本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569768991

作品紹介・あらすじ

作家が読むと、本はこんなに面白くなる!速読コンプレックスを持っていたという著者が、読書法について実践的な手法を綴った一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 本の“読み”を深めたくて読んでみる。

    内容は・・・著者も本文で述べているように“アンチ速読本”だった。
    効率よく、早く、多く読まなければならない、という世の速読コンプレックスに一石を投じている。
    速読とは「明日のための読書」で、対しスローリーディングは「五年後、十年後のための読書」だと言う。
    もちろん、遅ければよいと言う事ではなく、本の内容を深く理解しなければ意味がない。
    ただ漫然と読んでいるだけの私には耳の痛い話だった。

    *助詞、助動詞に気をつける。
    *辞書癖を付ける
    *作者の意図は必ずある
    あたりの章が目から鱗が何枚も落ちた。

    後半の「古今のテクストを読む」には知的興奮が満載。
    『こころ』『高瀬舟』『橋』『金閣寺』『伊豆の踊り子』
    『蛇にピアス』『葬送』『性の歴史Ⅰ 知への意志』を例に取ったスローリーディングのテクニックの実践。
    頭のいいヒトって、こんな風に読むのね~と感嘆。

    少しでも自分のものにしたい。

    続編の『小説の読み方』も気になる。

    “「現に何を読んでも「今までの自分」という殻からは一歩も出られず、一本調子の感想しか抱くことのできない人は、世の中にもたくさんいるのである。そういう人は、自分で自分の周りに檻を作ってしまった囚人であり、いつまで経ってもその狭い檻から抜け出せず、その中からしか、世界をみることができないのである。私たちはもちろん、そうはなりたくない。」”p050
    ここグサッときました。

    • もおりいさん
      貴重なレビューありがとうございます。今度読んでみたいと思います。
      貴重なレビューありがとうございます。今度読んでみたいと思います。
      2019/10/20
    • 5552さん
      もおりいさん。

      是非読んでみてください。私ももう一度読んでみようと思っています。
      フォローといいね!ありがとうございました!
      もおりいさん。

      是非読んでみてください。私ももう一度読んでみようと思っています。
      フォローといいね!ありがとうございました!
      2019/10/20
  • 【読もうと思った理由】
    最近、一度読むだけだと難解で理解しにくい本を徐々に読むようになり、「もっと読解力があったらなぁ」と思うことが多くなっていた。そんな折、この本とたまたま出会い読むに至る。

    【読後の感想】
    プロの作家の方は、「ここまで考えて本を読んでいるのか」と脱帽し、恐れ入った。

    (以下、感銘を受けた箇所を記載。)
    読書を今よりも楽しいものにしたいと思うなら、書き手の仕掛けや工夫を見落とさないというところから始めなければいけない。
    作家のタイプにもよるが、たとえば、三島由紀夫などは、様々な技巧に非常に自覚的な作家だったので、スロー・リーディングをすると、ここまで気を使うのか!というほど、細かな仕掛けがいくつも見えてくる。しかし、その多くは、実はほとんどの読者に気づかれないまま、埋蔵金のように今も小説の至るところに眠っているのである。
     
    本当に読書を楽しむために、「量」の読書から「質」の読書へ、網羅的な読書から選択的な読書へと発想を転換してゆかなければならない。

    文章の上手い人と下手な人との違いは、ボキャブラリーの多さというより、助詞、助動詞の使い方にかかっている。やたらとたくさんの単語が使われていても、ちっとも胸に響かない文章もあれば、「ボキャ貧」であっても、妙に説得力のある文章もある。動詞や名詞を生かすも殺すも、助詞、助動詞次第である。

    人間のワーキングメモリは少しづつしか情報処理できないから、本を読むときに速読で大量に情報をインプットしようとしても、そもそも無理がある。スロー・リーディングによって、小分けにして、その都度長期記憶の間を往復しながら情報を処理していかないと、理解は進まないのである。ドストエフスキーの名前のややこしい登場人物が大勢出てくるような小説を読むときには、しょっちゅうページをさかのぼって、「なんだったけ?」と確認し直している。

