生かされて。 (PHP文庫 い 63-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569672571

作品紹介・あらすじ

1994年、「永遠の春」と呼ばれたルワンダで大量虐殺が起こった。人口比9割のフツ族が突如ツチ族に襲いかかり、100日間で100万人の人々を殺したのだ。牧師の家の狭いトイレに7人の女性と身を隠した著者は、迫り来る恐怖と空腹に負けず、奇跡的に生き延びた。祈りの力によって、希望の光を灯したその後の彼女は、虐殺者たちをも許す境地に達する…。心揺さぶる感動の書、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 中学の夏休みの読書感想文で、この本を手に取り、その当時の私史上では最長の長篇作品だったと思う。
    アフリカの小さな国、ルワンダで起きたフツとツチの民族紛争(大虐殺)を生き抜いた女性の手記。
    本作を通して初めてルワンダの悲劇を知り、世界史に興味を持つようになったきっかけとも言える作品。

  • 1994年、ルワンダ。「永遠の春の国」と呼ばれる美しい国は、人口比84%を占める多数派のフツ族による少数派のツチ族への大量虐殺により壊滅的な打撃を受けた。
    昨日まで仲がよかった隣人が、友が、「ゴキブリを皆殺しにしろ」と口々に叫び、大鉈、ナイフ、槍を手に100日間で80万とも100万とも言われるツチ族と穏健派のフツ族を殺した。
    殺戮者となったフツ族の、隣人や友人へ向けられる異常なまでの殺意は恐怖でしかない。植民地時代の宗主国ベルギーのツチ族優遇政策や、フランスによるフツ族への武器供与、国連の介入失敗など様々な要因が伝えられるが、こんなにも残虐なジェノサイドが、ほんの25年前、平成の時代に起こったということに衝撃を受ける。

    作者のイマキュレーは大虐殺で、隣国に留学中の兄以外の父母兄弟をすべて喪い、自らも何度も命の危険にさらされながら、教会の狭いトイレに何人もの女性たちと匿われなんとか生き延びた。
    この作品は、ルワンダの歴史や大虐殺そのものを描くために描かれてはいない。極限を生き抜き、家族を殺されたイマキュレーが、信仰のなかでいかに殺戮者への憎しみを克服し、許しの気持ちを得たのかを描く長い信仰の書である。

    死を覚悟した過酷な状況下でも絶えず神に祈り、希望を失わず、そのために自分ができることをしようとする彼女の強さ。憎しみと許しの狭間で苦悩しながら、救助された後、父母を殺した殺戮者と対面した時の「許し」のシーンは鳥肌が立つ。

    ルワンダは部族間の差別撤回を打ち出した政府が、国の再建を果たしているが、殺戮で捕らえられ刑務所にいる人たちが、町や村に戻って来始めている。憎しみ、復讐、反撃・・・と暴力の連鎖が危ぶまれる今こそ、許しが必要だとイマキュレーは訴える。
    憎しみを抱えたまま生き、その苦悩に押しつぶされそうになっている生き残りたち。憎しみは暴力の連鎖を生むということ。許し、希望を持つことが生きることの意味を与えてくれること。イマキュレーは国連で働きながら、虐殺によって傷ついた心を癒すレッスンを行っている。
    ルワンダに起こったことは、世界のどこでも起こることだから、ルワンダを癒すことは世界を癒すことであると。

    宗教にも信仰にも薄い日本では、イマキュレーの考え方は受け入れられないかもしれない。だけど、確実に言えることは、憎しみからは憎しみしか、暴力からは暴力しか生まれないということ。
    自分の中に深く分け入っていく体験ができた作品でした。

  • 強烈な本を読まされてしまった。午前、午後を使って、
    あっと言う間に読んでしまった。
    邦題は「生かされて。」原題は「LEFT TO TELL 
    Discovering God Amidst  the Rwandan Holocaust」
    奇跡の書と言っていいと思う。生きていることの不思議
    さや、人間の限りない可能性をずっしりと思い
    知らされた。

    〔本から〕
    私は、何時間もたった一つの言葉の意味を考え続け
    ました。「救い」「信仰」「希望」・・・。また
    何日も、「ゆだねる」という言葉の意味を考え続け、
    自我より高い存在のつからにゆだねるということが
    何を意味するのかわかりました。

  • 1990年代にルワンダで起こった大虐殺を生き抜いた女性の話。
    植民地時代に虐げられてきたフツ族が、大統領の暗殺をきっかけに、少数派のツチ族の虐殺をはじめ、ツチ族であった女性は兄以外の家族を全員失う。

    虐殺をしたフツ族は、殺人を楽しんでいる様子の者も多くいたようだが、なぜこんなことをできる人が大勢いたのか。民族や人種、バックグラウンドが全く異なる人達であるということを考慮しても、到底理解できない。

    主人公は、自分の家族を殺した男と面会し、その男を許すことで、悲しみ、憎しみを克服する。
    それはカトリックを信仰し、思考を深めた主人公だからできたことであり、多分普通の人はできないだろう。限界状態において拠り所となる信仰の価値を認識させられた。

  • ルワンダの内紛を生き延びた女性の体験談。
    同じ村の中で暮らすツチ族とフツ族の争い。
    なぜ地域紛争は起こるのか?
    顔見知りの隣人同士がある日を境に、殺さなければ殺される関係になる。
    ひとりひとりの人間の知恵が試されている。

  • 確か2008年頃読みました
    細かな詳細は覚えていませんが、現在の私の生き方の根本的な考え方を教えてもらった私にとっては大切な本です。

    信仰心とは やみくもに信じるということではなく、
    前向きに、プラスに考えること ということを 作者の壮絶な実体験から理解させてもらうことができました。

    信仰心 神 宗教 など 興味ない人はもちろん、すでに信仰心厚い人にも読んでいただきたい。

    この本により、私は神社や教会に神はいないと確信しました。きっと神社や教会へ行く人々それぞれの中に神がいるんでしょうね

  • 理不尽な大量虐殺、その中で両親・兄弟を殺戮され、いつ自分が殺されるかもしれないという極限状況の下、全霊を捧げた信仰心で絶望の淵から脱出を果たした主人公の実話。

  • 教員のオススメ(母性)
    図書室だより夏号(2017年)掲載

  • ルワンダの大虐殺を生き延びた女性による手記。歴史的にもフツ族とツチ族は殺戮を繰り返してきたが、1994年の大虐殺では、100日間で国民の20%にあたる100万人(主にツチ族)が虐殺された。著者の両親と兄と弟もツチ族というだけで無残に殺されてしまったが、著者はフツ族の神父の家のトイレに8人で3か月も隠れ、逃れた。
    同じ国の民族同士で殺しあう背景は、以前ベルギーの植民地だった時に、ツチ族が優遇されたのが嫉妬の背景と本書には書いてある。
    絶望の中で、他の女性を膝に座らせるほどの狭い場所で、著者はひたすら神に家族の無事を祈り続けた。が、解放された時には家族はすでに殺されてしまったことを知る。怒りや憎しみに苦しむが、神に赦し方を問う。本書はこの自分の家族を殺した人を赦すにいたる、著者の心の変化がテーマとなっている。そして、最後に両親を殺した人と面会する場面は感動的だ。
    虐殺の描写が苦しくて、読み進められない。著者が今は外国で自分の家族を作り、幸せに暮らしているのが救いである。

  • 祈り続けること。信じ切ること。

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