「その他の外国文学」の翻訳者

制作 : 白水社編集部 
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560098882

作品紹介・あらすじ

翻訳大国日本において「その他」とくくられる言語がある。学習者の少ない言語をあえて学び、広める翻訳者に「その他」の深さを尋ねる。

感想・レビュー・書評

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  • やや読み飛ばしたところもある。

    自分が抱えている読書のテーマが今現在沢山あって、そのテーマに即して読んでいる書籍もあれば、ブクログレビューを拝見して興味を持ち読んでいる書籍もある。
    (後者は主に小説)

    それらは書店で購入したり図書館で借りたりして、常に数冊を並行して読んでいるし、これから読もうとしている本も果てしない。

    そこへ来て、更にまずいことになった。
    本書でまた読みたい本が十数冊増えてしまった。
    特にバスク語、ポルトガル語、チェコ語の作品だ。
    元々ポルトガルとチェコには興味があるので、その国の言語で書かれた作品の翻訳本も読んでみたくなるのは自分でも自然な流れなのだが、本書を読んで一番興味が湧いたのは「バスク語」だ。

    本書の翻訳者が翻訳された作品と、彼らが影響を受けた先駆者達によって翻訳された作品の、あれやこれやを読みたくなった。
    でも私の居住地の図書館になんて、蔵書は無いだろうなと思った。
    ところが検索したら、意外にも結構蔵書が有った。

    またも「これから読みたい本」が増えてしまい、困ったことだ。

    私は本来なら翻訳本は苦手なのだが、苦手でなくなるような翻訳だといいなと期待している。

  • これぞ読書の醍醐味という感じだった。だって、中学校以来数年に渡って学んだはずの英語さえままならず、語学を「あれは、語学の天才がやるもの」として、自分から完全に切り離している私が、翻訳者達数名の自身の体験や、人生の歩みや、その言語への思いをじっくりと読めて、疑似体験できたんだもの。

    「その他の外国文学」と括られるいわゆる(日本では)マイナーな言語の翻訳者9名を取り上げている本書。具体的には、ヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語・・・・
    あぁ、なんてマイナー。しかも、私、外国文学はほとんど読んだことがない。「赤毛のアン」や「若草物語」や「足長おじさん」などの有名児童書(?)くらい。つまり、なじみがない上に、マイナー言語・・・

    だからこそ、私にとって全く知らない世界が広がっていてとても興味深かった。言葉もそうだけれど、その国の文化もあまり知られていないとなると、やはり翻訳するには相当な努力と苦労があるのだなぁとしみじみ感じた。その裏で、「この本を訳したい、知って欲しい」という熱意が溢れていて、読んでいて清々しいというか、その熱量にこちらもわくわくさせられるというか。今でもなかなか手が出ない外国文学だけれど、「読んでみようかな」と素直に思える。

    まだ言語というものの重要性やその文化との関係などが全く理解できていなかった小さい頃、翻訳なんて、ひとつの外国語の単語を決まり切った作業のようにひとつの日本語に置き換えるものだと思っていた。(最近わが娘も同じことを思っている節がある。)
    今となっては翻訳は製作活動であり、研究にもなりうる大変なお仕事だとさすがにわかっている。そして、語学が苦手な者としては尊敬しかない。

    常々、語学って、努力はもちろんのこと、「才能」が必要なのでは、と思っていたのだが、それが読後は確信に変わった気もする。

    • TEIKOさん
      英語の翻訳に挑戦したことがあるけれど、英語でも大変。中学からやっているのに。言葉に血肉が通わないのね。それほど考えなくても使える日本語なのに...
      英語の翻訳に挑戦したことがあるけれど、英語でも大変。中学からやっているのに。言葉に血肉が通わないのね。それほど考えなくても使える日本語なのに、逆に、本当に大事に言葉を使えてるのか心配になったり。英語より、日本語のほうが難しい。意味はとれても難しい。本、機会があったら、よんでみますね。
      2023/01/15
    • URIKOさん
      >TEIKOさん
      コメントありがとうございます。翻訳に挑戦されたことがあるなんて、すごいです。経験した人にしかわからないこともあるのでしょ...
      >TEIKOさん
      コメントありがとうございます。翻訳に挑戦されたことがあるなんて、すごいです。経験した人にしかわからないこともあるのでしょうが、「言葉に血肉が通わない」はなんとなくわかります。この本、よかったら読んでみてくださいね!
      2023/01/16
  • 第1回 ヘブライ語:鴨志田聡子さん | インタビュー「「その他の外国文学」の翻訳者」 | web ふらんす
    https://webfrance.hakusuisha.co.jp/posts/4214

