地図になかった世界 (エクス・リブリス)

  • 白水社
4.22
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本棚登録 : 173
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560090190

作品紹介・あらすじ

舞台は南北戦争以前のヴァージニア州マンチェスター郡。黒人の農場主ヘンリー・タウンゼンドはかつて、郡一番の名士であるウィリアム・ロビンズに、両親とともに所有される奴隷だった。少年の頃、ロビンズの馬丁として献身的な働きをしたヘンリーは、いつしかロビンズから実の息子とも変わらないほどの愛情を受けるようになる。ヘンリーの父オーガスタスは、金をこつこつと貯め、苦労して一家全員の自由を買い取ったが、大人になったヘンリーは、みずから黒人奴隷のモーゼスを購入することで両親と決別してしまう。だがそのとき、大農園の主となったヘンリーが急逝する。若き妻ひとりと数十名の奴隷たちが残された農園のなか、「主人」と「奴隷」の関係にしだいに波紋が生じはじめる…。ピュリツァー賞、全米批評家協会賞、国際IMPACダブリン文学賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 1855年、ヴァージニア州に黒人奴隷を所有する黒人がいた。白人よりも良い「主人」でありたいと言った元奴隷のヘンリー、苦労して自分と家族を買い取った父、自由黒人として生まれた者、黒人に所有される黒人、内心は奴隷制に反対の保安官や黒人女性を囲う大農園主など、登場人物が多く、物語は頻繁に時間をスキップして、彼らの未来/過去を垣間見せながら非常にゆっくり進む。それは「地図にない世界」を掘り起し、再構成しようとする試みに思えた。そして苛酷な世界は最後に一瞬反転する。その瞬間の、喜びと輝きの強度に圧倒された(2003)

  • イーユン・リーのインタビュー記事の中に、「E・P・ジョーンズは『地図になかった世界』をいっさいリサーチせずに書き上げた」という一文があった。それだけでなんだか読んでみたくなり、全く知らなかったけれど入手。

    読んでみて、これをリサーチなしでイマジネーションで書いたということのすごさに圧倒された。
    まさかの究極の『神の視点』、聖書スタイル。
    登場人物が次々出てきて、ひとりひとりを深く掘り下げることはあまりないし、通常ならありえない超常現象的なものが起きたりもするんだけれど、聖書を読んだことのある人にはどこかノスタルジックな感じがするのでは。

    ちなみに黒人が黒人を奴隷にしていたという事例は本当にあったんだそうで。それにも驚かされた。
    あまり人には進められないけど、個人的にはまた読み返してもいいと思える作品だった。

  • 4分の3くらいまでは淡々と、何の事件も起こらずに進みます。時代や場面が、頻繁に変わったりして、淡々と進割りには読みづらい、理解しづらいかも知れません。ただ、慣れてしまうとそれほど気になるわけでもなく、すんなり作品世界には入っていけます。そして最後の4分の1で一気に物語が動き、「えっ、そんな結末になるの?」というエンディングです。そして、静かに哀しい余韻が残ります。アメリカの黒人奴隷の悲しみの歴史と言ってしまえば簡単ですが、あまりにも淡々とした日常生活として描かれているがために、かえって深い悲しみが読後に残る、そんな作品でした。一昔前のあめりかというと、テレビドラマ「大草原の小さな家」を思い出しますが、あの牧歌的な雰囲気だけはそのままに、こんな哀しい物語が紡げるとは。

  • 4.24/157
    内容(「BOOK」データベースより)
    『舞台は南北戦争以前のヴァージニア州マンチェスター郡。黒人の農場主ヘンリー・タウンゼンドはかつて、郡一番の名士であるウィリアム・ロビンズに、両親とともに所有される奴隷だった。少年の頃、ロビンズの馬丁として献身的な働きをしたヘンリーは、いつしかロビンズから実の息子とも変わらないほどの愛情を受けるようになる。ヘンリーの父オーガスタスは、金をこつこつと貯め、苦労して一家全員の自由を買い取ったが、大人になったヘンリーは、みずから黒人奴隷のモーゼスを購入することで両親と決別してしまう。だがそのとき、大農園の主となったヘンリーが急逝する。若き妻ひとりと数十名の奴隷たちが残された農園のなか、「主人」と「奴隷」の関係にしだいに波紋が生じはじめる…。ピュリツァー賞、全米批評家協会賞、国際IMPACダブリン文学賞受賞作品。』

