- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560091005
感想・レビュー・書評
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妊娠がわかったときの主人公のテンションの低さ。周りがうかれるほど自分自身はひいていったり…そのやさぐれっぷりが手に取るようにわかり、読んでいて「あなたは私ですか!?」と言いたくなったほど。
日記形式で淡々と語られるマタニティの日々はコミカルなんだけど時々すごく泣きたくなったり。派手な作品ではないのに、そのよさがじわ〜っとしみる、とってもいとおしい一冊だ。
主人公マキが、やさぐれながらも彼女なりにおなかの子を受け入れていく過程の描き方がとってもよかった。居酒屋で初胎動を感じて、お店の人々に祝福されるシーンとか。旦那を始め、脇役たちもなかなかにユニーク。特に、ネットで知り合った「きのうちつやこ」さん、母親学級で出会ったスタイリッシュ妊婦佐伯さんとの交流シーンが楽しかったな。(彼女らもそれぞれの事情があって、そこでも色々考えさせられる。)
ふふふと笑わされながらも、盛り上がってくるこの涙はなんだろう。マキもよく唐突に泣いてたけど、マタニティ期って嬉しさやら哀しさやら苦しさやらなんやらかんやら、様々な感情がごっちゃまぜになって言葉では表現できないんだよね。自分もかつて感じたそんな複雑な感情がわ〜っとよみがえってきた。
そして、出産するうえでマキの心のしこりになっている亡き父親の存在。彼の死の乗り越え方も、また角田さんらしい描き方だなと思った。
もうひとつ、この小説の魅力がフード描写。マキが、旦那が作る食事がどれもうまそう。事細かに描写してくれてるおかげで、生活がリアルに感じられた。
「毎日はいつも、だれかしらの誕生日なのだ。毎日どこかしらで祝われてしかるべき、とくべつな一日を、私たちは過ごしている。」
あとがきに記された角田さんのこんなコメントがまた優しくて、私の涙腺をダメ押しで刺激してくる。そっか、そう考えると、なんか不思議。誕生って神秘だよな…なんてことを大げさな感じじゃなくごくごく自然に受け入れさせてくれるのだ、このマタニティ小説は。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私もそうだった。分かる、分かるよ~。
と、思いながら読みました。
子供が出来て、本当なら喜ばしきことなのに、周りが喜ぶにつれて冷めている自分。
そう、母性なんて、妊娠したから出るもんじゃない。最初の子なら尚更。
そして、作者さん、妊娠の経験がないとあとがきで読んでさらにビックリ。 -
読了日2009/12
妊婦だったのはもうかなり前のようだけど、今でもよ~く覚えてます。
出産経験のない角田光代さんがどうしてこんなに詳しく妊婦の気持ちがわかるのか不思議。
しかも、そのとーり!そうそう!!って思う所がいっぱい!!
私もダメ妊婦だったから、共感するところイッパイで、私だけじゃなかったんだぁとちょっと安心しました(笑)
産婦人科で先生に「おめでたですよ」と言われ「めでたいですかねぇ~」と返してしまう主人公マキちゃん・・何を隠そう、私も産婦人科での初診察の時に、先生に「おめでたですよ」と言われて、私の表情があまりにも微妙だったので先生が恐る恐る「えっ、生み・・ますよね・・・?」って確認されたくらいだから(笑)
約8か月、少しずつ少しずつ母親になっていく主人公・・そうなんだ、初めから母性バリバリのママじゃなくてもよかったんだぁと思いました。
妊婦時代に読みたかった・・・
それにしても、私、この主人公にかなり似てて笑えた!これは私の事を書いた本か??って思っちゃうほど(笑)
バカみたいなこといってひろを困らせたり、妊婦教室で人知れずドン引きしたり・・・
妊娠8か月くらいの時に「も~たいがいでうっとうしんだけど~!ずっとお腹にまとわりつくのやめてほしい!!!もう離れて~~!!」とか大きなお腹に急にキレたりして、ひろにあたり散らしてたのを思い出しました。
陣痛が来て病院に行ったところで物語は終わったけど、マキちゃんはきっとママになってもこのままだと思う。
だから、私もこのままでいていいのだと勝手に解釈。
いいママにならなくてもいいのだ!自己中でわがままで子供は二の次のママでいいのだ!それでいいのだ!!
時間とわが子が成長させてくれるのだ・・・きっと -
ただいま産後三ヶ月。妊娠中のことを思い出して、そうそう分かる!とうなづいてニンマリしたり、涙をじんわりにじませたりしながら読んだ。「妊娠中は心を穏やかにしないとお腹の中の赤ちゃんに悪いよ!」などという話を聞いては、イライラカリカリした自分を母として足りない人間のように、情けなく感じていたけれど、赤ちゃんってきっともっと強いもの。本書の中では「幾度もくりかえしてきた、祈りにも似たそういう気分」「さらっぴん」と表現されているが、妊娠期間の母のちょっとした気分なんてものを、赤ちゃんははるかに超えた存在なのだ。産まれてきて、たった数カ月でも自分とは別の人格を持って生きている我が子と過ごしていると、それはストンと腹に落ちる考え方に感じる。妊娠中の不安な時期に読めたら、もっと肩の力を抜いて妊娠期間を過ごせたかもしれない。
また、主人公と夫との会話が何とも良い。カフェで何気なく耳に入ってきたカップルの会話にくすりと笑ってしまい、知らないそのカップルを愛おしく感じてしまうような、そんな気持ちを思わず抱いてしまう。自分にとっては、角田さんの小説の主人公の中で、最も共感できる主人公だった。 -
すごい感動した。子供が生まれることに前向きになれない女性が、前向きになれるまでの過程を描いていて、終わり方が希望に満ちていて泣きそうになった。
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いろんなことを思い出しちゃうね。
反抗期を迎えた子を持つ身としては、初心を取り戻せる本であった。 -
レッド・ツェッペリンは大好きです
でも ツェッペリンとは ほぼ関係ありません
ある日の「寄席」で
ある噺家さんの「一人酒盛り」を聴いた
それはそれはなかなか優れた一品でした
その噺家さんが全くの下戸であることを
あとで知った
その時の感じを思い出しました
私にとって、初めての角田光代さん
次の一冊に手が出そうです -
途中で、あれ?これってエッセイ?と思ってしまった。
最後のあとがきまで読んでから、いやいやうまいからです。と思う。
川上弘美とごっちゃになって、出産経験のない人の話だとは思わなかった。そうか、これ角田光代だ。
おもしろかった。
たまにジーンとなりつつ、読む。