    「その他の外国文学」の翻訳者 - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b598678.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「だるまさんが転んだ」を外国語に訳すと? マイナー言語の文芸翻訳者が直面する「食っていけない」という問題 | 文春オンライン
      https:/...
      「だるまさんが転んだ」を外国語に訳すと? マイナー言語の文芸翻訳者が直面する「食っていけない」という問題 | 文春オンライン
      https://bunshun.jp/articles/-/53369
      2022/04/14
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      マイナー言語の翻訳者が示す多様な学びの道しるべ 『「その他の外国文学」の翻訳者』白水社編集部 | レビュー | Book Bang -ブック...
      マイナー言語の翻訳者が示す多様な学びの道しるべ 『「その他の外国文学」の翻訳者』白水社編集部 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
      https://www.bookbang.jp/review/article/730519
      2022/04/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「その他」の側から世界を見る」斎藤真理子(『「その他の外国文学」の翻訳者』序文) | インタビュー「「その他の外国文学」の翻訳者」 | w...
      「「その他」の側から世界を見る」斎藤真理子(『「その他の外国文学」の翻訳者』序文) | インタビュー「「その他の外国文学」の翻訳者」 | web ふらんす
      https://webfrance.hakusuisha.co.jp/posts/7268
      2023/06/07
  • 外国文学を読むときに、「誰が書いたのか」は見ることはあれど、「訳者は誰か」について考えるのは、かなりの本好きでないとあまりないような気がします。

    そして、翻訳そのものも、原書に沿った直訳が好きな人もいれば、意訳を好む人もいます。

    今自分が取り組んでいる英語ですら、難しく感じるのに、豊富に教材があるわけでもなく、まして辞書すらない言語に立ち向かっていく、本に出てくる訳者たちは、それぞれがオリジナルの学習法を編み出していて、非常に面白かったです。

    共通しているのは、辞書があることの便利さと、現地で学ぶことの有意性でしょうか。

    平坦な道では決してない、そして報われるかどうかもわからない、相当な努力をしてきたことが、文章を通じて伝わってきますが、きっとそれ以上の苦難があったはずと思わざるをえない。

    この本を読んでからは、必ず訳者の略歴は見るようにしようと思いました。そして、機械翻訳ではいまの段階ではまだ乗り越えられない壁があることを改めて感じさせられた一冊でした。

    手元に残して、時期が経ったら再び読んでみようと思います。

  • “その他”の外国文学翻訳者たちの、その言語との出会い、
    学習法、翻訳の工夫などの翻訳への道程、文学観を紹介する。
    ・「その他」の側から世界を見る
    ヘブライ語 チベット語 ベンガル語 マヤ語
    ノルウェー語バスク語 タイ語 ポルトガル語 チェコ語
    各言語での翻訳の参考になる本、その言語のお勧めの文学、
    その言語を知るための本、その国を知るための本などの
    リスト有り。

