厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ)

著者 :
  • 原書房
3.45
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本棚登録 : 470
感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562039838

作品紹介・あらすじ

憑き物筋の「黒の家」と「白の家」の対立、「神隠しに遭った」ように消える子供たち、生霊を見て憑かれたと病む少女、厭魅が出たと噂する村人たち、死んだ姉が還って来たと怯える妹、忌み山を侵し恐怖の体験をした少年、得体の知れぬ何かに尾けられる巫女-。そして「僕」が遭遇した、恐るべき怪死を遂げてゆく人々と謎の数々…。奇才が放つ、ミステリーとホラーの禍々しい結晶、ついに昇華。

感想・レビュー・書評

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  • ホラー+ミステリー+民俗学の刀城言耶シリーズ第一作。
    久しぶりの再読…と思っていたが、どうも初読のようだ。

    シリーズ第一作とあってか、少々テンポが悪い。
    言耶が事件現場となる神々櫛(かがくし)村に入るまで三分の一のページ数が過ぎている。その間はこの、名前からして不気味な村の独特の状況や過去に起きた様々な神隠し事件などの前置きが延々と綴られる。
    興味深い点もあるのだが、何とも冗長な気がしてなかなか読み進まなかった。

    だが第一の殺人が起きてからは怒涛の展開。
    何しろ立て続けに五件の殺人事件が起こるのだ。忙しすぎて最後の事件にいたっては簡単な状況説明のみになっている。

    村の状況としては金田一耕助シリーズに似ている。
    閉鎖的で独特の慣習があり、対立する二つの家がある。それぞれには分家もあり屋号もある。
    片方は憑き物を祓う巫女の家系で、産まれるのは必ず双子の娘。さらに彼女たちは漢字こそ違うが皆『サギリ』と名付けられるのでややこしい。
    そして二つの家の間はもちろん婚姻関係は結ばれないのだが、過去にも現在にも禁断の恋愛関係があるようだ。
    さらには顔に酷い傷があるために常に頭巾を被っている正体不明な『黒子』という人物も出てきてワクワクする。

    シリーズ第一作とは言え、その特色は充分に出ている。
    つまり何なのかハッキリ書かれない(それは被害者本人が説明出来ないからでもあるが)掴み所のないホラー的な怖さと、連続殺人事件の実際的な怖さ、そしてこの独特な村の環境による不気味さとが融合しているところだ。

    物語は言耶の視点と巫女・紗霧の視点、そしてこの独特の慣習を打ち破ろうと考える漣三郎の視点を中心に描かれる。だがここにもまた、言耶は余所者でなかなか事件の核心に踏み込めない、紗霧は過去の儀礼の影響からか記憶が曖昧、漣三郎は紗霧の家とは対立している家の者でやはり事件に踏み込めないという、わざともどかしい状況にしてある。

    そして言耶の真骨頂、最後の謎解きも二転三転する。
    個人的には黒子の正体が…というのは期待した展開だったが、結末は想像を遥かに越えていた。ちょっと無理があるのでは…とも思うが、これもまたシリーズの特色か。
    伏線もあってきちんと証を立てられたら恐れ入るしかない。それに最後の最後に再びホラー要素も入れてくれたし。だが過去の神隠しについてはもう少し突っ込んで欲しかったようにも思う。

    第一作ということで祖父江偲も阿武隈川烏も出てこない。彼らが出てくると煩わしいのに、居なければ居ないで寂しい気もするのが不思議。

    ※シリーズ作品
    (★はレビュー登録あり)
    ① 本作 ★
    ②「凶鳥の如き忌むもの」
    ③「首無の如き祟るもの」★
    ④「山魔の如き嗤うもの」
    ⑤「密室の如き籠るもの」(短編集)
    ⑥「水魑の如き沈むもの」★
    ⑦「生霊の如き重るもの」(短編集)★
    ⑧「幽女の如き怨むもの」
    ⑨「碆霊の如き祀るもの」★
    ⑩「魔偶の如き齎すもの」★
    ⑪「忌名の如き贄るもの」★

  • 「首無の如き祟るもの」が面白いと聞き、シリーズで出てるのでどーせなら最初から読んでみよっと思って読んでみました!

    最後のオチはきっとヒエってなるとこなんでしょーけど全体的に怖いよーな、怖くないよーな...

    ちょっとずつ読むせいか人物と情景が掴みにくい感じ
    (・・?)

