昭和も遠くなりにけり

著者 :
  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560097175

作品紹介・あらすじ

古い話を、古い東京言葉で聞いてみよう

 昭和、殊に戦後からの芸人や芸能について実際に見聞きし、付き合い、語れる評論家が、ほんとうに少なくなってきた。さらに加えて、東京言葉を駆使しながらの小粋な文章で芸能世界を語れる名文家となると、さらに限られてくる。
 そんな中で著者は、落語や演劇など、幅広いジャンルに対し、共感への慈しみを大切にしながら芸人たちと共に歩む、独自の評論スタイルを築き上げてきた。
 その原動力となっているのは、お馴染み「東京やなぎ句会」であろう。1969年1月小沢昭一、永六輔など男ばかり10名(後に12名)で結成されたこの句会は、すでに600回近く開催されているが、すでにほとんど他界し、現在では柳家小三治と著者の二人だけになってしまった。
 本書はその著者による久しぶりのエッセイ集である。冒頭は句友たちへの追悼が並ぶ。それが独特の昭和史になっており、同時に著者の立ち位置を示している。
 古い話を、古い東京言葉で聞いてみよう。そこから聞こえてくるものは、単なる郷愁ではなく、生き生きとしていた人々の、さりげない日々の営みである。いみじくも小沢昭一が著者に語ったという「昭和で飯を食う」矜持のようなものが読者にみえてくるはずだ。

感想・レビュー・書評

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  • 「ま、こんなもんやで」著者が、同じく「東京やなぎ句会」のメンバーだった三田純市さんの死に顔を評した言葉。三田さんの「洋食屋とレストランのちがいは、テーブルにウスターソースが置いてあるかどうか」という定義、これは秀逸。あちこちの新聞や雑誌に掲載されたものを、おおまかに五つに分けてあります。話はあちこち逍遥します。

  • 著者は、1935年東京生まれの、芸能・演劇評論家。

    最終章「V 来し方の……」の「妻のいない日日」に、妻が亡くなってからの日常が綴られている。

    [目次]
    Ⅰ 東京やなぎ句会のこと いろいろ
     十二人の熱気あふれる才人たち
     安息日の近況
     競馬の俳句
     見てきて 小沢昭一
     小沢昭一さんの形見
     獏十 大西信行
     エトランゼの軌跡
     「旅の達人」 永六輔との半世紀
     昼間の酒宴「こんなもん」
     藝も言動も裏表なき加藤武
     加藤武さんを悼む
     人をなごます茫洋さ
     東京やなぎ句会 聖地巡礼

    Ⅱ 日日雑感
     閏年の手帳
     御籤の効用
     誤植
     当世劇場事情
     わが机上
     彼者誰時
     電話今昔
     塩味のオートミール
     飢餓世代
     ちゃりんこ
     電力事情
     シルバーパス
     銀行振込
     時計を忘れて
     終戦or敗戦
     席を譲られて
     初鰹
     子供たちの未来
     下足の時代
     難解句 今昔
     老いの文章
     西洋暦
     異国 上方
     漱石と落語
     芥川さんの葉書
     神様の日記
     文化学院で
     昭和も遠く
     トップに会って
     久方ぶりの「街蕎麦」体験
     香港漫遊 ハムユイの炒飯
     懐かしき大船駅の名物

    Ⅲ 藝という世界
     落語とメディア展
     この落語が聴きたい
     廓ばなしの名人たち
     教育勅語と後家殺し
     藝の伝承、落語の場合
     藝人に「世間的常識」を求めても
     『わろてんか』のモデル 吉本せいの実像
     悲劇の千両役者 市川海老蔵
     「まけず嫌ひの意地ッぱり」面目躍如

    Ⅳ 劇場にて
     伸の知恵、綺堂の知識
     東の万太郎 秀司の西
     『明治一代女』異聞
     いま、三劇団
     『桜の園』のこと少し
     照れと冷静
     典子さんの私
     新劇に殉じた個性 米倉斉加年さんを悼む

    Ⅴ 来し方の……
     噫七十年
     笑いの飢餓を一気に充足させた、庶民の娯楽
     本懐とげる『男の花道』——講釈、映画、そして舞台
     新劇に目覚めた場
     三度のおつとめ
     妻のいない日日

    あとがき

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著者プロフィール

1935年東京生まれ、文化学院卒。藝能評論家。都民劇場理事、早川清文学振興財団理事。菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞選考委員。第10回大衆文学研究賞(1996年)、第14回スポニチ文化芸術大賞優秀賞(2006年)。

「2023年 『芝居のある風景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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