アメリカの汚名:第二次世界大戦下の日系人強制収容所

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560095836

作品紹介・あらすじ

人種隔離政策の恐るべき実態
 太平洋戦争中、敵国日本にルーツを持つというだけの理由で、12万人もの日系アメリカ人が劣悪な環境の収容所に隔離された。本書は、アメリカ人ジャーナリストが、自国の戦時ヒステリーが引き起こした「醜態」の一部始終を描いたノンフィクションである。マイノリティー問題の一つとして謝罪と賠償だけで片づけるのではなく、国家としてのアメリカが自国民に対してどのような仕打ちをし、それを追認・黙認してきたのか、自分たちの歴史として意識し続ける必要があるというのが著者のスタンスだ。
 突然、日常から切り離され、収容所へと送られていく悲惨さや、収容所内における一世と二世との確執など、生存者へのインタビューのほか、私信や回想録、公的資料から積み重ねられるエピソードの数々は、微に入り細をうがち圧倒的である。
 人種差別、排外主義、恐怖と表裏をなす報復感情……アメリカ史に連綿としてある暗部を暴きながら、冷静に事実を見据え、アメリカ社会の光と影を浮かび上がらせた力作。そこには当然、アフリカ系をはじめ、イスラーム教徒らマイノリティーに対して同じ行為を繰り返しはしないかと自問する姿勢が見て取れる。

感想・レビュー・書評

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  • 人間はいかに「見た目」にとらわれてしまうのか。そして、一度根付いた偏見、差別意識というのは、そう簡単に払拭できない、ということ。これらの愚かしさ、恐ろしさを今に伝えてくれる。

    アメリカ西海岸を中心に普通に暮らしていた日系アメリカ人たちが、1941年の日本軍による真珠湾攻撃の日を境にして、「軍事的必要性」の名目で収容を余儀なくされる。アメリカで生まれ、アメリカに愛国心を抱き、日本軍とは何の関わりもない人々が、見た目が日本人、ルーツが日本人というだけで、「ジャップ」と蔑まれ、苦しい日々を送り始める。

    人はたやすく自分と異なる人間を排斥し、優位に立とうとする。歴史を見るとそれは必然的とも言え、特に戦時においてはそれが濃厚となる(ナチスによるユダヤ人迫害等)。政治家は本来これを抑える働きをすべきなのだが、この事例でも見られるように、むしろ政治家が非理性的なヒステリー状態に陥り、事態を悪化させていく。

    このような歴史を繰り返さないために何をすべきか、ははっきりとわからない、しかしこうした過ちを人類は繰り返してきた、ということは知っておくべきだ。

  • 朝日新聞 書評 2/4/2018 保阪正康

  • 東2法経図・開架 334.4A/R23a//K

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著者プロフィール

アメリカのジャーナリスト、コラムニスト。1936年生まれ。スティーヴンス工科大学卒業。66年から71年まで『ニューヨーク・タイムズ』政治部長を務めたのち、『ニューヨーカー』『エスクワイア』など主要紙誌のコラムニスト・編集者として活躍。また、公共放送サービス(PBS)のドキュメンタリー番組「フロントライン」で主任記者を務めた。エミー賞(80年)をはじめ、活字・映像の分野で数々の賞を受賞。著書多数。現在、南カリフォルニア大学で教鞭を執る。

「2017年 『アメリカの汚名』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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