IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (PHPビジネス新書)

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569800783

作品紹介・あらすじ

勤めている会社は大丈夫か?取引先は?会社再生のプロが実践している37の手法が身につく本。メーカー、小売・卸、通信、飲食ビジネス…エピソード満載。

感想・レビュー・書評

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  • 時折読み返す一冊。財務諸表の数字の背後には、会社によって様々なストーリーがあること、状況改善の打ち手も会社によってテーラーメイドする必要があることを思い返すようにしている。どこまで実戦で使えているか怪しいが。

  • リアルな経営分析とはなにか、数字の分析のみならずその数字の裏側にある物語まで読み取る力をつける必要があることを学んだ。
    会社の生死を分ける剣ヶ峰に立たされた時に(そんな場面に出会いたくないが)読み返したい。

  • リアルな経営分析とは何かを考えさせられる本。
    アカウンティングを学び財務三表の見方を理解していたが、財務諸表上の数字を見て財務指標分析をするといった数字上の分析手法では本当に実態にあった適切な分析ができるとは言えないということを理解した。
    その分析対象の企業がどんな会社かを定性的に想像できることが何よりも重要。
    行っている事業はどんな構造でどうやって儲けているのか、その業界の構造がどうなっているのか。
    今ライフサイクル上のどこに位置しているのか。
    取引先はどんなところか、それが意味するところは何か。
    P/Lからその会社の事業構造を具体的に創造し、そこから仮説を立て、違和感のある数字を確認する。そして、B/Sを見て資産状況から何が言えるのかを考える。
    リアルにその会社の実態を創造し、置かれている状況から考えられる課題を見極めて財務諸表と比較し定量的な課題の答えを見つける、そういった分析の仕方が学べる。
    身近な商材の例をとってわかりやすい内容になっている。
    また、規模の経済や範囲の経済、密度の経済、ネットワーク経済性といった事業経済性の基本も学べる。
    日頃からビジネスの具体的想像を意識させてくれる良い本である。

  • 最も印象的だったのは、「企業と生物は一緒。動的平衡を保っている。むしろ企業の方が複雑かもしれない。アメーバから霊長類まで、同じ土俵で論じられるか?」普段感じていることを言語化してもらえた気がします。

  • 会社は生き物(無形物であり、動的平衡な物)という当たり前の事を認識し、セオリー通りの理論上の経営分析ではなく、地に足のついた分析の重要性を述べている。同じ業界であっても事業モデル、成長ステージ、市場成熟度、戦略の違いによって収益構造は異なり、事業構造や現場の実態を理解することで適切な経営分析ができる。最初に数字ありきではなく、先ず活動ありき、事業構造を想像できることが重要。リアルな経営分析を行うにあたっての基本的な心構えと、方法論が書かれている1冊。

  • ただ数字の意味を知っているだけでなく、その使い方を理解することが大事、ということはよく言われることだが、そのノウハウが書かれた良書。
    再読する必要あり