    出版社からのコメント
    《柴田元幸氏推薦! 文学賞独占の歴史長篇》
    本書は、ピュリツァー賞、全米批評家協会賞、国際IMPACダブリン文学賞など主要文学賞を独占したほか、全米各紙誌の年間最優秀図書に選出され、世界的な注目を浴びた作家による歴史長篇だ。
    舞台は南北戦争以前のヴァージニア州マンチェスター郡。黒人の農場主ヘンリーはかつて、郡一番の名士であるロビンズに、両親とともに所有される奴隷だった。少年の頃、ロビンズの馬丁として献身的な働きをしたヘンリーは、いつしかロビンズから実の息子とも変わらないほどの愛情を受けるようになる。ヘンリーの父オーガスタスは、金をこつこつと貯め、苦労して一家全員の自由を買い取ったが、大人になったヘンリーは、みずから黒人奴隷のモーゼズを購入することで両親と決別してしまう。だがそのとき、大農園の主となったヘンリーが急逝する。若き妻ひとりと数十名の奴隷たちが残された農園のなか、「主人」と「奴隷」の関係にしだいに波紋が生じはじめる......。
    柴田元幸氏の推薦文を引く。「旧約聖書のように壮大な、人びとの喜怒哀楽が静かに詰まった、奇跡のような広がりをたたえた物語。アメリカの黒人の歴史、奴隷制の悲惨、そういうことに興味がない人でも、この物語には心を打たれると思う」


    原書名:『The Known World』
    著者:エドワード P ジョーンズ (Edward P. Jones)
    訳者:小澤 英実
    出版社 ‏: ‎白水社
    単行本 ‏: ‎447ページ
    受賞:ピュリツァー賞、全米批評家協会賞、国際IMPACダブリン文学賞

  • この作品は数年前に一度読んでいるのだけど流し読みというかちゃんと読めていなかったという思いがあり後悔が残っていたために再読した。南北戦争前の南部のある郡で一番の有力者である白人農園主に所有されていたある黒人奴隷がコツコツと金を貯め、まずは自身、続いて妻の、最後に息子の身分を順次買い戻して自由民となるのだが、最後まで残された息子が白人農園主に気に入られて農園の一部を格安で譲られ、自身も農園主となる。黒人ながら農園主として同じ黒人を奴隷として所有していく息子と息子のことをどうしても許せない父親、同じ黒人に奴隷として所有される者達の物語。早い段階で若き黒人農場主が病死してしまい若い妻が奴隷達と共に残される。そこで何か大きな変化が起こるのかというとそうではなく、それでいて関係するみんなに少しずつ変化が生じていき、という展開。黒人の黒人奴隷所有者は歴史上、実際に何人か存在していたらしい。南部の奴隷をテーマにした作品では往々にして白人農場主と黒人奴隷、という関係が語られると思うのだが所有者側も黒人にしたことでより複雑な物語となっている。特に主人公を設定せず登場人物全ての物語をそれぞれ語っていくことで大きな流れを作っている作品なので途中まではかなり読みにくさがあるのだけれど慣れると作品は世界に引き込まれてしまう、そういう印象。やはり凄い作品だった。

  • ただただ圧巻。19世紀の奴隷制度を描いた本作は、その奴隷制度を通して、人間の業の深さと底知れない恐怖を描き出す。帯で柴田元幸が語っているように、この本はまるで聖書のようでもあり、ノンフィクションのようでもあり、ずっしり重く我々の心に突き刺さる。小説の素晴らしさを凝縮した何かがここにあります。必読。

  • あるじから自身の自由を金で買い戻した黒人ヘンリー。ヘンリーはその後農園を持って成功し、黒人の奴隷監督官に33人の奴隷を管理させる...。

    作者は、ヴァージニア州で黒人が黒人を所有したという史実を知り、本作を記したそうだ。寡作で謎多き作者エドワードは、本作を描くにあたって膨大な資料を集めたものの、その多くは読まず、10年に渡る空想を経て三ヶ月で一気に書き上げたという。
    近年のアメリカ文学は小粒で物足りないと勝手に思っていたが、時として本作のような大作が生み出されるところは、アメリカ文学の底力の恐ろしいところだ。

    作風は、神の視点に立つ語り部が、農園に生きる者たちの悲喜劇を語る形式。老人が思い出しながら語るがごとく、時制はあちこち飛ぶ。が、基本的には読みやすく、現代的な小説作法に辟易することなく、物語の魅力にひたることができる。

  • 人間・どうしても・・差別化したいのは・・・世界共通・・・・ただ・・・・・「牧畜」「肉食」「農耕」「草食」民族で差別方法は違う!

  • [ 内容 ]
    舞台は南北戦争以前のヴァージニア州マンチェスター郡。黒人の農場主ヘンリー・タウンゼンドはかつて、郡一番の名士であるウィリアム・ロビンズに、両親とともに所有される奴隷だった。
    少年の頃、ロビンズの馬丁として献身的な働きをしたヘンリーは、いつしかロビンズから実の息子とも変わらないほどの愛情を受けるようになる。
    ヘンリーの父オーガスタスは、金をこつこつと貯め、苦労して一家全員の自由を買い取ったが、大人になったヘンリーは、みずから黒人奴隷のモーゼスを購入することで両親と決別してしまう。
    だがそのとき、大農園の主となったヘンリーが急逝する。
    若き妻ひとりと数十名の奴隷たちが残された農園のなか、「主人」と「奴隷」の関係にしだいに波紋が生じはじめる…。
    ピュリツァー賞、全米批評家協会賞、国際IMPACダブリン文学賞受賞作品。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 80pぐらい読んだけど、
    全体の3/4が聖書のように家族史なのか~
    うーーん、このペースでずっと進むのかぁ…
    うーーん。。

    2013/10/18

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