大地の咆哮 元上海総領事が見た中国

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569652344

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  • 故・杉本上海総領事の遺作。前半は、外交官としてのキャリアに連動した物語、後半は、ODA、水、農村、反日などのトピック毎の記述。

    特に前半部の職歴と併せて書かれている部分、文革時の中国の実態や日中平和友好条約から胡耀邦時代の蜜月時代、OECDから見た天安門事件前後の欧州と日本の立ち位置などは現在に至る前史として極めて興味深かった。後半の諸問題は、胡錦濤時代の冒頭に書かれたもの。全てが現在に連なっているわけではないが、現在を見る上での一つのスケールにはなる。

  • 中国はどこへ行くのか。約30年間、中国外交の第一線で活躍した元上海総領事が、知られざる大国の実態と問題点を詳細に分析した書。(出版社HPより)

    ★☆工学分館の所蔵はこちら→
    https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=TT21558550

  • 文庫もあるよ

  • 読んでおいて損はない

  • 北朝鮮のミサイル発射とその後の顛末を見るにつけ、中国の動きがなんか変に感じられる。あの国は何を考えているのか?

    ということで「中国農民調査」(今読んでいる)とこの本を同時に買った。客観的な現状やこれまでの経緯など認識を新たにすることも多かったが、中国に関するものを読んで共通して感じるのは中国の「性根」に対しての違和感だ。

    日本人は原理主義でないが、中国人はそれに輪をかけて原理主義でない気がする。原理主義を賛美する気は毛頭ないが、人々の気持ちを束ねる共通の価値観は必要だ。かつて中国では儒教がこの国の良識を束ねていたように思う。やがて原理主義者の西洋人たちがやってきてこの国をむさぼりつくす。日本はそのときどういうポジションだったのか微妙だ。我が国は、前半は必死で列強に飲み込まれないように抵抗した。しかし後半は独自の原理主義が芽生え出し、はなはだ醜い振舞いになっていったのではないかと思う。原理主義はこうして眺めてみると、それを押し付けられる側にとっては大変迷惑なものとなる。

    中国という国はなにせ大きすぎる。共産党が国を制し一党独裁体制を築いたとしてもそのピラミッド構造の末端はまるで昔のままだ。中国の三農問題(農業、農民、農村の問題)でも明らかなように未だに中国ではとんでもない「悪代官」がいて農民からむちゃくちゃな搾取を行っているらしい。地方の共産党員の悪行三昧に比べると水戸黄門に出てくる悪代官などむしろ善人に思えてくる。これは3000年延々と続いてきたどうしようもない中国の性根のように思えてくる。それはどうも日本とはどうしても異なるもののようだ。

    これからこの隣国とどうつきあっていくのかやはり考える必要がある。ある時はかつての被害者であり、経済のパートナーであり、軍事的脅威であり…といったいくつもの位置づけが出来る。そういった位置関係を認識しつつ、双方の文化・習慣・性格の違いをはっきり理解した上で、ある程度距離を置いて、また適度のリスペクトをはらいつつ接していくしかないようだ。外交というのは歴史を作っていくようなものかもしれない。従って一足飛びには事は進展しない。50年、100年のスパンでものを眺めるような姿勢が必要なのだろう。だから一つ一つの「事件」にのみ触発されるような性急な動きはやはり避けるべきだ。

  • 3

  • 中国という国を外交官という立場から、長い時間をかけ、様々な角度から考察した本だと思う。外交官という仕事も少しわかったように思う。ただ昨今の中国という国を見るに、少し期待値が高すぎるようにも思える。

    巻末における中国人に問われる一般的な日本に対する質問兼回答集は、何をするのであれ、中国という国に一定以上居る人は知っておいた方がいいだろうと思う。

    2016年10月再読
    やはり著者が病床にて書いたとは思えぬ力作だと思った。とはいえ、北京に1年以上滞在してから読み返してみても思うのは、果たしてそこまでこの国の指導者に期待する事が出来るのかどうか疑問だ。この国に対して説得力のない理屈で攻めても仕方ないとの明記があったが、確かにその通りとはいえ、その理屈自体がこの国にしか通用しないものではないのか?また靖国問題に関しても、72年に軍国主義を悪者としたロジックがA級戦犯を合祀したことで崩れたとのことだが、色々な意味で強権を発動する事が出来る一党独裁のこの国であれば解決することは可能なのではないか?それをしないのはカードとして残しておくためではないのかと思える。また姫鵬飛外相の回顧録”飲水不忘掘井人”にて国境正常化時に大変な迷惑をかけたという謝罪の意味を込めた分を”添了麻煩”と訳し、中国側が色めきだったこと、その後誤解を解き、謝罪の意味であると認識してもらったことが書いてあるというのは非常に興味深い。

  • 昔の中国の記述があって面白いです。没有中国、なんて今すっかり言わなくなったもんな…。
    10年くらい前の中国の状況が詳細に描かれていて、現在の習政権の動きと線でつながる感じがぞくっとします。

  • 自分もそうだったが、ある国に3年も駐在していると、そこに住んで働いているからこそ語れるその国に関するウンチクが増えてくる。でも所詮それは自分の仕事の切り口を通じて得た話。
    著者は外交官という、中国と「国と国との付き合い」をすることが仕事の人である。当たり前だが、私のような民間人(外務省の人がよく使う言葉)や、学者、ジャーナリストが語る「国と国の付き合い方」とは、体験する現場も違うし、なによりそのテーマを四六時中考え、且つ実行することが生業だった人。そうゆう意味で他書とはまったく異なるインパクとが有る。
    中国という国を相手にするには、これほどまでに、頭の中を整理しておかないと、ダメなんだろうなと感じる。また、このように整然と論点を整理し、発言できる人材を日本はもっと数多く配することも必要だろうとも。
    あと、役人(外交官)以外のもう一つの外交の当事者=政治家も、しっかり勉強してから行動してほしいと改めて感じさせられた一冊。

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