盗まれる大学:中国スパイと機密漏洩

  • 原書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562054381

作品紹介・あらすじ

ピュリッツァー賞ジャーナリストが綿密な取材によって描きだした「大学と情報機関」の密接な関係、スパイ養成とリクルートの現実。スパイ目的で入学する外国人留学生や資金援助による研究機関への浸透など、驚愕の事実が判明する。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の題名からは、いかにも米国の大学に跋扈する中国人スパイという印象を受けるが、本書ではむしろFBIやCIAといった米国内の情報機関が同国内の大学に対して、様々な便宜提供の圧力を掛ける姿が描かれる。

    結局、国益を毀損することを極力排除しようとすれば、いわゆるインテリジェンスの活動は避けられないということなのだろう。

  • 【232冊目】とても面白くて、この分厚さの本にしてはほぼ一気読みと言って良いぐらいのスピードで読了。前半は、アメリカの大学が技術流出やアメリカ人協力者リクルートの場として、外国諜報機関のターゲットになっているという話。そして後半は、同じくアメリカの大学が、アメリカの諜報機関による外国人協力者リクルートの場となっているというもの。

     こうしたアメリカのルポルタージュにありがちな文体で、登場人物やエピソードがページをまたいで登場するために、散漫な印象は拭えない(これは、「中国スパイ秘録」でも同じだった。)。ただまぁ、慣れればそれも問題なくなった。

     大学という場や大学生が諜報機関の活動に対して脆弱だというのは、自分が留学していたときにもはっきりと感じていた。学問というのが知の交流によって生まれるものであるからオープンさが欠かせないこと、かつて学生運動が盛んだった時代に大学と諜報機関の間の溝が深まったこと、研究資金獲得のために外部資金提供者へのアピールや外国人留学生獲得に乗り出さざるをえないことなどが理由として挙げられる。そして、同じことは本書の中でもしっかりと記載されている。

     筆者による提案は、自国諜報機関によるキャンパスでの活動を黙認(あるいは助長)する一部の大学の態度は、学問の自由や学生が安心して過ごせる環境を侵害していることから抑制しなければならないとする一方、外国諜報機関に対抗するため、学生に知的財産法を学ばせたり、スパイの危険性を学生に周知させるべきだと主張する。

     果たしてそうした活動によってどれだけキャンパスを守ることができるのか若干疑問ではあるし、日本の大学について言えばいまだ学生運動時代の閉鎖性を保っているような気もする(日本には9.11のような、大学と捜査機関の関係を見直すきっかけが無かった。)。ただ、帯に書いてある「日本でも他人事ではない大学の実態」という文言には共感。

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