- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092651
作品紹介・あらすじ
悪の輝きを放つ作家たち
十九世紀から二十一世紀まで、アメリカ大陸に生まれ育ち、どこかずれた右翼的作家・詩人たちの人生と作品を集めた架空の〈作家列伝〉。
本書に登場する三十人は、それぞれ生没年を付され、文学事典さながら長短さまざまに紹介される。ヒトラーに抱かれた赤子の自分の記念写真を誇りにするアルゼンチンの肥満体の女流詩人、数々の異名を編み出し「カリブのペソア」と呼ばれるハイチの剽窃詩人、壮大な〈第四帝国のサガ〉シリーズで成功を収めるアメリカのSF作家、ボカ・ジュニアーズのフーリガン集団を率いるアルゼンチンの詩人兄弟……いずれもボラーニョ・ワールドを体現する傑物揃い。
『通話』、『野生の探偵たち』、『2666』などでお馴染みの人物やエピソードが本書ですでに登場している点も見逃せない。随所に見られる自己言及的かつ予見的なフレーズは、他の邦訳作品に親しんだ読者には堪えられないはずだ。
ボラーニョ自身、一九九六年に刊行された本書によって初めて批評家の注目を集めた。巻末に付された他の登場人物略歴、事項および書誌一覧も含め、文学的野心に満ちた初期の恐るべき傑作。
感想・レビュー・書評
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架空の作家たちの生涯を描いた小説で、作家たちは直接繋がることもあるけど、ナチズムの信望者と文学者という部分で、作品の中では一本筋が通ってる気がした。文学と歴史のネガティブな部分を描いているのかもなぁ。
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タイトルに騙されたけど、「アメリカ大陸のナチ文学作家」の紹介だったのね…
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ここ何年かボラーニョって名前聞くようになったな、と思いながら初読。南米とナチって何かつながりあるとは聞くけどよう知らんしな、と思ったら全編フィクションか。いや、それはそれでスゴいっちゃスゴい。言われんかったらどこまでフィクションかわかれへん。こういうの、ハイパーリンク使って電子書籍向きなんかもね。
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何かと話題になるので読まねばなるまいと手に取った。辞典の掲載で記述はシンプルだし、「2666」に比べれば遥かにリーダブルだが、本書も密度は濃い。どこまでがフィクションなんだ…もとい膨大な人物名や著書名のほぼすべてがフィクションなのだとしても、リーフェンシュタールも、ピノチェトも、ギンズバーグも実在の人物だ。「リーフェンシュタールとエルンスト・ユンガーのセックス」などをしれっと紛れ込ませるところはただものではない。
ナチシンパから比較的穏健そうな右傾派まで大なり小なり多様な「ヤバさ」を抱えた作家たちが淡々と紹介された最後に、ボラーニョなる人物がもっとも凶悪そうな「ラミレス=ホフマン」を情緒的に語る、その構造も見事だった。 -
今号の夏のツンドク。
のページで坂口恭平先輩が絶賛していたロベルト・ボラーニョの小説が新しく翻訳されたとあらば、読まないわけにはいかないだろう。
20世紀末のアルゼンチンで活動した架空の文学者たちの生涯が歴史の教科書みたいな文体で綴られていくもんだから最初は退屈だった。
そう思って気を抜いているとフーリガンたちに愛される詩人なんていう、赤塚不二夫でも考えつきそうにないエクストリームなキャラクターが登場したりするから、思わず『シェー』と叫んだね。
popeye 2015 AUGUST Issue820
TO DO LISTより引用 -
挑戦的なタイトル。ボラーニョの中では読み易かった。最初のヒトラーに娘を抱かれて喜ぶ女性詩人などはまだ笑えたが、次第に不穏な人ばかりに。思想の不穏当さと作品の出来はリンクするんだろうか。ラストに語り手としてボラーニョが姿を現した時はドキッとした。ナチズム信奉者にはやはり人命軽視の風潮がありそうだ。
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書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。
http://www.rockfield.net/wordpress/?p=5228