    次作からは出来るだけ時間作ってある程度一気に読んでみます!
    首無...期待してまふ(´∀`)

  • 夏だ!ホラーだ!
    ・・と、いうことで、表紙が絶妙に怖いこちらに手を出してしまいました。

    怪奇小説家の刀城言耶は“憑きもの信仰”の取材の為、〈神々櫛(かがくし)村〉を訪れます。
    閉鎖的で“カカシ様”という独特な信仰のあるその村で、生霊憑きなど不気味な怪異が起こる中、連続殺人事件が発生して・・・。

    因習にとらわれた閉鎖的な村で起こる怪事件・・というと“横溝正史作品”を思い浮かべる人も多いと思います。
    かく言う私も、横溝作品の“陰の雰囲気”の作品が好きなので、本書もその辺を期待して読みました。
    (余談ですが、横溝作品を読み込んでいる私から、ちょいと言わせていただくと、金田一シリーズは田舎の村より東京(都会)が舞台の話の方が多めなんですけどね・・)

    正直、結構読みづらかったです。
    漢字もムズイし、“憑き物筋”の家と“非憑き物筋”の系統や対立構造、村の怪異や憑き物信仰の民俗学的考察等の所謂“説明”部分が冗長でなかなか進まず(汗)。
    ホラー部分も、“恐怖要素”がギッチギチに詰めてあるような感じで、例えば紗霧や漣三郎が体験する“極限の恐怖”場面も「これは、めちゃめちゃコワイところですよ!!」という事を伝えたいのはわかるし、多分凄い恐ろしい状況なんだろうとも思うのですが、なんせ描写過多なので、読者としては状況を追うのに必死で恐怖を味わう余裕がないという、謎の状態に陥っていました。
    やっぱり、怖さって、心の隙間に“スゥッ”と入ってきた時に寒気を覚えるモノなのだな・・と思いましたね。
    (あ、でも、本筋には直接関係ないですが、漣三郎の知り合いの芫(がん)さんが体験した、山道で謎の子供(の姿をした何者か)に前後から追われるというエピソードはゾッとしました。)
    とはいえ、殺人事件が発生した後の、ミステリ部分については、グイグイ読ませるものがありました。
    次々に起こる怪死、所謂見立て殺人に込められた意味は・・?といった謎解き部分も“蛇多すぎやろ!”とツッコミながらも惹き込まれた私です。
    で、ラストの真相解明部分は二転三転しすぎて、“おいおい!”という気がしないでもなかったですが、「叙述トリック」も絡んで“そう来たか!”と唸らされました。
    (ただ、視点のトリックを逐一確かめる体力は残っていませんでしたがww)

    ま、何だかんだで、民間伝承×ミステリというジャンル自体は好きなんですよね・・。
    因みにこちらは、シリーズ化されていて、本書は第一弾となります。
    噂によると第三弾『首無の如き祟るもの』の評判が良いようなので、とりあえずそこまでは読んでみようかな、と思った次第です。

  • 怪奇幻想作家・刀城言耶が民間伝承蒐集のために訪れた村で、連続怪死事件に巻き込まれる。シリーズ1作目。

    神隠しのように子どもが消える村、憑き物筋の旧家、そして美しい双子の巫女。こういう時代がかったおどろおどろしい雰囲気や、蛇と神の民俗学的解釈は興味深くて好き。
    探偵役の言耶自身が謎解きをしながら、考えをまとめていくため、終盤数十ページで二転三転。最終的にもやもやする部分もあるけれど、どこか含みを持たせたラストはホラー的恐さを煽る。
    ただ、屋敷内の構造や村内の位置関係が分かりにくく、しかもそれが事件に関わってくるため、見取図が欲しかったかな、と。

  • 閉鎖的な村、奇妙な民間信仰、仰々しい村や人の名前…と横溝正史的な雰囲気があふれていて、手にとったとき、ワクワクしました。(以下ネタバレ感想)

    「カカシ様」という神を信仰する村。そこは不思議な神隠しがおこり、恐ろしい体験をする人々がいた。
    代々同じ読みの名前を受け継ぐ双子の巫女のいる一族がそれを奉り、憑き物落としを生業としている。
    と同時にその一族は「憑き物筋」であり、畏怖の念を人々に持たれていた。
    そこに怪奇小説作家・刀城言耶が伝承を聞くために訪れる。
    滞在する村で自殺とも、他殺とも、祟りともとれる事件が起こり、刀城はその調査も兼ねて、この村の成り立ちを探って行く…

    思い出したのは横溝作品以外には、山岸涼子の短編「時じく香の木の実」やゲームの「零」シリーズ。大好きな雰囲気です。
    …でも、とても時間がかかりました。人間関係やまず、読み方を忘れる!人も村の名も(汗)初めのページの人物関係図をいちいちめくって見てましたが、面倒になり、コピーして横に置いて見てました(笑)
    後は勝手に脳内キャスティング!〜の若い頃、とか時を越えたキャスティングです。ちなみに紗霧はくつなしおり(漢字思い出せず)さん、刀城言耶は西島秀俊さんで想像して読みました。
    最後はくるくると変わり、まるで、意地悪なクイズ出題者みたいな感じ?
    問題〜(ピンポーン)…ですがぁ〜問題続く…みたいな感じ)でした。そして最後の最後が…
    このスッキリしない感じがみなさんがおっしゃってた感じなのね、と納得しました。作中で刀城言耶が、不思議な出来事を信じ込んで恐れるすぎるのもいけないが、頭から否定してしまうのも傲慢だ(正確な引用ではありません。どこに書いてあったかな?)、というようなことを言ってましたが、まさにそれを感じるエンディングでした。