    (筆者が読書にハマったきっかけ)
    筆者がそもそも読書にのめり込むようになったきっかけは、三島由紀夫の「金閣寺」だったそうだ。最初に読んだときは、「なんだこりゃ?」的な衝撃で、内容がどこまで理解できたか、怪しいものだったそうだが、だからこそ、ひどく興味をそそられたそうだ。
    そこからは、しばらく三島の本ばかりを読みあさり、気づけばすっかり、ファンになっていたんだそうだ。今度は三島が好きだとエッセイで言っていた作家である、マン、ゲーテ、シラー、ドストエフスキー、ゴーゴリー等等、まさしく三島は、筆者にとって読書の正確なルートを示してくれた優秀なナビだったんだそうだ。そして三島が影響を受けた様々な作家の小説を読んだあと、もう一度金閣寺をはじめとする三島の作品を読むと、最初に読んだ時よりも、はるかに作品の内容を深く理解出来るようになったことが、嬉しかったとのこと。
    そこから学んだことは、作家の作品の背後には、さらに途方もなく広大な言葉の世界が広がっているという事実。

    【本書を読んで得た気づき】
    本を読むことは、相手とコミュニケーションを取ることと、ある種似ているなぁと感じた。作者がその本の中で訴えたいことがある中で、極力読み飛ばされない様に、工夫を凝らして、何度も何度も推敲して、作品を作り上げているんだと。そこまで時間を掛けて作った作品を、数時間で、たった一回読んだだけで、すぐに全てを解るわけもないということが、肌身に染みてよく理解できた。
    一回読んで理解できなかった作品は2度、3度と何回でも理解できるまで読もうと思った。
    今後は今まで読んだことのない作家の作品を、極力読むよう意識をしていこうと思う。色々なタイプの作家を知ることで、読解力、理解力も上がっていくはずだと思うからだ。

  • 平野さんの小説をまだ読んだことがないことは、たぶん幸福だ。読んだことがない本が山のようにあることは、物凄く焦燥感に駆られることだけど、埋もれるくらいの幸せがあることの確認でもある。と思う。
    本を読むのが遅い。私も。
    三日で一冊とか読めたら、私の部屋に溜まりまくる本棚単位の積読本を少しずつでも解消できるのに。そう思うんだけども、分厚い本を手に取った時のあの恍惚感、一ページが惜しくて惜しくて仕方ない心持、それを楽しまずにいられない。
    小説はスローに、資料は速読でできたらと考えていたけれど、資料を飛ばし読みしたり、大体の把握しかしてないまま本番になんて怖くて移せないなと考えが改まった。資料も、読もう。辞書とネットとをお供に。
    書きこみというのができない私は、面倒でも書き写すか、二冊買って読むようと書き込むようにするかだな、と思ったけど、それすらも自分のやり方を見つけていけばいいんじゃないか。
    本の読み方が、年々いい感じに、私に合うやり方に育っていくように、頑張ろうと思った。
    作家さんが読むのに時間がかかると聞いて安心した。

  • スローリディングのススメ。量より質。おっしゃる通りだと思いながら、感覚的に読みたい時もある。しかし、それだけではもったいないことが理解できた。再読をしていこう。ただここでもまず自分がよかった、面白かったと思った本からになるだろう。ここの意識を変えると、見えてないことがよくわかるのだろうけど。

  • 作家による読書法の紹介本。
    わかりやすく、理にかなっていて面白かった。本来、個人が楽しみながら進める読書を、国語の時間が妨害している面はたしかにあるよなぁと思う。試験における作者の意図は、出題者の意図なのだと割り切って説明されていて、少しすっきりした。

    また、気持ちがいいほどのアンチ速読で、読んでいて楽しかった。もちろん、ただこき下ろしているわけではなく、速読の危険性や罠について論理的に説明しているので、内容は頷けるものばかりだった。

    実践編では実際の小説の一部を取り上げながら、スローリーディングを進めていく。
    私はこの職業についていながら『こころ』の中編にあまり価値を置いていなかったけれど、もう一度読み返すときには、ちゃんと中編の意味について考えながら読みたいと思った。
    カフカも難解で面白そうなので、短編集を探してみようかな。

