なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか 中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569824857

作品紹介・あらすじ

傍若無人に振る舞う中国はいかに「近代」とは違う原理で動いているのか。「中華思想」の本質を知れば激動する極東の未来が読み解ける。

感想・レビュー・書評

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  • レビュー省略

  • 中華思想とは何か、それがどんな風に今の中国の動きに影響しているかってのを、論じている。
    判りやすいな。勿論それだけではないのだろうけど、力がない間は徳を持って周辺を従わせ、力を持った途端に平気で蹂躙するという歴史は、考えさせられる。
    実際のところ、納得しやすい。
    だが、筆者の論で、アメリカが正義という理念で動いているという貴重は痛いなあ。
    確かに単純でおバカだとは思うし、それもあるんだと思うけど、利を俎上に乗せな蹴れば変な議論になると思う。

  • 中国の覇権主義の下にあるものは中華思想
    米国は人権の保護が行動の基盤
    対中国包囲網

  • 冊封体制が証明するような宗主国と周辺属国という構図を中華秩序という言葉で説明し、その大きな流れに加え、近現代では、鄧小平政権時からの軍国化路線、海洋制覇戦略を踏襲した動きが、中国現政権の行動原理だという。ある種のイデオロギーの整理、今の中国人のメディアを含めた空気を表すに、非常に簡潔な切り口だろう。

    何故、各国が戦争に及ぶかという点において、国益以外に上記のようなイデオロギーが判断基準となる事もあり得るだろう。しかし、今の領土問題においては、その意地の部分と、内政的な事情や資源獲得、シーレーン確保等、複合的な要因にあり、それぞれの戦略上の優先度をどう考えているかを見抜く事が重要である。民族の偉大なる復興の謳い文句は、別にストレートにイデオロギーの目的を示したわけではなく、ある目的のための煽動の一部と捉える事もできよう。中国の欲望は、今、一番何を欲しているのか。

    この辺の考察が甘く、然るにアメリカが日本との戦争に及んだ理由についても、アメリカ側の秩序によるもの、自らの利害得失とは無関係な神のもとでは、みな平等という正義感からという、奇妙な言論になってはいないか。

    これら論説が聞きにくいという点を考慮しても、星三つ程度だろうか。

  • 日本が日清戦争の戦勝をもって中華秩序を完全に破壊した。今、中国が行おうとしていることは、中華思想の原点に戻り、アジアにおける中華秩序の再建だ。
    周辺民族をねじ伏せて、中華秩序を構築することで習近平氏は「天命」を受けた本物の「天子」とのなることができる。

    清王朝の時代からつねに中華秩序に対する反逆児の立場にいたベトナム民族が、現在南シナ海の領有問題をめぐって中国と激しく対立していることは、歴史的必然である。さらに、朝貢によってひたすら中華王朝に恭順を尽くしていた朝鮮王朝の末裔である韓国が、アジアにおける中国最大の「友好国」となっているのも当然であると言える。

    習近平氏は「民族の偉大なる復興」という壮大なるスローガンを掲げている。習近平氏は任期中である2020年までに「第二列島線の内側の制空権と制海権を支配する」と宣言している。
    イスラム国も2020年までにカリフ制こっかの設立を目指している。第一次世界大戦前のイスラム世界に戻そうとしているのではないだろうか。二つの対戦を経て、富や情報がフラット化するに伴って、西欧が支配してきた世界を元に戻そうとする動きが各地で起きているとみることもできる。

    力と富を蓄えた中国は大国であり、中国が目指す方向に世界が向かっていく可能性は大いにある。

  • 150425読了

  • 移動時間で一気読み。
    著者が中国民主化運動に傾倒し、中国に批判的な立場だということをさっぴいても非常に分かりやすく勉強になった。秦の時代から続く中国の「中華思想」「中華秩序」が今の習近平政権でも根底にあり、近い将来衝突という形で現れてくるという主論は、ホンマかいなと思う一方で、日本でも江戸時代の旧藩文化が未だにさまざまな形で露呈していることを考えるとあながち暴論でもない。それに対して日本が、独自の秩序をもって世界の警察となっているアメリカと協調して中国を抑えこむべきというのも分かる。
    ただ、中国の根底に中華秩序構想があるならば、物理的に抑えこんでもいつかは発露してくることになるだろうから、根本的な解決策ではないんじゃないか。根本的には、中国において思想を変えるような革命、そうでなくても徐々に国家意識を変えていく必要があるということか。そのために、一方で抑えこみつつ、文化交流は続けていくことが必要なんだろう。

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著者プロフィール

評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。2014年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。近著に『漫画でわかった! 習近平と中国』(かや書房)、『世界史に記録される2020年の真実 内患外憂、四面楚歌の習近平独裁』(ビジネス社)、『中国五千年の虚言史』(徳間書店)、『日本共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)などがある。

「2021年 『中国 vs. 世界 最終戦争論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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