あの午後の椅子

著者 :
  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560092422

作品紹介・あらすじ

常に歌人であることの意味
 好評を博した『もうすぐ夏至だ』に続く、待望の第二随筆集。最新の連載「風通しのいい窓」(「PHPくらしラクーる」)や「あすへの話題」(日本経済新聞)を中心に、各紙誌に発表した随筆の数々がまとめられている。
 まず巻頭に収録された、表題ともなった書き下ろしの随筆が読者の心を打つ。これは「あの午後の椅子は静かに泣いてゐた あなたであつたかわたしであつたか」(『夏・二〇一〇』)から採られている。
 珍しく陽のあるうちに帰宅した夫が、庭の椅子に座っている妻の河野裕子に声をかけたとき、夫ははっきりと「さっきまで泣いていた」様子を見てとった。それは妻が乳癌の再発を告げられてからひと月ほどたったある日の午後。夫は「彼女の横に腰かけ、同じほうを向きながら、何も話さなかった。慰めもせず、冗談で元気づけようともせず、泣いていたわけも訊かず、ただただ横に座って居ただけだった」……。
 この秀逸な一編から巻末まで、ポエジーな文体が奏でる、常に歌人であることの意味を問い続ける著者の真摯な姿勢を、読者は心ゆくまで堪能できるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で偶然見つけた本。そのタイトルと著者に惹かれて何の迷いも無く借りた。よかった。静かな湖畔で読んでいるような、清逸な時を楽しめました。

    タイトルの「あの午後の椅子」は、著者の永田和宏さんの短歌の一節。

    あの午後の椅子は静かに泣いてゐた
     あなたであったかわたしであったか

    この短歌の背景を冒頭に書かれている。癌の再発で無くなった妻であり、歌人でもあった河野裕子さんを詠った短歌。短歌に自身の想いを託せることが、その背景にも関わらずいいなと思った。

    そんなにいい子でなくていいから
     そのままでいいから おまへのままがいいから

    これは小島ゆかりさんの短歌。これに添えられている著者の言葉に教えられます。特に小中高の子ども達をもつ親御さんたちには読んでほしいなって思います。

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著者プロフィール

永田和宏(ながた・かずひろ)京都大学名誉教授、京都産業大学名誉教授。歌人・細胞生物学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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