赤と青のガウン

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569823508

作品紹介・あらすじ

ドアを閉めた瞬間に涙がこぼれた。思えば、あれが留学生活最初で最後の「帰りたい」と思った瞬間だった。

 本書は2004年から5年間、英国のオックスフォード大学に留学し、女性皇族として初めて海外で博士号を取得して帰国された彬子女王殿下の留学記。女王殿下は2012年に薨去された「ヒゲの殿下」寛仁親王の第一女子、大正天皇曾孫。

 初めて側衛(そくえい)なしで街を歩いたときの感想、大学のオリエンテーリングで飛び交う英語がまったく聴き取れず部屋に逃げ帰った話、指導教授になってくれたコレッジ学長先生の猛烈なしごきに耐える毎日、そして親しくなった学友たちとの心温まる交流や、調査旅行で列車を乗り間違えた話などなど、「涙と笑い」の学究生活を正直につづられた珠玉の25編。

 最後は、これが私の留学生活を温かく見守ってくださったすべての方たちへの、私の心からの「最終報告書」である、と締めくくられる。

感想・レビュー・書評

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  • 外交官パスポートのエピソードを知り、通読させて頂きました。素晴らしかったです。

  • 学習院大学在学中の短期留学と、博士号を授与されるまでのオックスフォード大学生活をつづった、エッセイ。
    「Voice」連載の書籍化。

    純粋に留学記としてのおもしろさがあり、そこに皇族としてのプラスアルファが加わって、とても引き込まれる。
    一気読み。

    皇室独特の風習や、エリザベス女王にお呼ばれする件など、皇族ならではのエピソードは驚くことが多く、興味深かった。

    ストレス性胃炎をおこさせるほどの厳しい指導を、日本の大学が皇族にできるか? と考えると、特別扱いのない海外留学は稀有な経験なのだろう。

    ひとりの人間として、生活し、交友し、学んでいく姿が素晴らしかった。

    日本でのエピソードも、登場人物は皆皇族だけれど、家族として、親戚としての姿は変わらないないのだな、と感じる。

    最後の特別寄稿は、泣けた。

    過剰な敬語もお嬢さまことばもなく、むしろシンプルな文体ながら、全編ににじみ出る気品があり、皇室の凄さを感じた。

  • 女性皇族として初めて海外で博士号を取得した彬子女王。
    皇族としての生活や側衛さんの話、留学先の交流や生活の話も興味深かったが、「十九世紀末から二十世紀にかけて、西洋人が日本美術をどのようにみていたかを、大英博物館所蔵の日本美術コレクションを中心に明らかにする」という研究が非常に面白かった。
    伊藤若冲ブームの火付け役がアメリカのコレクターということも知らなったし、その鑑賞方法も面白い。
    「海外の絵はずっと掛けておくが、日本の絵や書は季節によって変える」など、言われてみて改めて気づくことも多かった。
    研究することの素晴らしさを教えていただいた。

  • 彬子女王がオックスフォードで博士号を取るまでの留学記。なぜ外交旅券である茶色のパスポートを持っているのか?と税関職員に聞かれて「プリンセスだから?」と答えるなど、凄すぎて笑えてしまう独特なエピソードが多々あります。
    博士号を取るなんて筆舌に尽くし難い大変さだと思うのですが、その大変ささえ面白く書いてあり、読みやすく溌剌とした文章でした。

    この本(連載)を執筆する理由について、
    父である寬仁親王が「長期間海外に出て公務をしない以上、それを支えてくださった国民の皆さまに対して、皇族としてきちんとその成果を報告する義務があると考えておられたからである。」
    とあり、ハッとしました。

  • 皇室について…もっぱら天皇家ではない宮家については完全ノーマークだった人生なので、著者の彬子女王のお名前も御尊顔もこちらを読むまで恥ずかしながら存じていなかった。
    そしてオックスフォード大学。
    イギリスにあるってこと、なんかめちゃくちゃ賢い大学だということ、ぐらいしか知らないし特に感想もない。

    そんな、今までなんの興味も関心もなかった世界に俄然興味がわいたのは、TwitterのTLに流れてきた知らない誰かが引用していた一文にだった。
    留学中、お一人でドイツからロンドン郊外の空港に戻った際、入国審査場で、外交旅券を持っている彬子女王に、
    何故こんな券持ってるの?と質問されたのに対して「日本のプリンセスだから?」と答えたという話。
    そして、本の装丁とオシャレでセンスあるタイトル。
    きっとハイソでアカデミックでオシャレな留学記なんだろうなー、
    そういう庶民生活にはない感じ、
    浮世離れした雲の上のお話し…だけど実話、なんか…いい…。
    とそのツイートを目にして唐突に思ったので、すぐ図書館予約した。