  • 画一的な経営分析では、経営の舵取りはできないことを示唆した本。

    1.隠れた病気を発見し、今後の治療と将来の予防に役立てるのがリアルな経営分析であって、過去を評価するためのものではない。目線は常に未来に向いている
    2.リアルな経営分析では企業ごとの実態の違いに目を向けなければいけない。全てを一括りで扱う投資家向けの財務分析の世界とは違い、りんごとみかんを一律指標で分析・比較してはならない。
    3.経営分析はナマの事業モデルをつかまえることからスタートする。みかんとオレンジは、よくよく見ないと区別がつかない。
    4.細かい業界専門知識を持つことは、必ずしも経営分析力に直結しない。「結局どうなのか」を知るには、売上インパクト、コストインパクトの大きな部分に目を向ける必要がある。
    5.同じビジネスでも、業界ポジション、成長ステージやスピード、経営者の資質と組織との関係性などによって、企業を見るための「ものさし」を変えなければいけない。
    6.経営分析はまず数字から。数字をもとに背後にある企業実態を想像する。出てきた仮説を現場に足を運んで検証して企業の実像に迫る。その繰り返しで分析の質を高める。
    7.PLを突破口に木々用実態を思い描き、BSで確認し、最後はウソのないCSでチェックする。
    8.簿記は必ずやっておくべき。現場で使える経営分析の能力は、しっかりした簿記の土台の上に築かれる。
    9.世の中は教科書通りには運ばない。本当の観察力、想像力は経験を積むことでしか培われない。そして、その学習スピードは、数字と人間の両方に対する「好奇心」次第。
    10.戦争に勝つのはより多くの情報を持っている者。経営改革という戦争の勝者になりたかったら、経営分析力を磨け。
    11.当事者意識を持たずにいくら決算書を眺めても、付け焼き刃の知識しか身につかない。経営の修羅場、ガチンコ勝負に飛び込め。
    12.たかが会計、されど会計。せっかくの人類空前の発明品は都合よく使いこなすべし。
    13.経営分析の目的は、まずは勝つためのルール(儲けの仕組み)を理解すること。経済原則、特にコストを支配する法則が何かは必ず押さえるべし。
    14.事業の経済メカニズムについて、世の中は誤解だらけ。安易に「規模が効く」と思い込むな。まずはありのまま現実を凝視し本質を洞察せよ。
    15.単純に規模を拡大しても、その効果が得られる業種は、実は驚くほど少ない。共有コストが薄い場合、むしろ規模の不経済が働き、勝敗を決めるポイントは拡散する。
    16.優勝劣敗の構図が本当に変わるのは、経済構造が変わったとき。そこで当該事業が消えゆく運命なのかを見定めるのも、経営分析の大事な仕事である。
    17.経済の本質のひとつは、人間心理である。人間音痴では、正しい経営分析はできない。
    18.世の中の多くのビジネスを支配しているのは、実は「密度の経済性」。単純な「規模」だけでなく、「密度」の持つ意味にも着目せよ。
    19.同じ事業のように見えても、購買行動、立地、業態などによって経済構造は異なり、重要な経済指標も違ってくる。「違いのわかる」分析者になれ。
    20.普及するほど利用価値が高まるネットワーク型の商品・サービスの場合、リスクをとって全速力でシェアを取りに行くことが正しい行動となる。先手必勝!
    21.イノベーションなどによって、市場の創造〜成長〜成熟は繰り返される。分岐点における競争ポジションによって個別企業のとるべき戦略も変わる。経営分析でもそのダイナミズムを見極めないとならない。
    22.顧客が他社製品に乗り換えるスイッチングコストを高めることは、提供「価値」を「適正価格」として実現する基本中の基本戦略。顧客サイドの経済性を分析せよ。
    23.見た目は同じ工場でも、系列取引の割合を見極めないと、経営の実態に近づくことはできない。B to Bビジネスでは、このような産業構造的な視点からの経営分析を忘れるな。
    24.インダストリー・バリューチェーン全体の成熟度合いとイノベーション、その中での位置付け(より多くの価値配分を勝ち取れるポジションにいるか)の両方に目を配らないと、企業の将来の競争優位性は掴めない
    25.大競争時代の勝ち抜きの決定版は、スモール・バット・グローバルナンバーワン・モデルで、価値(価格実現力)とコスト(規模の経済)の両取りを狙うこと。スモールセグメントでのシェアとコスト、そしてスイッチングコストに着目せよ。
    26.儲かっているビジネスこそ要注意。運と実力を冷徹に見極めよ。
    27.経済メカニズムの視点を各種分析枠組み(3C分析や5Forces分析)にしっかりと入れることで、個別企業のあるべき姿と、その裏返すでその企業が直面する問題点や課題がよりクリアに見えて来る。事業経済性で本質に迫れ。
    28.単価と数量を掛け合わせれば売り上げがわかる。売り上げを1日、1店舗、一人あたりに細分化すれば具体的な姿が見えて来る。
    29.PL全体でのストーリーをつかみ、BSでそれを確認する。どんなヒト、モノ、カネ、業務プロセスが絡んでいるかを、PLとBSからイメージ化できると「勘」が働き出す。
    30.ある数字を見て異常に気づくためには、相場観が欠かせない。特に値段のリアル感に敏感になることは、あらゆるビジネスの基本である。あなたは今日のトマトの値段を知っているか?
    31.単品管理を徹底すれば、どんぶり勘定の余地がなくなる。大抵の問題はそれで解決できるはず。
    32.お約束通りにやる財務会計は出発点。分析者の経営センス、オリジナリティーが問われる管理会計こそがゴール。
    33.売り上げを増やすのに、どのようなコストがかかっていくのか、どのような売り上げの伸ばし方が、コスト効率が高いのか、という「コストドライバー」の視点で勝ちパターンを見極めていくことが重要。
    34.数字の分析を徹底的に突き詰め、壁にぶち当たり、悩み、苦しむことで、その会社の組織サイド、人間サイドの本質的な問題も浮かび上がってくる。
    35.月次、四半期、年度決算がその事業のサイクルと一致しているとは限らない。当てる定規の長さによって、業績の評価や予測は大きく変わることは少なくない。
    36.取引先や競合他社を見るときも、財務データ、経営データを分析することで、従来とは違った見方を手に入れることができる。プロが本気で分析するのは、その会社と事業の経済性(儲けを決めるメカニズムとその堅固性)と、財務の健全性(いざというときの生存能力)。この2点について、数字と業務実態がコインの表裏のように整合的に納得できるまで、徹底的に分析せよ!

