資本を取り込み、同時にプレーヤーを減らす方が得策である。

  • 経営の基礎を学ぶにはとても良い。

  • 中小ローカル企業CXのバイブル。そういう機会に直面したときにマニュアルとして読み直してみる。

  • ローカル企業復活において大切なことは、
    意外と単純なところにある。
    現状把握
    選択と集中
    継続力

    やるべきことを明確にして、
    あとは覚悟をもって課題に向かって立ち向かうだけ。

  • 過去100年で世界の経済規模は400倍。人口は4倍だから、100倍分はイノベーションによって成長している。
    世界は完全なる内部循環経済しかないのに、400倍になっている。だから、地方の会社が「地域外からお金を稼ぐ必要がある」というのは唯一の答えではない。地域の中で回すこともできる。

    世界で戦うグローバルカンパニーと、地域で戦うローカルカンパニーは、全く違う世界・ルールの中で勝負している。ローカルで戦うなら、区切られた市場で限られた競合と戦っているので、世界チャンピオンではなく国体代表とか市民大会チャンピオンを目指せば良い。

    会社を良くするには、以下2つが必要
     ・課題の全体像
     ・解決をやり遂げたときに成果がでる確信
      (改善積み上げウォーターフォール)

    指標としては、
     ・労働生産性を追いかける
     ・

    事業特性としては
     ・需要側
      ー広さ(どのような広さで事業をするか?商店街なら狭いし、本屋さんなら少し広くて、コンビニなら密度を上げたほうがいい)
      ー顧客インパクト(顧客が出す付加価値にとってどれくらい重要か?)
     ・供給側
      ー競争要因の数。多いならどの組み合わせを強くするか。少ないなら、そこをどこまで極められるか?
      ー付加価値。薄いなら、商品のポートフォリオを見て、もぐらたたきをしていく。厚いなら、付加価値を構成する内容の効率向上、売上獲得の費用対効果を高めることが必要。

  • コスト面を中心にガリガリ見直し、中小企業を復活させるやり方を紹介。当たり前のことを愚直に繰り返す難しさを個人的には感じた。

  • 基本的にコストサイドの改善の話。ローカル企業なら大抵それで十分、飛び道具的なトップライン施策は不要、という言い切りが明快。

    コストサイドの改善だと、発想力よりもむしろ決めたことをやり切る根気と真摯さが重要というのも、コンサル業界に身を置く実感としてよく分かる。

    上記の前提なので、地方に新しい風を吹かせるという方向性の話は無いのが少々残念。

  • ローカル企業の復活について、企業再生業界で著名なら富山氏が綴った書籍。人口減少や都心への人の流れによる、地域経済の縮小に伴い、ローカル企業に逆風が吹いているように思われる。しかしながら、「当たり前のことを当たり前にやる」さえ実施していれば、ローカルきぎは地方でトップに君臨することは可能である。当たり前のこととは、会社の「見える化(顧客別・地域別・チャネル別・製品別という切り口での売上貢献や利益率分析」ができていことである。加えて、労働生産性(事業・財務・組織・経営・ガバナンス)の観点から試算することも大切。
    ・事業
    →事業の戦略から個別の施策、あるいはオペレーションの改善の積み重ねなど。また、事業の稼ぐ力に大きく関わる売上とコストと利益の関係についても事業面。「選択捨象マトリックス」「改善積み上げ滝グラフ」を使用。「選択捨象マトリックス」とはコア/ノンコア/Good/Badに分けて事業性を評価。「改善積み上げグラフ」とは収益性や投資採算性を上げるために、ウォーターフォールチャートを使用。借入金に対するEBITDAの5倍が理想。
    ・財務
    →BSの安全性や健全性やCFの創出力や資金の効率性。ROEを改善する必要があり、デュポン方式に分けた検討する。ローカル企業の場合、成長し続けなくても負けることはないので、財務レバレッジはあまり用いない。しかし、資産回転率は多くの企業では改善の余地が残されている。
    ・組織
    →従業員数や拠点の数など量的な側面と、組織の体質や文化、経営者の個性や経営陣と従業員との関係性など質的な側面。「お金の良好な連鎖」をつくる。多くの企業が生産性を向上させ、稼ぐ力を何段も引き上げ、労働分配率(賃金)として家計所得の上層に貢献する、それが地域経済の中で好循環をつくる。
    ・経営・ガバナンス
    会社全体のアクセルとブレーキの意思決定とチェックの仕組み全般。意思決定の訓練をし続け、実際に意思決定をするための判断材料に抜かりがなく、かつ、適時性と的確性を意識して決断をするための周到な準備をしておく

  • 経営共創基盤/冨山氏のシリーズを漁ってみようと購入。


    感想。
    業種別の事例、見える化大事、滝グラフ、等は習得したい。


    備忘録。
    ・企業経営上、需要に対して供給力店労働力が不足している状況は、相対的に「景気が良い」状態にあり、経営的な打ち手の自由度が大きい。らしい。

    ・過去100年で世界の経済規模は40倍になったが、人口は4倍止まり。残り10倍分はイノベーションだ。人口要因よりも生産性要因だ。→100年で見ればそうだろうが、ここ20年とかで見たらまた違う気もするが。

    ・100mを10秒で走る人を8秒台にするのは難しいが、30秒かかる人を20秒に縮めるのは比較的簡単。ローカル企業の再生をそう捉えている。

    ・そもそも、エクセルを使って情報整理&見える化できる人材が、居なかったり。再生の第一歩は、実態を見える化するところから(勘と経験を脱却)。

    ・特に、ユニット別・セグメント別の利益を見える化、どこが儲かっていて、どこが赤字を出しているのか、数字で抑えたい。本部経費の配賦前の利益が良い。

    ・利益改善に向けた打ち手は、改善効果を見積もり、滝グラフにして見える化し、優先順位検討に繋げる。

    ・不正行為やモラルの問題がある場合、未然防止策があるかどうかを皆考える。ただ、状況に対して不作為であってしまう文化も多く、そちらも改善が必要。

    ・事業特性把握マトリックスは、、大事らしいが、よくわからなかった。

    ・業種別の業績改善事例は、コンパクトでわかりやすい。

    ・当該地域のとある業界で、域内の市場規模に対して、生産能力が過剰にあるのに、企業統合が進まないと、皆が不幸になる。という事例はわかりやすかった。

    ・その場を取り繕う、ええカッコしいタイプの経営者は、再生が必要な企業の経営には不向き。

    ・「引き続き検討しましょう」が口癖な会社はあかん。

    ・最初から裸の王様の経営者はいない。自分を裸の王様と認識できている経営者もいない。知らず知らずのうちに裸の王様になってしまう。きっちり進言する部下や幹部は大切。

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著者プロフィール

冨山 和彦(トヤマ カズヒコ)
株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長
1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長、パナソニック社外取締役、経済同友会政策審議委員会委員長。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、国土交通省インフラメンテナンス国民会議議長、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員などを務める。主な著書に『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)、『コロナショック・サバイバル』『コーポレート・トランスフォーメーション』(いずれも文藝春秋)などがある。

「2022年 『両利きの経営(増補改訂版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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