「あまった食べ物」が農業を救う (PHPサイエンス・ワールド新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569804200

作品紹介・あらすじ

国全体で6割の食料と大量の肥料を輸入し、その後食料の3割近くを廃棄する国、日本。一方でほとんどを海外に依存している化学肥料は、入手困難が予想されているものもあり、国際関係にも大きく左右される。膨大な無駄と深刻な危機を乗り越えられるのは、生ゴミや家畜糞をきちんと発酵させ、有機質肥料として活用する社会だ。「有機農業」の危険性にも注意を払いつつ、自ら循環型農業に取り組む農業コンサルタントが語る。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人は膨大な量の化学肥料や食料を海外から輸入している。現状として、食料は約3割がそのまま廃棄され、化学肥料は農地に惜しみなく使用し、土壌のバランスを破壊している。筆者はこの問題を解決するために、余った食べ物や家畜の糞尿から作られる有機質肥料を用いた、環境に優しい「循環型社会の構築」を目指す。

    近年話題のSDGsと関連がありそうだと思い、手に取って読んでみました。これからの時代は、本書で紹介されているような循環型農業への取り組みを社会全体が理解し、協力して行っていく必要があると感じました。

  • 所在:展示架
    資料ID:11200477
    請求記号:613.42||Y19||057

  • 日本の農業に将来はあるのか?そんな不安を覚えられる方にオススメしたい一冊だ。

    まず筆者は、従来の農業を批判する。最大の問題点は「肥料」だ。
    化学肥料を用いた近代型の農業は、土壌を疲弊させ、したがって農作物自体もひ弱にしてしまう。そうなると、農薬や追加的な化学肥料が必要となり、生産者・消費者ともにマイナスである。
    こういった農法が悪いことは広く知られていることなので、それに代わる「有機農法」が注目されている。つまり、自然由来の堆肥を使い、農薬を極力減らす農法だ。
    しかし筆者からすると、これでもまだ不十分であるそうだ。なぜなら、「有機農法」は循環的でないからだ(それに、「有機農法」は思ったより健康的でないらしい。というのも、残留硝煙酸が多量に含まれているから)。

    筆者のいう農業は、循環型社会の一角を担うものだ。生産した農作物を消費し、消費者が出す残滓(生ゴミや下肥)や生産過程で出る廃棄物(おもに動物の糞尿)を再び生産に回す。これが循環型社会だ。再生産に回すための肥料(本文中では「有機質肥料」となっている)は、善い菌によって十分に発酵されたものを使う。これは「有機農法」の肥料よりも、土壌を豊かにする。しかも、ゴミのリサイクルにもなる。

    こうした循環型社会の農業を拓くには、やはり社会全体が協力しなければならない。それは確かに大きな変革を伴うものであるが、結構楽しそうだ。おいしい野菜が食べられるのなら、ゴミの分別くらい訳ないものだ。

  • まず、問題提起が素晴らしいと思いました。

    ○「2050年には世界の人口90億人が食糧をとりあう」なか、日本は化学肥料に頼り切りの農業を続けていってよいのか?

    ○「現代におけるリサイクルは、ゴミを資源に変えるだけで、リサイクルが成立しているような錯覚」を覚えている人が多いが、その資源の使われ方に視点がいっている人はどれだけいるのか?

    この二つの問題提起に、筆者は研究と独自の理念で、巻末に記載されている「循環ネットワーク」の提唱をしています。

    もしこのネットワークに賛同するのであれば、他人任せではなく、自分もできる所から始めなければならない。そう思わせてくれます。

    (行政の非協力的なエピソードは、読んでいて耳が痛かったです(苦笑)リスクを恐れて行動を控えるよりも、アイデアに乗っかる前提からリスクを減らす努力をしなければならない、というようなスタンスで仕事に望みたいものです。)

    本書からの引用
    「しかし、環境の面からもエネルギー効率の面からも、そろそろ化学肥料一辺倒の農業には限界が来ていることを、直視しなければならない時期なのではないでしょうか。」

  • 残飯や排泄物をつかった農薬、化学肥料なしの循環型農業を目指す。
    日本においては既にそのような農法を伝えられる世代は既に消えてしまった。農協が指導するままに農薬と化学肥料を使用し、形が良く流通に載せやすい代わりに滋味も栄養価も低い作物をつくることが農業の主流になって久しい。著者は理想論に陥らず、きちんと経営が成り立つような循環型農業を日本中に広げていこうとしている。とにかくバイタリティに溢れる人です。面白い。人も農業も。

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