- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784562047574
作品紹介・あらすじ
19世紀、中国がひた隠ししてきた茶の製法とタネを入手するため、英国人凄腕プラントハンター/ロバート・フォーチュンが中国奥地に潜入…。アヘン戦争直後の激動の時代を背景に、ミステリアスな紅茶の歴史を描いた、面白さ抜群の歴史ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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アヘン戦争後、英国には、中国からの輸入に頼っていた紅茶をインドで生産したいという野望があった。
そこで、東インド会社から、中国の茶の木を盗み出す任務を与えられたのが、プラントハンターのロバート・フォーチュン。
彼は、辮髪をして中国人に変装、当時西洋人が踏み込んだことのなかった中国奥地に入る。彼が手に入れた茶の木の苗と種は、インドに根付く。
英国へ安く供給できるようになった紅茶にミルクと砂糖を入れることで、貧困層の安価な栄養補給となり、それまで労働者の飲んでいたビールに代わることで、労働力を上げ、産業革命の原動力となった。
紅茶という嗜好品が世界を変える、このストーリーは面白く興味深いものの、この本自体は読みすすめるワクワク感がない。それは、単に事実を並べるだけで教科書的すぎて、ぐっと物語へと引き込むような力が不足しているから。
紀行文的な部分と世界状況の説明、そのまとめ方がうまくいってないので、どうも読みにくい。
地図、図版、年表、英国の紅茶の消費量の変遷のグラフなどの補足資料があればもっとわかりやすかったのに。
紅茶と緑茶は同じ木である、ということは説明されているものの、その違いは何なのか、というのが説明されてないのは不親切。
他にも、紅茶と緑茶は同じ木であるのに「当時、インドには紅茶畑はなく、緑茶畑しかなかった。」などという記述があり混乱する。(インドには、紅茶に適した茶の木ではなく、緑茶に適した茶の木しかなかったということか?)
せっかくのおもしろい題材なのになぁ、残念な感じ・・・。
ここでも謎だったのが、茶の歴史の本に必ず出てくる「ボヒー茶」(bohea tea)の存在。これは烏龍茶なのか紅茶なのか?
1772年のレットサムの「茶の博物誌」によれば、「茶の種類は、大きく分けて3種類の緑茶と5種類のボヒー茶に限られる」とあったりする。ということは、ボヒー茶が改良されて紅茶になったのか? もっと調べてみたいとこ。
あと、帯では「19世紀、中国がひた隠しにしてきた茶の製法とタネを入手するため、」とあるがこれは間違い。
「茶の博物誌」にも英国で種が発芽したとあり、茶の精製についても詳しく書かれており、ヨーロッパの葉っぱを茶にする試みもされている。
原題「 FOR ALL THE TEA IN CHINA How England Stole the World's Favorite Drink and Changed History 」を「紅茶スパイ」というキャッチーなタイトルにして、「アヘン戦争直後の激動の時代を背景に、ミステリアな紅茶の歴史を描いた、面白さ抜群の歴史ノンフィクション!」というおもいっきり盛った帯をつけ、新聞各紙の書評担当の目に止まるようにした編集者の勝ち。
参考
「茶の博物誌」(ジョン・コークレイ・レットサム)
http://booklog.jp/item/1/4061595768
香港大学の図書館のHPにあるロバート・フォーチュンの中国の旅行記
http://ebook.lib.hku.hk/CTWE/B36598719V1/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白い。
紅茶は世界すら動かす。
アヘン戦争もアメリカ独立も裏には紅茶があるということを知らない方が多い。
ロバートフォーチュンにもう一度会いたい。-
「もう一度会いたい。 」
アリス・M. コーツの「プラントハンター東洋を駆ける」(八坂書房)にも当然出てきますヨ!
って、そう言う話じゃない...「もう一度会いたい。 」
アリス・M. コーツの「プラントハンター東洋を駆ける」(八坂書房)にも当然出てきますヨ!