    久々に時間がかかる本に出会いました。シリーズをよんでみたいです。

  • 話題作ということで、手にとるが、
    とにかく読みにくい。
    読了して思ったのは、やはり、前半要らないだろ、ということ。

    とにかく、前半が読みにくく、文章もおかしい。
    「こりゃ、ねーわ」と思い、読み進めたが、
    後半で、一気に盛り返す。
    怒涛のドンデン返しである。
    この手のもののパターンとして、
    「ここで終わってくれるなよ」という
    新「説」待ち状態というのがある。
    とりあえずの「解決」が腑に落ちない場合、
    ここで終わるな、もう一押ししろ、と思う。
    しかし、残念ながら、腑に落ちないままに
    「最終解決」が宣言されてしまうことが多い。
    ところが、この作品、「ここで終わるな」という
    期待に答えて、見事に「腑に落ちる解決」まで
    持っていってくれる。
    ここまでされると、評価としても、☆4つ以上を
    付けざるを得ない。
    トリックが小粒になりがちな、連続ドンデン返しパターンの中で、
    本作は、トリックも、しっかりと印象に残るものになっている。
    そこらへんも評価が高い。

    途中までは、法月の「誰彼」を上回る複雑さだが
    (なにしろ双子が3組出てくる)、
    複数ドンデン返しを狙う場合は、こうなってしまうのか、という気がする
    (「誰彼」もたしか複数ドンデン返しだった気がする)。
    論理展開は、ホームズ、クイーンの流れをくむ、
    オーソドックスなもの。
    誰であれば、犯行が可能か(犯行を行える情報を
    持っていたか)という、「論理」面から、ひたすらに、
    真相に迫り、クイーン風の絞り込みで、容疑者がふるいにかけられる。
    伝奇的なので、京極と比較されがちだが、それよりは
    はるかに、オーソドックスで、正統派のミステリーである
    (「うぶめ」なんて、ひどかったし…)
    しかし、薀蓄部分に限れば、さすがに京極の方が面白い。

    黒子というマスクマンが出てきて、犬神家か?とか
    都会に行っているという、一切出てこない人物、
    神隠しにあって失踪した男、儀式の失敗で葬られた少女など、
    いかにも「入れ替わってそう」な人物の数々に、
    「こうではないか?」という推測は次々に浮かぶが、
    これが見事に計算された「ミスリード」であり、丁寧に
    否定されていく。そのたびに、あ、違うのか、と、
    ミステリーに親しんでいるほど、
    はまりやすい罠になっているところが、面白い。

    トリックの分類としては「見えない犯人」もの。
    短編以外では、ほぼ見かけないタイプである
    (それだけ、作る側としては、リアリティを持たせるには
    難易度の高いタイプのトリック)
    有名なバカミスとして、犯人が竹馬に乗っていた、とかあるが。
    「斜め屋敷」が館1つを使ったトリックであれば、
    本作は、村1つを使ったともいえる大仕掛けである。
    このオチに持っていくための、リアリティを出すための、
    粘着的ともいえる、書き込みだったことが分かる。
    もちろん複数犯なんて「何でもアリ」なことはせず、
    いさぎよく単独犯。

    そして結論がここまで腑に落ちるということは、
    着地点をあらかじめ決めた上で、
    途中、何回転させられるか、という方向で試行錯誤しているのであろう。
    ネタの練り込み具合が、半端じゃない、といえる。

  • ミステリーとして楽しむのではなく、横溝正史のような雰囲気をじっとりと感じたい時にお勧め。
    かなり世界観が構築されてあり、その為に舞台の説明にかなりのページ数が取ってあります。
    この辺りがきつい方には読了も出来ない可能性も。

    私は閉鎖された村の独特の風習と言う世界観が好みなのでどっぷりと浸れました。

  • 民俗学・ホラーミステリとでも言うのだろうか。
    カガチ家とカミグシ家の成り立ちをかなり深い部分まで読み解いていたのが印象的だった。

  • 実は真相よりも、黒子うんぬんのダミーで出た推理の方が好きだったなあ、と。結局長男はどうしたんだよ、という疑問が残ってちょっともやっと。

  • 間取りを文字で説明されると頭が痛くなる。この本は状況描写が非常に多いので読むのが疲れました。

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著者プロフィール

三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。

「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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