ファインダー越しの3.11

著者 :
  • 原書房
4.44
  • (32)
  • (24)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 187
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562047581

作品紹介・あらすじ

被災した故郷、見えない恐怖、子どもたちの笑顔にシャッターを切りながら3人のフォトジャーナリストはファインダーの向こうに何を見ていたのか。東日本大震災を通じて、写真を撮る意味、残す意義を考える。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 3人のフォトジャーナリストによる東日本大震災の記録…。安田菜津紀さん、佐藤慧さん、渋谷敦忘さんは、海外におられたが震災の報を知り帰国され、フォトジャーナリストとしてできることを模索しながらカメラを構える…。

    安田菜津紀さんは、陸前高田市に入り小学校の入学式の写真を撮ったり、被災地に残された写真の修復作業を行ったり、被災した子供たちにむけて写真教室を開いたりと活動されています。そこにはまぶしいくらいの子供たちの笑顔があったけれど、その心の奥には大切な人を亡くした悲しみにも満ちていることを知ります。でも私はそこまででよかったんだと感じます。一時でも悲しみより素敵な笑顔いっぱい引き出せたのだから…。

    佐藤慧さんは、陸前高田市に住んでおられたお母さまを震災で亡くします…。行方のわからないお母さまを探して、身元不明で安置されている遺体を確認していきます。見つかったのは震災から約1カ月後…遺体は傷んでいて目をそむけたくなるほどでしたが、そこには確かにお母さまの面影があって、思い出が走馬灯のように頭に浮かび、お母さまの死を受け入れることができました。被災地に咲く花が、なんとも悲しくそして健気で美しい…お母さまへの、いえ、震災で犠牲になったすべての方への供花にふさわしいと感じました。

    渋谷敦忘さんは気仙沼から陸前高田、その後福島に向かい取材をしています。原発事故後の福島は他の被災地とは異なり、支援の手が行き届いていない現状がありました。そんな中でも地元の消防団は大切な家族を探すための活動を続けていました。そんな消防団のメンバーを撮った写真が掲載されており、見て心が熱くなりました。

    震災から12年…まだ行方のわからない方もいます。他人事ではなく自分事として、何を備え、何をしたらいいか、立ち止まって考えるためにも当時の記録は必要ですよね!

  • 経験したことのない災害の時に、あるいは自分や知人の家族が行方不明の時に、カメラを構えるということがどんな意味を持つのか・・・。報道写真を撮るとき避けては通れない問いに、三者三様に向き合っている。
    一度は静観しようとしても、撮ることが自分にできる一番のことだと思い至ればこそ、迷いを抱えながらもカメラを構える。その心の動きが手に取るように感じられた。
    今日の光景は明日にはない、とカメラマンを叱咤する言葉が印象的。
    報道写真の意義はなによりも「記録」して後々に残し、伝えることだ。言葉だけでは伝わらないものはいくらでもある。

  • 想像をこえた出来事に直面した時、人はそれにどう向き合うか。

    記録として残さねば、残したい。でも、目の前の困り果て、疲れ果てている人々を前に、悩む。カメラを向けることを。

    それでも、悩みながら、自問自答しながらそれぞれのできることをやり通した、三者三様の選んだ道。

    写真は撮っておいたほうがいい。それが忘れてはいけないものであればあるほど。そして、日常の何気ないものでも。その写真が、いつか人を慰め、勇気づけることもあるのだから。

  • 3人のジャーナリストが写真と文章で記録した東日本大震災。

    震災の現場で被災した人にカメラを向けること、報道すること、記録として残すこと、色んな思いが込められている。
    被災地にいた人達の溢れんばかりの想いに涙が出た。被災した人の気持ちを、被災していない人間が共有することはきっとない。でも知って、考えて、自分にできることをやろう。

  • 8月1日より『東日本大震災 3.11以降の全出版記録「本の力」展が開催されます。キハラ株式会社
    「日本出版クラブ会館に、3.11以降、2年間に出版された東日本大震災に関わる本を、出版各社の協力のもと、一堂に集めます。夏休みを迎えた東京・神楽坂に、改めて私たちが被災地に心を寄せる空間を創ります。

    また、1Fローズラウンジでは併催イベントとして、
    「陸前高田2013~今日まで、そして未来へ~安田菜津紀写真展」も開催されます。
    是非、ご来場ください。」

    会期:2013年8月1日(木)~8月11日(日) 10時~20時
    会場:日本出版クラブ会館 3階 鳳凰の間 (東京都新宿区袋町6)
    入場無料
    https://www.kihara-lib.co.jp/news/bookpower.htm

    東日本大震災 全出版記録「本の力」 全国巡回まず東京で1400点展示 - MSN産経ニュース
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/130805/bks13080507570000-n1.htm