    本の読み方のテクニックが詰まっているし、本を読む意義もたくさん載っている。比喩などもあってとてもわかりやすいので、本を読みたいけれど、どうしたらいいかわからない人におすすめしたい。

  • 著者の本は「マチネの終わりに」を読みましたが、とても魅力的な本だったので本作品も読んでみました。
    この本は「本の読み方」の本ですが、本を書く作家さんの視点から、どのように本を読むべきかを丁寧に考察してあり、とても理解が深まり、益々好きな作家さんになりました。
    本が読みたくなる本です!!

  • 作家が語る、スローリーディングを語った本。
    書き手の視点で読む、精読し読んだものを自分のものにしていく、どちらかといえば速読気味な私には耳の痛い話も。
    書き手の産み出す文章を、読者は一言一句、噛みしめるように糧にしていかなければと思った。

  • #本の読み方
    #平野啓一郎
    #スローリーディング
    #PHP文庫
    スローリーディングの概念は理解できたし大変共感した。情報があふれる現代においてゆっくり本を読むことこそ豊かさ。焦らなくていいんだな、とホッとした。実践方法とかは私には難しくて真似できそうにない。また、いつか再読してみよう。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    ※引用
    「一冊の本を価値あるものにするかどうかは、
     読み方次第」

    「読者が本を選ぶように、本も読者を選ぶ」



    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)

    "本はどう読んだらいいのか? 速読は本当に効果があるのか?
    闇雲に活字を追うだけの貧しい読書から、深く感じる豊かな読書へ。
    『マチネの終わりに』の平野啓一郎が、自身も実践している、
    「速読コンプレックス」から解放される、差がつく読書術を大公開。

    「スロー・リーディング」でも、必要な本は十分に読めるし、
    少なくとも、生きていく上で使える本が増えることは確かであり、
    それは思考や会話に着実に反映される。
    決して、私に特別な能力ではない。
    ただ、本書で書いたようなことに気をつけながら、
    ゆっくり読めば、誰でも自ずとそうなるのである。(中略)
    読書は何よりも楽しみであり、慌てることはないのである。



    ⚫︎感想
    夏目漱石のこころ、森鴎外の高瀬舟、三島由紀夫の金閣寺カフカの橋、金原ひとみの蛇にピアスなど、一部分を取り上げて、小説家がどのような工夫やテクニックを凝らして書いているか、いかに気付きながら読むことができるか、実践を交えて丁寧に解説してくれる。

    ・作中で登場人物が疑問を発した時、
     その答えは特に重要

    ・成功している比喩は重奏的

    ・作中の唐突に起きる違和感は注意喚起=主題に関わる
    ・「不自然さ」は場面転換の印

    ・「お茶を飲む」という何気ない動作→緊張しているから→この先重要な言葉が語られるかも

    ・ポリフォニー小説…登場人物がそれぞれに完全に独立した思想を持ち、彼らが対話を通じて対決するタイプの小説

    ・書き出しの一文に意味がある

    ・形容詞、形容動詞、副詞に着目する

    ・間を取るための風景描写や心理描写の挿入。
    一般的に、こうした間の後には重要な発言が控えている。



    など、たくさんの書く側の配慮を知ることができた。このようなタイプの本は初めて読んだので、このように書く側からのテクニックを知って、もっと深く小説を味わいたいと思った。

    (以下引用)
    小説というのは、マジックミラーのようなものである。しっかりと目を凝らせば、向こう側に作者が見えるかもしれない。しかし同時に、そこに映し出された自分自身を見てしまうのかもしれない。

  • 「先へ、先へ」より「奥へ、奥へ」

    平野啓一郎さんのいう本の読み方はその通りだと思う。SNS全盛の今こそこういうアプローチは身につけたい。

    実践編を読んだら、自分が大学受験の現代でやぅてきたやり方とそっくり。平野さんとほぼ同世代なので、なんとなくこう考えるひとが多いのかな?と感じた。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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