偽史の政治学:新日本政治思想史

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560095287

作品紹介・あらすじ

丸山眞男から遠く離れて
 福澤諭吉という眩しい光の傍らで忘れられた阪谷素と加藤弘之、徳富蘇峰が夢見た「新日本」、万歳三唱にかき消された後藤新平の「いやさか」、権藤成卿の「社稷」と偽史、丸山眞男が自ら「夜店」と称して遠ざけた「丸山政治学」、そして丸山学派のなかでは風変わりな弟子だった神島二郎……
 日本政治思想史――。丸山眞男が創始したこの学問分野は、政治学のみならず、戦後思想を牽引してきた一大領域だったと言っていい。ただ、そこで批判の俎上にのせられたのはマルクス主義と天皇制であり、光が当てられたのは荻生徂徠や福澤諭吉といった思想家だった。
 ここで取り上げるのは、光ではなく闇である。もちろん、光に幻惑され闇に沈んだ事象の意味を問い直す試みは決して新しいとは言えない。民俗学や社会史が民衆や習俗に向けた眼差しはまさにそうした問題意識の所産である。ところが、こうした視線で見出されるのは集合表象としての民衆でしかなく、一人ひとりの生身の人間ではない。
 本書は、思想史という枠組みに依拠しながら、明治・大正・昭和というそれぞれの時代を象徴する一齣を提示する試みである。丸山から遠く離れた「シン・日本政治思想史」へ!

感想・レビュー・書評

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  • 歴史
    政治

  • 法経開架 311.2A/Ko76g//K

  • 「一人の「頂点」が他の論者を論破し、またもう一人の「頂点」にその「道統」が受け継がれ、全体として議論が前進していく。そうした知の進歩史観―あるいはその裏返しとしての堕落史観―を本書は採用しない」「通史的な見通しについて言えば、本書が提供することを目指しているのは、時代を通貫するトンネル史観ではなく、各時代に埋まる鉱脈を探査するボーリング史観である」(p.17)

    「思惟様式」に意を払わない、歴史叙述を「偽史」的に行ってきた権藤成卿のような人物はこれまで「二流」として取り上げられなかったという。しかし、その歴史叙述にこそ「思惟様式」が表れるとし、そこに着目する点が本書の特色といえるだろう。

    確かに権藤はそうだろう。阪谷素、石井十次もそうかもしれない。でも、加藤弘之・福沢諭吉・後藤新平・丸山眞夫を同じように「偽史」として捉えられるのか?そのあたりがうまく読み取れなかった。

  • 「そして過去について無知なままに『白紙から』議論をしていると思い込んでいる人々が客観的に見れば無残なまでに過去に囚われ、使い古されたクリシェを繰り返すというのも、これまた思想史上頻出の事態なのである。そしてこれまたとりわけ本邦においてそうなのである。」(p.22 序章 丸山から遠く離れて)

  • 【内容紹介】
    著者 河野有理
    ジャンル 新刊
      一般書 > 哲学・思想
      一般書 > 社会 > 政治
    おすすめ
    出版年月日 2016/12/26
    ISBN 9784560095287
    判型・ページ数 4-6・252ページ
    定価 本体2,800円+税
    在庫 在庫あり

      丸山眞男から遠く離れて
      新たな〈日本政治思想史〉の誕生

     近代日本の光と闇のコントラストに留意することで、明治・大正・昭和というそれぞれの時代を象徴する一齣を提示する試み。
     福澤諭吉という眩しい光の傍らで忘れられた阪谷素と加藤弘之、徳富蘇峰が夢見た「新日本」、万歳三唱にかき消された後藤新平の「いやさか」、権藤成卿の「社稷」と偽史、丸山眞男が自ら「夜店」と称して遠ざけた「丸山政治学」、そして丸山学派のなかでは風変わりな弟子だった神島二郎……
     日本政治思想史――。丸山眞男が創始したこの学問分野は、政治学のみならず、戦後思想を牽引してきた一大領域だったと言っていい。ただ、そこで批判の俎上にのせられたのはマルクス主義と天皇制であり、光が当てられたのは荻生徂徠や福澤諭吉といった思想家だった。
     ここで取り上げるのは、光ではなく闇である。もちろん、光に幻惑され闇に沈んだ事象の意味を問い直す試みは決して新しいとは言えない。民俗学や社会史が民衆や習俗に向けた眼差しはまさにそうした問題意識の所産である。ところが、こうした視線で見出されるのは集合表象としての民衆でしかなく、一人ひとりの生身の人間ではない。
     本書は、思想史という枠組みに依拠しながら、明治・大正・昭和というそれぞれの時代を象徴する一齣を提示する試みである。丸山から遠く離れた「シン・日本政治思想史」へ!
    http://www.hakusuisha.co.jp/book/b253045.html



    [目次]
    序章 丸山から遠く離れて 

    I 眩しい光の傍らで
    第一章 「演説」と「翻訳」――「翻訳会議の社」としての明六社構想
    第二章 保守対啓蒙?――加藤弘之・福澤諭吉再考

    II 「イエ」と「社会」の間、あるいは「新日本」の夢
    第三章 「養子」と「隠居」―― 明治日本におけるリア王の運命
    第四章 蘇峰とルソー ―― 一八九四年の石井十次
    第五章 「自治」と「いやさか」―― 後藤新平と少年団(ボーイスカウト)をめぐって

    III 〈正統と異端〉を越えて
    第六章 「社禝」の日本史―― 権藤成卿と〈偽史〉の政治学 
    第七章 「スキンシップ」と政治学
    第八章 Legitimacy の浮上とその隘路――「正統と異端」研究会と丸山政治学

    あとがき
    参考資料
    人名索引

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著者プロフィール

法政大学教授

「2023年 『政治学入門 歴史と思想から学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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