  • 私にとって受け入れ難い本だった。業種によって規模の経済が効く効かないというように書いてあるが、規模の経済が効かないときの議論は、設備投資を拡大するときの話をしており、それは経済学でいう長期費用の概念である。そこでは固定費用も可変費用として扱う。つまり固定費用の存在しない世界である。これは著者の言う「規模が効く」ための2つの要件を満たさない。つまりどの業種も設備投資の話になれば規模は効かないことになる。よって規模が効くか効かないかは、長期(設備投資)でとらえるか、短期(生産)でとらえるかの違いであり、一方では設備投資の面、もう一方では生産の面で業種が語られていたに過ぎない。著者が間違っていなかったとしても、全体的に経済学にあまり触れてない人にとって誤解を生むような説明が多く残念。

  • いわゆる数字をいじるだけの経営分析から、数字の裏にある現実に近づくためのリアルな経営分析のためのノウハウが書かれている。特によかったのは第3章。生き残る会社と消え去る会社ということでいろんな会社の儲けの構造・枠組み=ビジネスモデルについて書かれている。結局自分が分析しようとしている会社の儲けはどこから出ており、どういうルールの中で戦っているのかを把握しないとただ数字を見ても意味がない。また第4章ではトマトの卸を例に実際にビジネスの流れをシミュレーションし、数字を作ってみている。これでかなり分析対象のビジネスにリアリティが持てるようになる。
    コンサルティングをやっていて思うのはこのリアリティについて自分で納得感がないと、なかなか仕事もうまくいかない。
    そういう意味では他の経営分析の書籍とは一線を画した良書。

  • 元産業再生機構冨山さんの本は、結構何でも読んでしまいます。
    今回は、冨山さんのコンサル会社が用いている
    経営分析の手法をあますことなく伝えた本。

    会計の本科と思いきや、PLやBSの用語は出てくるものの、
    ほとんど数字は出てきません。
    会社や業界の属性から読み取れる儲けの源泉や仕組みを
    どう読み取り、PLやBSで検証するのかが書かれています。
    ちょうどKSFの重要性を認識したところなので、
    すーっと腹に落ちてきました。

    やや骨は折れるかもしれませんが、
    何度も読み返したいと思えるくらい勉強になる本でした。

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著者プロフィール

冨山 和彦(トヤマ カズヒコ)
株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長
1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長、パナソニック社外取締役、経済同友会政策審議委員会委員長。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、国土交通省インフラメンテナンス国民会議議長、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員などを務める。主な著書に『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)、『コロナショック・サバイバル』『コーポレート・トランスフォーメーション』(いずれも文藝春秋)などがある。

「2022年 『両利きの経営(増補改訂版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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