って、そう言う話じゃないか、、、2013/05/28
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アヘン戦争後の1845年から1852年までの間の英国人プラントハンター、ロバート・フォーチュンの活躍、中国からチャノキを盗み出し、インドで栽培に成功するまでを著す。
イギリスの海外進出とともに、イギリスには喫茶の文化が根付いていた。茶はすべて中国(清)から輸入していたが、清王朝は日本以上の鎖国政策を敷いており、その栽培・精製方法はイギリス人には未知だった。ますます喫茶の文化が根付くイギリスは、茶を清から輸入せねばならない。その代金として、当時既にインドを支配しつつあったイギリスは、インドで生産したアヘンを清に売り、その代金で清から茶を輸入していた。
アヘン戦争の代償として、中国は広東、上海等5港を開港したが、実質、外国人が中国奥地に分け入ることはできなかった。ロバート・フォーチュンは、チャノキと茶の精製方法を盗み出すよう依頼を受け、上海に赴く。通訳ガイド・ワンを雇い、鞭毛をつけて変装し、万里の長城の向こう側の韃靼人のふりをして、中国奥地へと入って行く。当時の中国人は外国人を見たことがなく、万里の長城の向こうから来たと言えば、人々は信じたようだ。
通訳ワンの故郷は茶の産地。そこでチャノキと種子を手に入れることに成功する。チャノキは、ウォードの箱(ガラス製の小さな温室)に入れられ、インドのカルカッタに送られるが、インド側の手違いでガラスケースを途中で開けてしまい、苗木はほとんど腐らせてしまった。上海にいるフォーチュンとインドとの間は手紙でやり取りするしかなく、手紙が往復するのにひどく時間がかかった。再度送るのは1年後となったが、今度は種子を撒いた状態で配送する。途中で芽が出、苗木としてインドに送り届けることに成功した。
フォーチュンが茶を中国からインドを盗み出したことによって、今日、インドのダージリン地方は茶の一大名産地となっている。 -
先に読んだ『仕事に効く教養としての「世界史」』の中で、関連する書籍が何冊か紹介されていました。
その中で特に、「面白そうだな」と感じて書店で探したのが、この作品です。
テーマは「お茶」、時代は19世紀の半ば。
インドの阿片を中国に輸出し、中国の茶を輸入していたイギリス。
この貿易で莫大な富を得ていたイギリスですが、中国との関係は悪化し、「アヘン戦争」へと発展します。
高いお金を払って、敵国から茶を購入することをやめたい、イギリス。
しかし茶の樹、および緑茶・紅茶の製法は、中国の機密として門外不出となっていました。
この状況を打開しようとしたイギリスが中国に送り込んだのが、「プラントハンター」ロバート・フォーチューン。
沿岸部以外にヨーロッパ人が入り込んだことがない中国に潜入し、茶の樹とお茶の製法を入手することを命じられたフォーチューン。
その歴史的な背景と、フォーチューンの活躍が描かれた、ノンフィクションです。
中国の不安定な治安の中で、目立つ姿をした外国人が潜入する危険。
時には活劇的に、フォーチューンの道筋が描写されています。
そして陸送と船しかなかった時代に、植物である茶を運搬することの困難。
お茶の世界的な流通に、このような経緯があったとは、知りませんでした。
そして21世紀の今もなお、紅茶の名産地として真っ先にインドが挙げられる理由も、本書を読んで始めて、理解することが出来ました。
ノンフィクションという分類なのですが、中国国内での旅の描写など、小説として読んでも十分、楽しめる内容になっています。
書店で置かれていたのが、普段あまり立ち入らない、料理本・食材本のコーナー。
「出会うことができてよかったなあ」と、しみじみ感じた一冊でした。 -
イギリスで緑茶が廃れた理由が、中国の茶の原産地に潜入したフォーチュンが合成着色料によって緑に染められていたことを発見し本国に伝えたから、という一点だけでも非常に興味深い。プラントハンターの物語という点では「シャーマンの弟子になった民族植物学者の話」の方がはるかに面白いが、フォーチュンの話は背後に流れる東インド会社、英帝国の歴史と相まって、魅力を増している。茶がいかに世界を変えたか、という歴史を教科書的な話ではなく、血の通った話として知ることができる。
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東インド会社の委託を受けて、中国から茶の苗、種、製法を盗み出したロバート・フォーチュンという男の話。
