「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校:ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯
- 白水社 (2019年7月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560097120
作品紹介・あらすじ
「私の眼の前にいるのは、いつも人間だ」
映画『戦場のピアニスト』では、ユダヤ系ポーランド人ピアニストのシュピルマンが戦禍を免れ、ワルシャワ陥落直前、ドイツ人将校に発見されて絶体絶命という緊迫したシーンがある。ところが、そのドイツ人将校は、ピアニストの彼にピアノを弾かせて励まし、食料を運んで命を救った。
本書は、まさにその「ドイツ国防軍将校、ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯」を描いた歴史読物だ。近年まで知られていなかったが、彼の日記と妻と交わした大量の書簡が発見された。ホーゼンフェルトは、「シンドラー」、「白バラのショル兄妹」、「杉原千畝」の陰に隠れていたが、迫害された数多のポーランド人やユダヤ人を彼が救済したことが明らかになったのだ。ヒトラーとナチズムを信奉していたホーゼンフェルトは、絶滅戦争の真実を目の当たりにして、「救済による抵抗運動」へと転じたのだった。
本書は、《ドイツ青少年文学大賞》受賞の作家が、勇気と倫理を貫いた「正義の人」の生い立ちから、家族関係、悲運の最期までを、史実をたどりながら書簡と日記で再現する。夫婦で交わした率直な思い、愛情、不安や迷いを伝える文章は、読者の心を揺さぶるだろう。写真多数収録。
感想・レビュー・書評
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『戦場のピアニスト』は好きな映画で彼がピアニストシュピルマンと出会いピアノを弾いてもらうシーンは印象的。
そんな彼、ドイツ国防軍将校ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯。ヒットラーに傾倒し支持するが次第に疑問をもち、ついに軍の掟に反してもポーランド人やユダヤ人の救済行動へ踏み出して行く。家族愛、倫理感、強い責任感。
とても印象に残る一冊だった。 -
図書館
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ゲットーの光景を前にして、ホーゼンフェルトは強い衝撃を受けた。「酷い状態だ。ゲットーは我々への非難そのもだ。人々は気力を失い、飢え、アリの群れのように汚物だらけの街路をうごめいている。実にあわれで悲惨だ。
ユダヤ人警察が、容赦なく彼らを追い立てている」。ゲットーの人々は、それまでの生活と切り離され、非現実的世界に身を置くことになった。はじめのうちはまだ、それなりの体裁が整っていた。レストランで食事をしたり、カフェに行くことができる人々もいた。映画館や劇場も機能していた。金や宝飾品を持っている者は、それなりの生活を送ることができた。しかし、先のことはわからないという漠然とした不安感が漂っていた。シュピルマンはのちに、恐ろしい目に合うのではないかという、悪夢のような予感が常につきまとっていたと書いている。シュピルマン一家が住んでいた小ゲットーは、最初はある程度耐えられるものだった。主な住人は知識人と裕福なブルジョワジーで大ゲットーと違って、比較的シラミも少なかったし、害虫駆除も行われていた。大ゲットーの状況は深刻だった。ワルシャワ北部に作られた大ゲットーには、貧しく、汚物にまみれたユダヤ人たちが押し込められた。
狭い路地には悪臭がたちこめていた。いたるところで手入れや無差別逮捕が行われた。親衛隊とゲシュタポは、若いユダヤ人を捉えては建築現場へと送った。ユダヤ人はいつも、最も汚く危険な仕事をさせられた。シュピルマンは手を守るために、できるだけその種の仕事を避けた。手に怪我をしたり、骨折でもしようものなら、ただでも危うくなっているピアニストの生活はおしまいになる。ゲットーの生活に何より重要なのは、情報の入手だった。 -
東2法経図・6F開架:289.3A/H91v//K