- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784562049356
作品紹介・あらすじ
誰もが石原慎太郎を知っている。
しかし小説家としての彼は、そして戦後史に彼が残した功罪は、どれほど知られているだろう?
知られざる膨大な作品群を読み解き、その真価と業績を徹底討論!
戦後史のダークマターの正体解明!
感想・レビュー・書評
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正直一冊全部読み終えるとは思ってなかった。だって石原慎太郎だよ?トヨザキ社長の罵倒が面白そうなところだけをつまみ読みするつもりで読み出したら、なんとまあ面白いのなんの。こんなに「語るに足る」小説を、こんなにたくさん書いているなんて知らなかったなあ。
私は一冊も読んだことがないけれど、とてもいい作品があったりするらしい。「宿敵」と自認する豊崎さんが(イヤイヤながら)認めるんだから、間違いなかろう。渋々対談企画を引き受けたという豊崎さんが、丸一年十二回もの公開対談を終えたら、「もっと多くの作品をフォローすべきだったか」とまで思うようになったとは、慎太郎恐るべし。
もちろん、トンデモ作ももれなくあって、本当にシンちゃんって空前絶後の人だ。これだけ有名で、これだけ突っ込みどころ満載で。政治家として、また、芥川賞選考委員としての暴言妄言の数々に加えて、トヨザキ社長が「てにをはヌーヴォーロマン」と名付けるめちゃくちゃな悪文を書いて恬として恥じない姿は、ある種の潔ささえ感じさせる…ような気がしてきたりして、なんか悔しい。
石原氏は橋下徹氏と二人で維新の会の共同代表をしているが、私は、このお二方の政治的主張も、言動から窺い知るかぎりでの人間性も、大嫌いだ。ただ、この二人から受ける印象にはかなり違うものがあると思っていたが、本書を読んで、それがなんなのかわかった。センセーションを巻き起こした石原氏のデビュー作「太陽の季節」について、当時中村光夫が、「(『太陽の季節』の大げささは)読者ウケを狙った意識的な媚態ではなくて、作者の性格に根ざす虚飾だ」と述べたことを、豊崎さんは「慎太郎の本質をすでにして見抜いています」と語っている。なるほど、これだ!石原氏は「ああいう人」なのであり、橋下氏は「ウケを狙う人」なのだ。やっぱりどっちも嫌いだけどさ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
誰が読んでいるのかほとんどわからない、石原慎太郎の小説を一年かけてあえて読んでみようという企画。文章はひどいし内容は滅茶苦茶だし、推敲もろくにしていないような書き飛ばしのゴミの中にも、ごくまれに光るものがあるという「発見」を、石原大嫌いの豊崎氏がやっているのがおもしろい。(いないと思うが)研究者にもかなり役立つ本になっていると思う。本自体も誤植がほとんどなく、丁寧につくられている。
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石原慎太郎は好きじゃない。いや、嫌いだ。いや、大嫌いと言ってもいい。あんな奴に投票した人とは到底仲良くなれない。そしてトヨザキ社長はアンチ慎太郎の急先鋒だと思っていたので本の元になったイベントを知った時にはびっくりした。怖いもの見たさで伺いたかったものの都合がつかず、気づいた時には書籍化されていたので飛びつきました。
いやあ、なんというかエネルギーに当てられますね。
あんな大雑把な奴と小説というものがどうも結びつかなかったんだけど、なるほど日本語メチャクチャ(文学的試みと言えないこともないのか)ながら勢いで読ませる芸風なんですな。
そして文学賞が想像以上に時代性を重視するということもよくわかりました。確かに登場したときは鮮烈だったんだろうな、と(あらためて選考した企画さいこう)。
トヨザキ社長がしぶしぶ認める一幕もあったりして、読み進むうちに慎太郎の本を手にとってみたくなる、これでもうこの企画は勝利だなーと思いました。
イベント、行けばよかったな。 -
文学
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先生、作品と作家の関係性って何ですか?
あなたは子どもに聞かれたら答えることができますか…
この本にはその答えがちょっち載っています。
作家であり、政治家である石原慎太郎。
石原慎太郎を知っている人も知らない人も興味の無い人も、必見の一冊です。(Y) -
面白くて情報満載で良い本だった。チャラい見た目なのに中身は真面目というか。
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石原慎太郎の著書を数冊でも読んでいれば楽しく読めたかな。そもそも石原慎太郎を読んでみる気のない私が読むべき本ではなかったかも。
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催事での対談を収録したものなのでやむを得ない部分はあるが、はしゃぎすぎコメントはいささか軽薄で鼻白む。一読者の読後感として読めばいいだろう。
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今となっては作家であるということも忘れられつつある石原慎太郎だが、実は戦後日本の文学史に多大なインパクトを与えた人物だった(寺山修司が石原慎太郎に憧れてたとかビックリ!)。しかも「非常識なほどに」多作で早書き!評論家の栗原裕一郎と読書の達人トヨザキ社長が12回にわたってその膨大な作品を読み込んで繰り広げたトークの記録。自分でこれだけ読むの大変なのでありがたい。20代の沢木耕太郎が石原慎太郎を取材して書いたテキストが言及されるあたりは声を上げて笑ってしまった。いやーおもしろかった。でも読みたくなったのは深沢七郎のほうだな(笑)
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荻窪にあるベルベットサンで10回に渡って開催された「石原慎太郎作品を読む」イベントの書籍化。暴走老人のイメージしかなかった人だったけれど、信じられないくらいの(駄作を含めて)作品を生み出している偉大な作家であることを今一度確認できた。豊崎由美先生のズバッと切るコメントに笑い、栗原先生の知識に唸ること多く、これはちゃんと石原作品を読んでおかないとと思いました。こういった面白イベント、是非書籍化と同時にポットキャストとして販売して頂けるといいのになぁと思う今日この頃。大変面白い文学研究本としてオススメです。