ビッグチャンス 追い風の今、日本企業がやるべきこと

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569820354

作品紹介・あらすじ

日本企業、反転攻勢の大チャンス到来! 過去の栄光にしがみつくのはやめて、本物のガバナンス、人事制度、事業選択法を手に入れろ。

感想・レビュー・書評

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  • この人の本は今までにも何冊か読んで感銘を受けた。本書もその一冊になった。グローバルで戦うには、あるいはローカル戦を選ぶのなら、という視点で、とにかく過去の成功体験に縛られずにどう戦うべきかを説いている。

    同じコンサルでも大前研一氏とは違う説得力を感じる。冨山氏が実際に経営者であり、数々の社外取締役も兼任しているから、歯に衣着せぬ発言にも責任感が背後にあるのだと思う。

    技術が進歩し細分化し過ぎているからこそ、日本企業が昔から持っているチームプレイが力を発揮する時だと説いている。しかしそれは過去のやり方を踏襲したり小手先の改革ではなく、海外も含めた競合を踏まえ、優秀な人材の活かし方を考えた上でのチームプレイだ。

    早速、自分の仕事の中でも「何が一番大事か」の原点に戻って臆せず実行してみたい。

  • この本の著者の富山和彦さんは「産業再生機構」設立時、COO(最高業務執行者)という要職にいた方で、現在は経営共創基盤(IGPI)CEOである。

    富山さんがこの本で言いたいのは、企業にはG(グローバル)会社とL(ローカル)会社があり、G会社では今までのやり方をドラスティックに変えなければダメだ、という事である。

    その為にはまずあなたの会社で、事業、機能そして人材の新陳代謝が起きるのは当たり前ですか?と問う。

    具体的には「大会社に入り、ずっとその会社で勤め上げることは、サラリーマンとしてまっとうな人生である。」という考えは即座に捨てるべきだという。

    例えばM&Aで自分の所属する部門が他社に売却された場合、最初の内は「嫌だな」と思うが、M&Aは基本的にその事業を必要とする会社に買収されたのであるから、これまで以上に能力の発揮できる環境に恵まれる。そして多額のボーナスも出れば、もう以前いた会社のことは「きれいサッパリ」忘れるそうだ。

    次に平時において、増収増益モードの黒字事業の売却は可能ですか?と問う。
    この「代謝」のタイミングは、早ければ早い方がいい。なぜなら対象となる事業部門や機能部門の現場の強い抵抗は避けられないので、急ぎ過ぎるくらいがいいという。

    また、黒字のうちの売却は撤退に伴うリストラは避けられるし、より高い対価でエグジット出来るので、それをコア事業や新規投資の成長原資に回すことが可能になるという。

    続いて「選択と捨像」は一度やって終わりでなく、常にやり続けなくては意味がないとまで説く。即ち、新陳代謝が旺盛で、自己免疫力が活発に働いていれば、機能を失った細胞はどんどん新しい細胞に置き換えられていく。そしてこれを定常的に行うと日本的経営は生きてくるのだ。そのようにすると「十年に一度の大リストラ」をしなくていいという。

    では、どのタイミングで事業に見切りをつけばいいのだろうか?という問いには、構造的にマーケットシェアが下がっているときは、それがシグナルになる。当該マーケットが10%で伸びているのに対して、3%~4%で売り上げが伸びている場合など、黄色信号である。

    このように相対シェアが下がるときは、たいてい粗利率も下がっている。売り上げがあがているのに粗利率が下がってきたら、良くない兆候である。つまり参入企業が増えると、基本的に単価には低下圧力がかかる、それに対して自社のコストが十分下がっていないと、付加価値率は低くなってしまう。あるいは市場内で差別化されたポジションを築けていない場合も、やはり付加価値率は下がる。

    そうなると、もう量とコストのパワーゲームで、圧倒的なスケールメリットを追求しないと絶対に勝てないと言う。

    そして、グローバルな競争をしている世界におけるコア人材については、日本的な「正規雇用サラリーマン」というモデルはすでに時代遅れになっているとのことだ。

    即ち年功的な賃金カーブが維持できるのは、30歳くらいまででそれまでは全員同じように成長するが、その後は成長が落ちる人や止まる人、さらに伸びる人に枝分かれる。だからその先は完全な能力給でやらざるを得ないのだと説く。

    この議論を究極まで突き詰めると30代・40代で社長が生まれてくることは必然で、つまりグローバル企業のトップともなると「24時間365日」働けるために、すべての体力と知力を振り絞って働ける人を選ぶべきだとの結論だ。

    議論をさらに深めると「要は儲かるか儲からないかだ」ということに帰結していくことだ。ソニーの故盛田昭夫さんが、経営について講演したときのメッセージが”Name of the game is profit!"(要は儲かるか儲からないか、これが僕たちのやっているゲームの本質です)という話だ。

    つまるところ、優れた経営者・長期的に成功を持続してきた経営者の共通項は、結局のところ、「儲けること」すなわち利益への執念と「稼ぐ力」へのこだわりだったそう。

    このようなグローバル企業では、多様性が必要だが社員に外国人・女性が多くないとハーバードやケンブリッジ、MITやスタンフォードの学生はそのような会社を選ばないという。

    彼らの多くは、入社したい会社の役員名簿をウエブサイトで見て、外国人・女性・社外取締役が少ないと、入社を希望しないという。何故ならそのような人材こそグローバル競争に必要な多様性を生み出すのであるからだ。

    そんな富山さんの経営するIGPIは完全なプロフェッショナル型組織であり、コア人材ほど流動性が高い。毎年10%くらいは入れ替わっている。これがむしろ自然な組織であると説く。