    原書房のPR
    「被災した故郷、放射線の見えない恐怖、
    子どもたちの笑顔にシャッターを切りながら、3人の気鋭のフォトジャーナリストたちは、ファインダーの向こうに何を見ていたのか。
    東日本大震災を通じて、写真を撮る意味、残す意義を考える。」

  • 佐藤けいさんの話を伺う機会が高校3年の時にあった。その時のお話は「共感力」というお話。正直な話、その時にはあまりピンとこなくて、でも、けいさんが震災について、家族について、生と死について講演した後にぐったりした様子をすごく覚えていた。
    その半年後、私の地元が九州北部大洪水の被害にあい、小学生の頃遊んでいた場所の被害を見て、うまく言えないけど、複雑な気持ちになった。そして、その時にけいさんのお父さんが撮影された病院からの写真のことを思い出した。その日からバイトして、お金をためて、岩手に行くことを決めた。その年の秋にはたまたま安田さんの講演会とその後の交流会に参加させていただく機会もあり、私はますます岩手に行く気持ちを強くした。
    ようやっと、岩手の陸前高田に行けたのは今年の2月。もう震災からは2年になるような時だった。しかし、私たちからすると、もう。でも、現地の人からすると、まだ2年。岩手であるおばあちゃんに言われたのが「私は生きてちゃいかんのです。こうやって、みんなの足手まといになってしまう。生き延びちゃいかんかったのです。」という言葉だった。でも、そのおばあちゃんがいるから、その家族はそのおばあちゃんのために!っていう力で色々なことにチャレンジしてた。私も小学生の頃、突然死で弟を失い、その時は同じように何も役に立たない私が生きてて、みんなを笑顔にしてた弟が死ぬなんておかしい。なんで、私じゃないんだろう?って、めっちゃ思ったけど、おばあちゃんと家族の姿を見て、10年以上たった今、勇気を貰ったような気がした。1枚の写真から始まって、岩手で色々な出会いがあって、考えることも感じることも沢山あって、写真の力って凄いな〜と思った。この本を書いてらっしゃる3人の方はみなさん、違うことを感じて、この本を書いていて、でも、全部本気で全力で書いているから読む方もかなり大変…
    1回読んだだけじゃ、この3人の気持ちに本当に触れることはできないんだろうなーって、読み終わった時に思った。渋谷さんとはお会いしたことないけど、人間の弱いところも含めて正直に全部書ける強さや自分にないかっこよさを感じた。この本を何度も読んで、また著者のみなさんにいつかもう1度お会いしたい。
    また、けいさんのユニークな写真、なつきさんの笑顔の写真、大好きなので、写真展にも行きたいなぁー\(^o^)/

  • 私は本当に被災地のこと、被災された人のことをわかっていなかったんだ、そう思わされた一冊でした。カメラを通して三人のジャーナリストが見つめた3.11。カメラを向けることへの悩み、自分にできることは…震災から時間がたった今だからこそたくさんの人に読んでもらいたいです。

  • 震災の時、ぼくには力が無かった。
    世界や日本という世間とぼくに距離があった。自分の底にある想いを知る力が無かった。アクションに繋がるあらゆるものが欠けていた、という事。
    現実を受け止め生を燃やす、力が無かったのだ。
    あれから三年以上が経ち、少しは大きくなれただろうか。

    こうする
    ①人として、の事をする。
    ②社会の中での役割をこなす。
    ③ツールを磨く。

  • 三者とも誠実。だからこそ答えはここにない。ある種の分かりやすさは、危険ですらあることを再確認した。

    シャッターを押すとはなんと重い行為なのか。そして、それは正しい。

    ・目の前で繰り広げられる「死」についてきちんと考えることの必要性を感じていた。
    ・がんばれ、とは言えない。負けるな、とも違う。かける言葉がどうにも見つからないまま、こう思い至った。結局のところ、君の悲しみはどこまでいっても君だけのものなのだ。でも、このまま君が歩くなら、僕も歩こう。君が疲れたなら、僕も一緒に休もう。今はただ自分の思うように精一杯生きてみたらいい。
    ・今日のご飯は贅沢ですねと調理班の女性に言うと、「ここの食事は毎日ごちそうです」と返ってきた。
    ・「財産も仕事も失ったけど家族が無事だった人は、家は残ったけど家族を失った人にどう声をかけたらいいかわからない。わからないけど、みんなお互いを気遣っているのはわかる。一緒に焚き火したり、寝食を共にしたりしているとね、一人じゃないって思えるもんだね」

  • フォトジャーナリストの3名が文章と写真で綴った「3.11」。

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1987年神奈川県生まれ。フォトジャーナリスト。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国籍と遺書、兄への手紙―ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ)他。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

「2024年 『それはわたしが外国人だから?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安田菜津紀の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×