- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560096185
作品紹介・あらすじ
「ヒトラーの子どもたち」の教化あるいは排除
純粋な民族に属する身体的に完璧な人々によって支配され、人種的に受け入れ難く、経済的に役に立たない者は排除される――ヒトラーが実現を図った「理想郷」だ。「子どもは国民の最も貴重な宝」と『わが闘争』で宣言し、「ヒトラーの子どもたち」に教化する一方で、本書では、無数の子どもたちとその家族が迫害され、排除された惨状も明らかにする。人種至上主義に基づくナチ・ドイツの社会政策・占領政策、配下の欧州(ポーランド、フランスからロシア、ギリシアまで)の窮状を、回想録や日記など一次資料を駆使して包括的に論じた、「新たな第二次世界大戦史」といえる。
青少年組織の活動のため降伏直後のポーランドに来た、ドイツ乙女団の少女の回想が生々しい。相手の「敵意」を感じ、人種イデオロギーに縛られながらも、飢えている子どもたちに同情を禁じ得ない真情が、胸に響く。著者はこうした声に耳を傾けながら、戦争の脅威と人種至上主義が、子どもたちとその家族に課した過酷な処遇を詳らかにする。著者は『ヨーロッパの略奪』(白水社)で「全米批評家協会賞」を受賞した歴史家。地図・図版多数収録。
感想・レビュー・書評
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★4.0
家族から引き離された非アーリア人の子どもたちは勿論、ヒトラー・ユーゲントやドイツ乙女団に所属したアーリア人の子どもたちについても綴られる。後者がナチズムに感化され、体現したことは過ちだったものの、純粋で多感な時に強制的に思想を刷り込まれたことは、悲劇以外の何物でもない。しかも、アーリア人であっても身体に障害等がある場合は容赦なく排除される現実。読めば読むほど、ナチによる人種主義政策が、あまりに愚かであまりに冷酷だったことを思い知る。同じ人間による所業とは思えないけれど、この悲劇は紛れもない事実。 -
上下巻なのに、単巻ものと誤解して入手。よってまだ上巻までしか読めてない。
おまけに題名から、「ナチの子どもたち」(タニア・クラスニアンスキ)みたいな高官らの実子の話か、そうでなくとも第三帝国でそのイデオロギーに洗脳されて育った子供たちの話だとばかり思いこんでいたのだが、さにあらず。本書の「囚われ」とは、アーリア人の約束の地たるドイツから、社会的・物理的・生物学的(それすなわち「あの世へ」である)な意味で文字どおり「おん出された」ユダヤ人やスラヴ人、バルト人らの運命を指しているのだ。
本書においてもナチスもののいつもの読後感に洩れず、とてつもない悲惨と、いっそ戯画的なばかりの愚かさが際立つ。倫理面を措いたとしても「無理あるだろ」というツッコミしか浮かばない「民族浄化」はもとより、五人も六人もの金髪碧眼の優良児童に囲まれたドイツの父と母、とかいった妄想にしたところで、はたしていいおとなが本気で、そんなことを実現しうると考えていたのか。
だとすると、頭のネジが二、三本外れていたとしか思えない。それくらい、ナチスの描いた未来予想図は非現実的である。
アドルフ・ヒトラーは、従来喧伝されてきたような悪魔にあらず、ただの卑小な狂人である。
恐ろしいのは断じて、悪魔ではない。ただの卑小な狂人「にすぎない」小物に、あれだけ多勢の人間が己の支配を委ねてしまった、その事実である。
2018/6/29~7/1読了 -
東2法経図・6F開架 234.07A/N71n/1/K
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原題:Cruel World: The Children of Europe in the Nazi Web
著者:Lynn H. Nicholas
訳者:若林美佐知
ジャンル 一般書 > 世界史 > 現代史
出版年月日 2018/03/16
ISBN 9784560096185
判型・ページ数 4-6・412ページ
定価 本体4,800円+税
「ヒトラーの子どもたち」の教化と迫害
ナチ支配下のヨーロッパにおいて、ヒトラーの人種主義が子どもたちに課した過酷な処遇を、膨大な史料に基づいて包括的に論じる。
純粋な民族に属する身体的に完璧な人々によって支配され、人種的に受け入れ難く、経済的に役に立たない者は排除される――ヒトラーが実現を図った「理想郷」だ。「子どもは国民の最も貴重な宝」と『わが闘争』で宣言し、「ヒトラーの子どもたち」に教化する一方で、本書では、無数の子どもたちとその家族が迫害され、排除された惨状も明らかにする。人種至上主義に基づくナチ・ドイツの社会政策・占領政策、配下の欧州(ポーランド、フランスからロシア、ギリシアまで)の窮状を、回想録や日記など一次資料を駆使して包括的に論じた、「新たな第二次世界大戦史」といえる。
青少年組織の活動のため降伏直後のポーランドに来た、ドイツ乙女団の少女の回想が生々しい。相手の「敵意」を感じ、人種イデオロギーに縛られながらも、飢えている子どもたちに同情を禁じ得ない真情が、胸に響く。著者はこうした声に耳を傾けながら、戦争の脅威と人種至上主義が、子どもたちとその家族に課した過酷な処遇を詳らかにする。著者は『ヨーロッパの略奪』(白水社)で「全米批評家協会賞」を受賞した歴史家。地図・図版多数収録。
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b352000.html