    IGPIでは会社の固有ノウハウも叩き込むが、簿記会計や企業法務、財務モデリングなど他社に移っても即座に使えるユニバーサルスキルも徹底的に身につけさせる。

    そのような事をする理由は、若い人を育てることは公共財を作っているのと同じだから、採るも採られるのもお互い様だという考え方である。

    したがって、昨今企業がMBAの留学費用を、帰国後転職されるから自費にするというのは、反対であるそうだ。

    ここまでの議論で明らかなように、グローバル企業の真っただ中にある企業において、トップはサラリーマンの究極の「上がり」ポストではない。いいかえるとトップアスリートみたいなものだと、富山氏は説く。

    よく「うちの業界は特殊で、同じ業界出身者でないと社長は無理です」とか「うちの会社は特殊なので内部昇格でないと社長は持ちません」という話を富山さんは、ほぼあらゆる業種で聞いてきたが、ローソンの新浪氏、カルビーの松本氏、りそなホールディングの細谷氏、JALの再建を委託された稲盛氏、全て業界未経験の方ばかりである。そのような方こそ、グローバル企業に必要とされる”トップアスリート”であるという。

    以上のように、かなり端折ってこの著書を紹介してきたが、私は久しぶりに”宝物”と言える書物に出会えました。しかし、富山氏が言うように、上記の事はG(グローバル企業)での話であり、日本企業の99%はL(ローカル企業)だという事を忘れないでほしいとのことです。そしてどちらを選ぶかはみなさん自身の意思決定に関わることです。

    富山和彦さんは日本の宝です!!!

  • グローバル競争で勝ち抜いていくためにはムラ社会的なメンタリティを刷新し実力主義を根付かせる必要がある、という主張をベースに、事業、社員の年俸、社長(リーダー)などの視点から日系企業を批評する一冊。

    献本頂いたものの、数年間積読してようやく読破(すみません)。これまで著者の著作物を数冊読んでこられた方にとっては重複する内容がある可能性がある点(小生の場合は最初の半分は知っている内容だった)はマイナスだが、世界の市場を相手にする際に企業、社員が必要なプロフェッショナリズムを網羅している内容。

  • 「なぜローカル経済から日本は甦るのか――GとLの経済成長戦略」で描かれたGの世界に焦点をあて、なぜ日本企業が敗れたのか、これからそこで戦うためには、企業と社員はどういう条件・覚悟が必要となるかを詳述。

    年功序列に安住する大企業を、ムラ型メンタリティーの「クソ」サラリーマン会社と罵倒しまくって、相変わらず意気軒高。
    読んでいると元気が湧いてくる。

    ちなみに、「エピローグ―真正「稼ぐ力」再生のための20の質問」(p289)に答えてみたところ、見事0点。

    わが社は典型的「クソ」サラリーマン企業だった!

  • あちこち辛辣で爽快。この人が上司だったらついていきたいと思うな。大変だろうけど。

  • 新「和魂洋才」経営で、日本企業は再び世界の覇者になる! グローバルゲームのルールを知り尽くした著者が、世界で勝てる人事・組織への切り替え方を説く。会社とビジネスパーソンの稼ぐ力を見極める「20の質問」も掲載。

  • 株式会社ニッポンの栄光と挫折。
    低迷の原因は3つ
    ・グローバル化に立ち遅れた。人間は成功からは学べない。
    ・デジタル革命の波に乗り遅れた
    ・ムラ型メンタリティが改革を阻んだ。
    80年代大成功した日本はその成功体験があるがゆえ、ゲームのルールが変わり時代の変化についていくことができなかったということか。
    この20年でぐるっと1周回って日本企業のもつ強みが活かせるモードに戻ってきた。
    まずは厳しい「あれかこれか」できるようになることが、新しい「すり合わせ」時代の競争で覇権を取り戻すための必須の条件である。
    あとビジネススクールで学んだことで一番約に立ったのが簿記だとは意外だった。

  • グローバル競争の中で日本企業がどのように戦って行くかの処方箋。今、世界がどんな風に変化しているかを網羅的に学ぶことができる。

  • 事業売却されたら、基本的にその事業を必要とする会社に買収されたわけだから、出て行った人はこれまで以上にその能力を発揮しやすい環境に恵まれる。 まともなMAである限り、競争優位も高まるので、より有利な戦い方もできるはずだ。そこで新たなやりがいを見つける人もでてくるだろう。一方、無理して会社に残った人は、これまでとは違う職場に移り、業務内容も大きく変わるので、かえってストレスフルな環境になりやすい。残ったほうが幸せとは限らないのである

  • ソニーをやり玉にかつて栄華を極めた日本企業が没落した理由をグローバル化とデジタル化への対応を中心に説き、病んでいる日本企業への処方箋をサラリーマンのメンタリティや人事を重点的に提示する。今も元気な日本企業として、KOMTRAXでIoTの先駆けとして知られているコマツを挙げていて、ERPををほぼ標準のまま導入したとのこと、やはり他の日本企業とは一味違うようです。少し前にネットでも盛り上がったグローバル大学、ローカル大学構想の片鱗も述べられている。復帰後のジョブズからアップルへの出資依頼をソニーが断った話があって驚いたけど、本当の話なんでしょうか?

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著者プロフィール

冨山 和彦(トヤマ カズヒコ)
株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長
1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長、パナソニック社外取締役、経済同友会政策審議委員会委員長。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、国土交通省インフラメンテナンス国民会議議長、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員などを務める。主な著書に『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)、『コロナショック・サバイバル』『コーポレート・トランスフォーメーション』(いずれも文藝春秋)などがある。

「2022年 『両利きの経営(増補改訂版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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