    ハイソでアカデミックでオシャレ。
    ある意味ではそういう部分も満たされている。エリザベス女王からお茶に誘われる話や、アメリカの有名な美術コレクターであるジョー・プライス氏とのエピソードなど、知ってても知らなくてもなんだか登場人物がやたら凄い。
    読んでいてほえーっとなるけど、よく考えれば著者自身日本のプリンセスなのだから、まあ全然あり得ることなんだろうけど、彬子女王のキャラクター…お人柄なのか、著者自身もわりとほえーっとなっているところが面白かった。
    もちろんそれだけでない、結構誰にでも起こりそうな普遍的な留学の苦労、本筋であろう博士学位の取得の艱難辛苦の記録、お父さまである三笠宮寛仁殿下とのやりとり、日本美術をはじめとする美術史関連のお話など、全編とても興味深い内容だった。

    文章もわかりやすく、本当にお人柄が出ているなーと思える。
    この1冊で初めて詳しく存じ上げたんだけど、彬子女王のファンになってしまった。

  • 最初は皇族の女性が留学したエッセイということで、プリンセス街へ出る的な興味で読んだのだけど、父である親王から託された想いと絆だったり、オックスフォード大学や英国の生活の実態だったり、博士号を取るというのがどんなに大変かということだったり、それを飾らない言葉でユーモアを交えて書いておられてとても良かった。
    プリンセスならではの事情(側衛という人たちの存在だったり外交旅券だったりのくだりは新しい世界を知れた)、大学一厳しい教授の指導やその界隈では名だたる人たちとの出会いと交流、研究と勉学にかける情熱もさることながら、そのお人柄でこんなにもたくさんの人に愛されておられるんだなというのがわかる。
    決して皇族という立場に甘えることなく一学生として勉学を真っ当したというのがまたかっこいい。とはいえ一般人では絶対に見られない世界、例えばエリザベス女王にお茶に招かれた話などもあって読み応えあり。

  • 宮家の女子、彬子女王のオックスフォード留学紀。大学在学中の単位交換留学だけでなく、ちゃんと(?)大学院にも行き、博士号を取得されている。
    寮生活のあれこれや、研究の内容など、雑誌に連載していたものをまとめた本で、とても読みやすいし、内容も興味深い。
    日本での生活との違いにも時々触れられているけど、むしろ日本での部分の方が、庶民には目新しく、へー、皇族ってそうなんだ、と思うことしきり。
    学位取得時の、苦労を話さなかったのだから、判ってもらえなかったのは当然だっと、自分の説明責任の問題だ、という気付きは、なかなか考えさせられた。

    本筋とは離れる部分で印象的だったこと。
    皇族の中に「女王」という地位の人がいるのは知っていたけど、これなんて読むんだろう?特殊な訓読みで「ひめみこ」とか読むのかな?まさか「じょおう」?いやそんな、と長らく疑問だった。
    本当に「じょおう」だった。
    そして英語ではPrincessになるそうだ。ということは、Princessというのは、王女(って王の娘だよね)というより、王族の女子ということなのか?

    そして宮家では、名前ではなく、お印で呼ぶことがあるらしい(三笠宮家だけ?)。
    宮家の事務官が、彬子女王の父である故寬仁親王を「柏様」と表現する部分があったり、追悼として女王が『柏さま、「多謝」。雪より。』と記している。
    Wikiによると雪は彬子女王のお印だそうで。

    あと、彬子女王は、家族について書くとき「父」「祖母」などと表記しながら、その言動には敬語を使っている。父はおっしゃった、とか。普通の敬語のルールとは違うので違和感もあるけど、きっと父は言った、のように書くのは抵抗があるんだろうと推測。
    イギリスより異文化かも(笑)

  • Twitterでおすすめが流れてきて、読んだ本。
    声を出して笑い、そして、泣いた。

    彬子女王のオックスフォード留学記。
    英国の大学院生・研究者の生活、文化を知る面白い体験記で、かつ、プリンセスらしいエピソードが散りばめられるのもまた非現実味で面白い。
    側衛や侍女の話はまさにプリンセス。侍女の届け物の話には、ハリウッド映画かよ!と思いつつあったかくて泣けた。

    明らかメンタル病んでた記述もあり、やっぱり博士って大変よな、と、めちゃめちゃフランクな同期のドクターを見直したりする。

    父、寛仁親王の章は、涙なしには読めず。人気の皇族だけある人柄よねと納得もする。

    プリンセスだからこその邂逅もあり、それを思うと泣けたりもする。

    仕事をする上での心構えとしても、同じ苦労や、思いが必要よね、と思って、とっても共感する。

    プリンセスらしいまっすぐさをもった研究者の留学記。笑って泣ける、あたたかな愛に溢れる、人に感謝して、責任を持って生きていく、そうありたいと思える、エッセイでした。

    〈笑えた話〉
    展覧会の作品名『菊とおじさん図』。
    側衛のシオダさんの話。などなど。

    〈勉強になります〉
    ジョープライス(プライスコレクションの!)の「どうしてそんなに作者の名前を気にするんだ。目の前にこんなに素晴らしい作品があるのに。作者に失礼だ。」

  • めっちゃ読みやすかった。留学って本来こうだよなあ、と。(したことないけど)もっと身分の高い2人の姫はこんな努力してなさそう!
    皇族だから仕方ないのかもしれないけど父親への敬語の文章って違和感あるな。それからお母さまと仲良くしてほしい。今の天皇陛下が出てきたところも良かったな。

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著者プロフィール

京都産業大学日本文化研究所特別教授

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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