帝都東京を中国革命で歩く

著者 :
  • 白水社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560092507

作品紹介・あらすじ

街歩きで見つけた帝都東京の新たな相貌
 歴史の強烈な磁場にありながら、あるいはそれ故に、忘却されてしまった場所がこの東京には無数にある。本書は早稲田、本郷、そして神田の各地を歩きながら、中国革命の痕跡を探り出す試みである。
 明治維新の成功と日露戦争の勝利、さらに科挙制度の廃止(1905年)といった事情も手伝って、明治・大正の東京には中国から多くの亡命者や留学生がやってきた。悲嘆に暮れて亡命してきた梁啓超、漱石に憧れて本郷西片に住んだ魯迅、受験に失敗して失意のうちに帰国していった周恩来はじめ、彼らにとって東京は特別な場所だった。
 革命を夢見た彼らの周囲には、どんな風景が広がっていたのだろうか? 日々を過ごした空間はどんな色彩で満たされ、またどんな匂いが漂っていたのか? 本書では一つひとつの場所を実際に訪ねて、読者とともに味わっていくことになる。
 こうした試みは、中国革命の群像劇について知られざる一齣を明らかにするだけでなく、帝都のイメージを一新してくれるはずだ。革命の揺りかごになったもうひとつの東京へ! 明治・大正の地図や当時の図版約100点を贅沢にもオールカラーで掲載!

感想・レビュー・書評

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  • 中国近代史に興味ある方ならば、この本は必携でしょうね。辛亥革命を成し、現代中国を準備した人々の青春を、東京を舞台に綺羅星の如く描いている。且つ彼らの住んでいた昔の地図から次第と現代地図に移っていく様を、少なくとも4葉の古地図、しかもカラーで用意して、東京巡りに便宜を図っている。

    残念ながら私は、中江兆民から幸徳秋水に至る自由民権運動から初期社会主義への挫折の近代日本思想史には大いに興味はあるが、日本の保守思想がなぜ中国革命思想と結びつくのか、という深掘りすると戻れなくなるようなテーマにはごめん被りたいと思ってきた。よって、この本には、中国革命に夢途中で倒れた有為な青年たち(梁啓超、宋教仁、李漢俊、黄興、秋瑾、等々)が、たくさん出て来るが、やっぱりきちんと読んだのは、蒋介石であり、魯迅であり、周恩来であり、そして孫文なのだ。もちろん、この本ではあまり深掘りしていない。というか、彼らの思想が花開くのは、日本を離れてからなのであるから当然なのだが、ミーハーとして、彼らの住んでいた家の跡を特定するという愉しみはあるかもしれない。私はしないが。

    孫文だけは、留学という形ではなく、日本に都合10数回訪れ、通算すると9年以上滞在した。日本全国に残る孫文伝説を、ベストセラーに仕上げるか、映画化することが出来たなら、日中関係は劇的に改善することだろうと思う。

  •  20世紀初頭の日本、特に東京には清国留学生はかなり多く、辛亥革命以降もかなりの数が残っていたそうだ。関東大震災で死亡した留学生もいた。蒋介石、周恩来、陳独秀や秋瑾といった有名どころが日本留学していたことは知っていたが、共産党の第1回党大会13人のうち4人が日本留学組だったとは。日中戦争時は彼ら元日本留学生の多くは社会で現役だっただろうに、留学時のことをどう思い出していたのだろう。
     また、有名人が日本留学したという事実は知っていても、本書で書かれた彼らの日本での生活を読むと、思いを馳せてしまう。軍人に憧れて19歳で日本に来て、数年後に新潟で二等兵として馬の世話をしていた蒋介石。やはり19歳で日本に来て、苦悩や失意を舐めた周恩来。自分の19歳の頃を思い出してしまった。

  • 肩の力の抜けた、休日に合う本。
    この本の地域でなくとも、ちょっとした散策に出たくなります。

    本の内容は、明治~大正の日本に、中国から来た留学生たちのエピソードを纏めたもの。短めのページ数に15章なので、1章ずつはかなり短いです。
    私のような中国についてあまり知らない人間でも知っているような、孫文、魯迅、周恩来、蒋介石といった超有名人のくだりから、中国の革命の中で散った人たち、あるいは中国共産党で頭角を現した人のエピソードなんかも取り揃えているので、好きな人には堪らないのかも。

    昔は遣隋使・遣唐使を派遣して勉強しに行っていた中国から、明治維新をきっかけに留学生が来るようになり、ピーク時は1万人もいたということ。そして、彼らが日本と中国の関係を支えてくれていたということ(留学生が多すぎて、当時の中国の役所では日本語が通じたとか…)は、今こそ思い起こす必要があるんじゃないかと。今はどうなんだろう。
    少し浅めな本ではありますが、むしろその空気感が非常に心地良い本でした。

  • 孫文、蒋介石、周恩来、魯迅、宋教仁、梁啓超。辛亥革命前後、中華人民共和国の礎を築いた錚々たる顔ぶれが日本に亡命や留学をし、本郷の弘文学院や神田の清国留学生会館といった馴染み深い土地で日々議論を交わし青春を謳歌していたと考えると感慨深い。戦後、西側民主主義の防波堤となった日本で、中華共産主義の萌芽が芽生えたというのはなんとも奇妙で歴史の数奇を感じる。明治維新後、列強諸国に比肩した日本を手本として1万人超の中国人が訪日したことは誇りであろうし、一方でその後の満州国や日中戦争を遺憾に思う。

    各国の保護主義が進み緊張状態が続く昨今、明治維新同様、理想を掲げ縦横無尽に飛び回る若き情熱が必要な時代なのかもしれない。と、「維新號」の饅頭を喰いながら思う。

  • 関係地図あり。参考文献は、本文中の言及のみで、注、参考文献表はなし。

  • 難しい。思想史の知識がないと読めない。

  • いつもブラブラしている神保町や早稲田、本郷にこんなにも中国からの留学生が住んでいたとは知らなかった。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。
    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=7904

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著者プロフィール

1950年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。同大講師、中国広東省国立中山大学講師を経て執筆活動に入る。現在、慶應義塾大学訪問教授。『柴玲の見た夢』(講談社)、『新華僑 老華僑』(共著、文春新書)、『中国共産党を作った13人』(新潮新書)、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(上下巻、新潮社)、『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)他。

「2017年 『近代中国への旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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