    ノーベル文学賞で“その他”の外国の文学者が選ばれるとき、
    その言語から日本語翻訳された作品があることに驚きます。
    そんな“その他”の外国文学翻訳者たちは、どのように
    その言語と出会い、翻訳への道を歩んだのか。
    きっかけは人それぞれ。
    元々の専門言語から苦手な言語へ。
    その言語に通じる家族からの影響。
    翻訳の無い自分だけが原文で読める作品と出会いたい。
    その地域の調査研究の過程から学んだ言語。
    オーロラを見るツアーでその国への興味。
    映画祭へ行ったこと。その文学作品をその言語で読みたい。
    国費留学生との交流、その言語で話をしたい。
    中学時代の一年間暮らした国の言葉という親近感。
    世界で最も難しい言葉をやってみたい。
    その想いからくる積極的な歩みは疾走感漲るもの。
    海外に、現地に行って学ぶ。フィールドワークを行う。
    それらの行動力と熱意が迸るような道のりを歩んでいます。
    人と人との繋がりも大事。現地で、日本国内でも同様に。
    だが、その言語が分かることと翻訳が出来ることは、別物。
    外国文学は、その土地に根差した価値観を直に知ることが出来る。
    宗教や政治によっても異なる、その地域の歩みも。
    翻訳者たちのその言語を、その文学作品を知らしめたい熱量を
    大いに感じさせてくれました。その活動にも刮目。
    また、その言葉の音の響きやリズムに惹かれてというのも、
    興味深いものでした。

  • 「その他」に入れられてしまう言語(本書では、ヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語)の文学を扱う翻訳者さんたちの奮闘が書かれている。

    日本では学ぶにはかなりマイナーな言語ということでテキストを探すところからの苦労、未知の国への留学、ことばのバックグラウンドを知ること、訳したいと思う本との出会い、出版への道のり。一筋縄では行きません。でも、皆さんに共通するのは言語と訳す本への大きな愛。いやぁすごい。バイタリティと愛がないと先駆者にはなれないのだなぁとひしひし感じました。

    読み手として、そのお仕事の結晶の本を読むことができて幸運です。

    お勧め本の中にいくつか積んでるものがあって心苦しい(;'∀')

    チェコ語の阿部さんがウリツカヤの『通訳ダニエル・シュタイン』を翻訳の参考の本として挙げられてる理由をちょっと知りたい(欲しいけど絶版本…)。

    お勧めの中で気になった本
    バーデンハイム1939/アッペルフェルド
    走れ、走って逃げろ/オルレブ
    銀河の果ての落とし穴/ケレット

    イタリアの詩人たち/須賀敦子

    薪を炊く/ミッティング

    アコーディオン弾きの息子/アチャガ

  • ガイブンファンなのでバスク語のムシェ(キルメン・ウリベ)の金子さん、ポルトガル語のガルヴェイアスの犬(ペイショット)の木下さん、チェコ語のシブヤで目覚めて(ツィマ)やチャペックの阿部さんなど、読んだ作品の翻訳者のエピソードが面白かった。鴻巣さんが木下さんを新潮社に紹介したエピソードは日本翻訳大賞で聞いた。
    どの翻訳者からも、言語とその背景にある国や文化に対する愛着や情熱がひしひしと伝わってくる。そこに至る努力や行動力は並大抵のものではない。チベット語、マヤ語など、「その他」すぎて翻訳者がいることが驚き。ただでさえ、英語でさえ売れない翻訳本を、マイナー言語で翻訳する人と出版する会社があることは希少価値。
    この語り手は誰なんだ?という違和感があるのだが、白水社の編集者ということか。

  • とても面白かった。外国文学を翻訳で読むことの意味やそれぞれの翻訳者の目指すところなどを知ることができて刺激になった。

  • 翻訳の苦労や翻訳家になったきっかけなどを読むことができます。未開拓の世界を進む行動力が印象に残りました。様々な国の言語や文化も学べます。外国文学に興味がある方におすすめの本。

  • 白水社でないと出せない本!その他の言語から訳された本は、大体外さない。そりゃそうだ。出版までのハードルがもう一つ高いんだから。ともかくなんか熱量高い。緩いひともなんか突き抜けてる。愛だよ、って言った人いたなあ。

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著者プロフィール

【著・訳・編者紹介】
白水社編集部 編
序文・斎藤真理子
鴨志田聡子(ヘブライ語)
星泉(チベット語)
丹羽京子(ベンガル語)
吉田栄人(マヤ語)
青木順子(ノルウェー語)
金子奈美(バスク語)
福冨渉(タイ語)
木下眞穂(ポルトガル語)
阿部賢一(チェコ語)

「2022年 『「その他の外国文学」の翻訳者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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