小説ではないから、ついついページを繰ってしまうという面白さはない。
歴史的な背景の説明をはさみながら記述してあるので、いくらか勉強にはなるかもしれない。
小説だったら主人公となるはずのフォーチュンの描き方が、他人事のような描写に思えるのはノンフィクションであるので仕方ないことかも。
ただ文章として、どうもモタモタ感がある。どうしてかなぁと思って改めて著者名を見たら女だった。女の文章は私にはどうも読みにくいことがある。おまけに訳者も女ときている。
しかしたかが茶とはいえ、これが世界の歴史の動きに連動していたという見地から見ることが出来るというのは面白い。 -
紅茶スパイ、うまいタイトルつけたなぁ。
園芸好き、ミステリ好き、紅茶大好物な自分には題名だけでこの上なく興味惹かれました。
時は19世紀のイギリス、茶、アヘン、銀の三角貿易のバランスが崩れるのを懸念し、茶の本場中国から茶の種苗と製法を盗み出し、英国領インドでの栽培を実現させようと試みた東インド会社から、アヘン戦争後の中国へ派遣されたスコットランド人のプラントハンター、ロバート・フォーチュンの活躍を追った歴史ノンフィクション。
インド紅茶の立役者といえばブルース兄弟が有名だが、こんなに危険を犯した(今なら産業スパイ)フォーチュンの働きは、紅茶が大衆的な飲み物になる上で偉大な功績を遺したと言えよう。
中国内陸部への立ち入りが認められていなかった危険な状況で辮髪姿で変装し、種や苗木を集め、数ヶ月に及ぶ船旅で過酷な環境の中輸送した数々の苦労が偲ばれる。
と同時に当時の大英帝国という支配国の人の傲慢さ、後進国の人々への無理解もよく描かれている。
沢山の文献を元に、フォーチュンの活躍だけでなく当時の紅茶や茶を取り巻く様々な状況…例えばティークリッパーや、各国間の情勢が書かれていて興味深い。 -
新聞の書評で見かけて、面白そうだったので(もともとがプラント・ハンターという人種が大好きだったことでもあり)、即購入。表紙デザインも非常に好み。
現在、紅茶の原産国と言えば真っ先にインドがあげられるわけなのだけど、爾来、茶は中国が生産を独占していたもの。それがどうして海を渡り(当時の航海は非常に時間がかかるため、植物の輸送には不適切であった。というか、植物にやる水があったら人間が飲むし、タネは海水にやられて腐ってしまいますな……)、インドに持ち込まれたのか?
その立役者であるプラントハンター、ロバート・フォーチュンの活動記録を元に描いたノンフィクション。
普通の小説仕立ての本かと思ったけれど、あくまでもドキュメント風にさらっと描かれているので、「大冒険!」「危機、また危機!」な展開を期待して読むと失望するかもしれない。
それ以上に作者が力を入れて描写しているのは、
・ 有用な植物が新しく発見されたり、輸入された際、それらがどれほどの経済効果や、国際情勢の変化を及ぼすか。
・ なぜ、紅茶がこれほどまでに愛飲されるようになったか。
(最初は英吉利でも緑茶が愛飲されていたけれど、そのほうがよく売れるから、と中国側が薬品使って翠に着色していたことが明らかになったから。← どっかで聞いたような話だ……。綺麗な色にホイホイつられるほうも悪いんだけど……)
などなどの、科学的・経済学的な見地からみたあれこれであることがとても面白かった。たかが嗜好品、されど嗜好品。日本人の食生活の変化について、ちょっと考えてみたくもなる一冊。
ちなみに自分は、紅茶ならアッサムが一番です。マスカットフレーバーとか全然わかんないy=ー( ゚д゚)・∵. ターン -
ミニコメント
紅茶は英国のイメージが強いですが、実は緑茶も烏龍茶の全て同じ茶葉から出来ていて、茶の歴史は中国から始まります。中国がひた隠しにしてきた茶の製法と種を入手する為、英国人プラントハンターが暗躍する歴史フィクション。
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https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/539533 -
金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=33086
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB07865511