100年の価値をデザインする 「本物のクリエイティブ力」をどう磨くか (PHPビジネス新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569809526

作品紹介・あらすじ

日本のセンスは世界に通用する! 世界的工業デザイナーが、日本的なクリエイティビティを発揮し、世界で勝負するための条件を説く。

感想・レビュー・書評

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  • 「モダン、シンプル、タイムレス」
     5年かけてつくり、10年売り続けるためには複雑ではもたない。
     たくさんの中から選ぶからいいものが出てくる。

    「言葉でデザインする」
     言葉は考えを具現化する。
     言葉によるコンセプトを具現化する視覚的なものが追従する。

    「ハレとケのデザイン」
     日本にはケのデザインがない。
     よそ行きの服装はいいが、普段着はダサくなる。
     その矛盾に気がつけば、日本全体のデザイン力が高まる。

    「問題は単なる変化に過ぎない」 
     いまは、新しい産業革命と捕らえるべき。

    「ブランド化の極意」 
     成功しているブランドは、具体的なライフスタイル全体を提案して訴求している。

    「自分のつくっているものを使いなさい」
     現在危機にあるのはフェラーリ。設計者たちはフェラーリに乗っていない。
     圧倒的にお客さんのほうが情報量が多い。
     カーディーラーはコーディネイターとして「ものを語るな」と指示されている。
     この閉鎖的状況を打破しないと日本は沈んでしまう。

    「片っ端から疑う」
     クリエイティブになるための第一歩は疑うこと。
     真似は借り物の文化。マネではなく、盗み、自分のものにする。

  • 競争の激しいデザインの世界において第一線で活躍する著者による、建設的な日本人論、日本社会論。

    デザインは言葉から生み出すと述べているだけあり、言葉遣いがうまく非常に簡潔で読みやすい。
    そして何より自らの体験、実感をもとにした、日本人や日本社会への洞察、指摘が極めて的確であると感じた。

    一例を挙げれば、日本は高度成長時代から「たくさん作ることはいいことだ」と思い続けてきており、現在もそこから脱し切れず、中国や東南アジアと過酷なコスト競争を行っていると筆者は考えている。
    それに対し、筆者は1台でも1万台でもなく200台作るもの(クルマ)を売れ、と指摘する。
    1と1万というオールorナッシングな思想から脱し、高付加価値でありながら、コモディティ型の要素も持った商品の開発が有効だと考えているのだ。

    まさに、日本がものづくりを活かして世界の競争の中で生き残って行くための道であると、自分も共感するところである。

    また一方で、デザインに関連して「日本語の語彙を減らせ」との指摘は新しい発見であった。
    自分は言葉を使って考えをまとめ、それを他者に伝えることが好きであり、また評価されることが多く意識している部分でもある。
    しかし、語彙を減らそうと意識したことは無かった。
    筆者の指摘は、英語やイタリア語がシンプルな言葉でコンセプトをズバッと伝えることに適しているのに対し、日本語はファジーな語彙が多く、言葉遊びになりがちであるということだ。

    そこには日本人の論議力の不足も関係していると筆者は指摘するが、自分や周囲を見ても身に覚えがある。
    まずは言葉遣いと論議力を自分の強みと出来るよう、努力して行きたいと思う。

    筆者の指摘する日本人の強みの「個人力」を高め、弱みの「団体力」を克服したホワイトカラーを目指して行く。

  • 1.アメリカ人よりアメリカっぽいデザインを体得した話。R東京の馬場さんの話に通ずるところがあった。デザインは、体育会系だと。質を追うよりひたすら数を出せと言う。億劫がらずに体を動かせ、現場に行け、手を動かせと言う。

    2.デザインは言葉
    明確な方向性を簡潔な言葉で言語化し、共有することがデザイン。長い企画書を書いても、伝わらないものは伝わらない。

    3.中規模生産を目指せ
    ここが本書で一番心に残っている場面だ。
    日本は大量生産と個別生産は得意だが、意外とこ200個作るノウハウを持つところが少ない。著者の夢は、日本に小規模生産を根付かせること。イタリアの有名ブランドは全てこの方法でつくっている。

    4. イタリアもかつては大量生産に勤しんだ時期があった。しかしそれでは儲からなかったので、ブランド力とデザイン力を武器に高価格帯にシフトした。イギリスも同じように、それを真似した。

    5. 世界最高のコンパクトカーヴィッツと、
    BMWが再設計したニューミニ。
    価格差は3倍。ヴィッツは利益が一台あたり3万円ほどという。著者は、その状況に嘆くのではなく悔しいという感情をあらわにする。

