龍彦親王航海記:澁澤龍彦伝

著者 :
  • 白水社
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本棚登録 : 163
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560097267

作品紹介・あらすじ

作家の最晩年に編集者として謦咳に接した著者による初の伝記。未公開資料と知られざる逸話を交えながら、不世出の異才の生涯を辿る。

感想・レビュー・書評

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  • 「龍彦親王航海記」書評 澁澤の偏愛者も満足の評伝|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13043488

    龍彦親王航海記 : daily-sumus2
    https://sumus2013.exblog.jp/32366717/

    龍彦親王航海記 - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b479980.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      Apied アピエ / APIED vol.35
      http://apied-kyoto.com/apied/036.html
      Apied アピエ / APIED vol.35
      http://apied-kyoto.com/apied/036.html
      2021/08/14
  • 20歳頃から愛読していた澁澤龍彦。「ヨーロッパの乳房」を読んでから憧れ続けていたイタリアのボマルツォに、ローマから電車とバスを乗り継いで行ったのもいい思い出だ(もう20年以上前だ!ちなみにアカウントの写真はその時の)
    晩年の担当編集者だった著者による伝記で、考察を交えながら澁澤龍彦がどんな人物だったのか、様々な資料から基本、時系列的に事実を追っている。正直、澁澤龍彦ってこんな人だったんだ、と意外に思う部分もあり、澁澤龍彦像を頭の中で作り上げている少年少女は、もう30年くらい経ってから読むのをオススメしたい。
    伝記ではあるのだけど、読者がなぜ自分は澁澤龍彦に惹かれるのかを解き明かすための書物ともなっている。澁澤龍彦を媒介にして自分を見つめるとは、なんとも愉快な体験だった。感謝。 

  • 澁澤龍彦本人、また彼と交流のあった、三島由紀夫、種村季弘、土方巽、矢川澄子らに少しでも興味があれば、必読の評伝。

    彼らがどのような時代を生き、交わり、影響しあい、また離れていったかということを、参照しうるほぼすべてといえそうな資料をもとに、あくまでも抑えた筆致で描き出します。時代の空気感、関係のありようまでを封じ込めた、驚くべき労作。

  • 澁澤龍彦の評伝。
    著者は澁澤の晩年に付き合いがあった編集者。
    豊富な資料を基に、実際に付き合いがあった人物が書いた評伝ということもあって、澁澤龍彦という人物が目の前にいるような気がする。
    あと、澁澤龍彦と吉田健一の共通点をはっきり挙げた文章というのは、本書が初めてではないだろうか。他にもあるのかもしれないが、ここまで明言したものは聞いたことがない……(と、思う。しかしこの2人、現実世界では気が合わんやろうなぁ、とも思うw)。

  • 国書刊行会で晩年の澁澤龍彦を担当していた編集者による伝記。


    私は澁澤が自生活を書いたものは意図的に避けてきたので、特に前半生は知らないことばかりだった。東京空襲で幼少期に読んだ本が焼けていることなど、考えればわかることなのに思ってもみなかった。防空壕をでて焼けた自宅を見に行ったお母さんが、釜のお米が炊けていたと喜んで持ち帰ってきた話がすごい。
    学生時代のエピソードはこんな萌えキャラがいていいのかよという感じで、ガリ勉のちびっこでありながら家では2人の妹におだてられて暮らすお山の大将だったり、女にフラれたときには余裕ぶった"優しい手紙"を書き、妹に読ませて名誉回復してから投函したりする、プライドの高い王子さま。それがそのまんま、子どもがいらないのに避妊をしなかったせいで矢川澄子が四回も堕胎するというクズさに直結するのだが。
    一番驚いたのは、三島とこっくりさんをやったという有名な話の夜に岡上淑子もいたということ。「◯◯夫人」という呼び名の裏に目隠しされてきた情報に呆れるほかない。アルトー『ヘリオガバルス』の澁澤訳があることや、大橋巨泉の『11PM』にTV出演したことがあるのも知らなかった。書き方からして磯崎さんも映像を確認できていないみたいだけど、TV局にも残ってないのかしら。
    周囲の人で印象に残るのは、三島以外だと、いつも大事なところで怒ってくれる野中ユリと、やっぱり松山俊太郎。それなりに敵も多い自由人の澁澤が、松山の前では一歩引いて笑って自由を明け渡している感じ。尤も、松山自身はお互いに対等ではなかったからこそ続いた(澁澤のことを兄気分として慕っていた)関係だとしている。三島と澁澤の関係も同じだったのではないかと思う。
    編集者時代に担当していた久生十蘭からの文学的・人間的な影響や、遠い国の良きライバルとしてボルヘスを常に意識していたことなども面白かった。花田清輝に会わなかったのは不思議で残念だし、寺山修司が澁澤の小説に期待しながら若くして亡くなったのも無念。『高丘親王航海記』はおそらく寺山の読みたいものとは違っただろうけど。
    澁澤が書いたものの面白さは、インターネットが普及して情報が飽和状態になってからのほうが認められやすくなったんじゃないかと思う。自分が読んだ本からの引用・抜粋ばかりしている人はTwitterにもたくさんいて、だけどその人独自の文脈、独自の面白がり方が見えてくれば読み物として成立している。発想のオリジナリティよりも、選択と並び替えのオリジナリティ。そしてそれは近代以前の知の在り方にも近いんじゃないだろうか。
    女性読者として気になるのは、矢川澄子が澁澤そっくりの字を書いて「ずっと清書をやってたから」と笑っていたということや、龍子さんも清書するのが一番の幸せだったと語っていることだ。男性でも編集者なら「原稿を一番に読める喜び」を語ることはよくあり、女性だからと一概に言えるものではないかもしれないけれど、澁澤に限らず〈家庭内編集者〉としての妻の存在を考えずにいられないなぁ、この時代の人は。
    著者の礒崎さんは澁澤を神様のように思いながら編集者を始めた人だそうで、本書も批判的というよりは、現代の目で見て評価できる面に重きを置く肯定的な本だ。高原英理の「ガール・ミーツ・シブサワ」を長々と引用していて、あれに共感する側の人なのだなぁと思った。澁澤の棺をだすときに降った天気雨を天使にたとえたのも印象深かった。

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著者プロフィール

1959年生まれ。慶應義塾大学文学部フランス文学科卒。編集者。『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』(国書刊行会)を編纂。共著に『古楽CD100ガイド』(国書刊行会)『古楽演奏の現在』(音楽之友社)、編纂CDに『カウンターテナーの世界』(ヴァージン)等がある(すべて瀬高道助名義)。

「2019年 『龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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