ヒトラーとドラッグ:第三帝国における薬物依存

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560096512

作品紹介・あらすじ

「錠剤の形をしたナチズム」の恐るべき実態に迫る傑作ノンフィクション。「患者A」と主治医モレルの危険な関係を暴く世界的ベストセラー!

感想・レビュー・書評

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  • 医師と薬物を中心にナチスドイツを紐解く一冊。
    ヒトラーの扇動と薬物の洗脳も相俟って、狂気の時代が到来したのかもしれません。
    残された多くの資料から、ナチス高官やヒトラー自身も処方されていることがわかっています。
    個人的には視点が偏っているようにも思え、何が薬物に端を発したものなのかを慎重に調査するべきと思います。

  • ノーマン・オーラー著、須藤正美訳『ヒトラーとドラッグ 第三帝国における薬物依存』(白水社、2018年)はアドルフ・ヒトラーとナチス・ドイツが薬物に深く依存していたことを暴く歴史ノンフィクションである。ヒトラーとナチス・ドイツの異常性を薬物依存から説明する。危険ドラッグが社会問題になった日本において健全な社会を作る上で重要な視点である。
    ヒトラーはホルモン剤、鎮痛剤、覚醒剤など薬物に依存していた。誇大妄想にとりつかれるなど薬物依存症の振る舞いをしていた。薬物中毒が悪化すると、軍事作戦能力が失われ、滅茶苦茶な指示を出すようになる。ドイツ軍が敗北を重ねることは当然である。
    覚醒剤は違法薬物であるが、鎮痛剤となると医療として処方されている。そのようなものでも薬物中毒や薬物依存を引き起こす。現代日本では精神科などでの薬漬けが問題視されている。
    国家元首が薬物依存であることは国民にとって大きな不幸である。さらに恐ろしいことにナチス・ドイツ自体が薬物に依存する体制であった。ドイツでは労働者の生産性を高めるとしてペルビチンが広く出回っていた。チョコレートにメタンフェタミンが混ぜられ、ダイエット効果があるとして女性に飲まれた。
    日本では大麻成分を含むチョコレートやクッキーが密輸される問題が起きている。東京都荒川区で大麻入りチョコレートを食べた男女7人が呼吸困難や手足のしびれを訴えて病院に搬送された(「大麻菓子、密輸後絶たず=海外での合法販売一因-専門家「少量でも悪影響」」時事通信2019年6月8日)。
    閑話休題。ドイツ軍は兵士にペルビチンを服用させ戦闘に向かわせた。薬物でハイになった兵士は昼夜を問わず進軍した。それが電撃戦を成功させた。薬物がなければドイツ軍はフランス軍に勝てなかったとまで言っている。
    ドイツ軍は薬物でドーピングしていたことになる。性能が上がると言ったところで、要はリミッターを外しただけである。言わばズルをしたことになる。スポーツならば不正で失格である。これはフランス軍の名誉回復になるだろう。
    ナチス・ドイツの異常性を薬物依存で説明する本書はナチス批判の効果的な書籍になる。薬物依存によって妄想的になり、現実を理解できない非理性的な社会になった。ネオナチなどナチス・ドイツを賛美する思想が問題になっているが、その正体を薬物依存症とすることは、これ以上ない強力な反論になる。
    日本では暴走族がハーケンクロイツを掲げるなどヤンキーとナチスに親和性がある。それは依存性薬物という共通項があると言えるだろう。また、第二次世界大戦の日本軍もアヘン密売を資金源にし、特攻兵に依存性薬物を投与したとされる。日本の恥の歴史も明らかにされなければならない。

  • まさに「事実は小説よりも奇なり」

    第三帝国が如何に内部的崩壊をしていったのか、国として薬物に依存してしまった末路を丁寧に説明してくれている。

    著者が小説家なこともあってかなり読みやすい。その一方で、歴史の知識ゼロで読むと危険な要素もある。真実は何か、その意識も読者に委ねられている。

    にしても面白い本。

  • 心が張り裂けそうになる、それ以上の感想が出ない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/711913

  • 多くの人にとってのヒトラー像は、熱狂的な群衆を前に演説する陶酔状態の彼や、得意満面でフランスの凱旋門を見物する彼など溌剌とした印象の姿から、映画『ヒトラー 最期の12日間』で描かれたような覇気のない陰気な老人の姿に一気に変貌するが、歴史学者の間でも1941年以降の顕著な健康悪化や気力低下を十分に説明のつかない空白地帯として残されていた。著者はこの空白を埋め、少しでも彼の実像に迫ろうとするなら、これまで端役に過ぎなかった主治医にスポットを当てる必要があると確信し、公文書館で米軍による尋問記録を見つけ出す。
    専門家ではなく本書が初めてのノンフィクションらしいが、小説家の手がけた詳細な研究が瞬く間に話題となり、歴史学の泰斗であるカーショーまで賛辞を贈られているというのだから驚きだ。タイトルからして如何わしく眉唾な内容に思えるが、今後の第二次世界大戦やナチスドイツ研究で避けて通れない素材を提供している。小説家らしい表現で歴史的事実が語られるため反発を覚える研究者もいるかもしれないが、彼が冒頭で宣言している通り、「歴史記述は学問であるだけでなく、つねにフィクションでもある」し、事実は「その配置において文学」なのだ。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00260248

  • 薬物汚染という観点からヒトラーを始めとする第三帝国の情勢を描いたノンフィクション。
    『覚醒剤が蔓延していた』という事実については様々な本に書かれているのだが、『薬物とナチス』という関係を主題にして書かれた本はこれまで類書が無かったようで、本国での評価もかなり高いようだ。
    ヒトラーの主治医はけっこう場当たり的で無茶苦茶だし、余り医師として優秀な人物ではなさそうだ……というのは現代だからこそ言えることだろう。

    内容とは関係無いが、巻末の広告に載っているタイトルはどれも面白そうだな……。

  • 日経新聞20181020掲載

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著者プロフィール

1970年、ドイツ出身の作家。これまでに三つの小説作品を発表している。ヴィム・ヴェンダース監督の映画『パレルモ・シューティング』で脚本を共同執筆している。

「2018年 『ヒトラーとドラッグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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