    クリエイティブにあり続けることの秘訣として、
    はじめての編集の最後にも書かれていた、歴史の中で自分がどういう文脈の上にいるかを理解することが大事だという。

  • フェラーリやマセラティ、秋田新幹線のデザインを手がけ、最近ヤンマーなどでも活躍する著者。デザイナー視点で読んでみると、なかなか面白い一冊。デザイン論にとどまらずクリエィテブな目を通じて、日本人や欧米人の働き方の違い、これからの物作り、新しい都市の構造論と幅広い。デザインを通して世の中を変えようと考える筆者の発想力と壮大なビジョンが読んで伝わってきた。デザイナー視点から書かれた書籍が中々無い中で、デザインの本質とは何か、これからの日本が進むべき道を知ることができる貴重な本だと思う。

  • ものづくりとは何か、考えさせられる。落としどころを考えずに喧嘩するな、とかかなり実践的な示唆に富んだ本書。技術を持ったブルーカラーこそが生産力を持ってる、とは励ましになるがプレッシャーにもなる。デザインを通して世の中を変えようと考える筆者の発想力とビジョンにはただ圧巻。

  • <目次>
    序 日本人が持っている潜在力をどう発揮するか
    第1章 世界で通用した「日本人としてのセンス」
     −僕はなぜフェラーリのデザイナーになれたのか?
    第2章 「言葉の力」を発揮する
     −団体力のイタリア仁、個人力の日本人
    第3章 日本のものづくりの「殻」を破る
    第4章 「ものづくり」の仕組みが変わった!
     −第二次産業革命時代にどう対応するか
    第5章 「本当に好きなもの」を作り、売る
     −プレミアム・コモディティを目指せ!
    第6章 これからの100年をデザインする
     −新しい社会システムを作り上げる
    終章 クリエイティブであり続けるために
    あとがき

    2013.08.20 新書巡回で見つける。
    2013.11.09 読了

  • 『100年の価値をデザインする』
    世界的デザイナーが様々な視点から日本の問題を取り上げ、解決策を提示している。
    印象に残ったのは以下4点。

    p58・59
    議論をできない人はデザインができない。
    絵を描く前に言葉でコンセプトを決めて、それから絵を描きなさい。

    p90
    喧嘩をしてどういう結果になることを望むのか、そのビジョンも見込みもないままに、日本人はいきなり喧嘩を始めてしまい、落とし所を見つけられずに変な方向に議論が曲がっていってしまう。

    p187・188
    メーカーが利益を上げられるのはニーズ商品ではなくワンツ商品だ。
    今、日本の国産製品にあなたが身悶えするほど欲しい物があるだろうか。

    p213

    欧米の町並みは、多くの日本人が憧れてカメラを向けるが、その景観を維持するためにどれほど個人の権利が制限されているかを想像する人は少ない。

    本書を読んで、日本人は察する事が得意でも言葉に疎い種の人であること、保守的になるがあまりにワンツに対応できないことが欠点であることを学んだ。

  • フェラーリやマセラティ、秋田新幹線のデザインを手がけ、最近はヤンマーなどでも活躍する世界的デザイナー、奥山清行。

    奥山氏によるこの本は、デザイン論にとどまらずクリエィテブな目を通じての、日本人や欧米人の働き方の違い、これからの物作り、新しい都市の構造論と幅広い。

    驚いたのは日本人は世界的に見て、団体力では劣り、個人力で勝っているという彼の持論だ。
    確かに日本のホワイトカラーの労働生産性は欧米と比べて低い。その一方で一人世界に飛び出し、活躍している日本人は増え続けている。

    柔軟性を失った組織に絡め取られた個人が、力を発揮できない世界、それが今の日本なのかもしれない。そう思わせる記述は本書の中に至る所で散見される。

    一人世界に飛び出し、世界相手に活躍してきた奥山氏だからこそ、見えてきた真実なのであろう。
    努力さえすれば理想の自分になれる。現実にそれを成しえた奥山氏だからこそ、この本人の言葉に重みを感じる。

    優れたデザイン性を軽視していては、これからの商品開発は成り立たないだろう。
    デザインの本質とは何か、を知ることができる貴重な本である。

  • 奥山さんの熱量が伝わってくる、とてもいい本。議論ができない、時間軸を持てないとかは自分もそうだなと思って反省する。日本人の相手の気持ちを察する力が成功要因というのは面白かった。むしろネガティブな要素のように感じてた。

  • 怒られ慣れていない若者は、クリエイティブ能力を発揮できない。

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著者プロフィール

Ken Okuyama Design代表

「2013年 『100年の価値をデザインする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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