- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560090060
作品紹介・あらすじ
哀愁とユーモアに満ちた、「アイリッシュ・バラッド」の味わい。珠玉の8編を収めた傑作短篇集。
感想・レビュー・書評
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オブザベーションに基づいたクールな反射。荒涼としたモノトーン、色彩の兆しを感じながら頁をめくると、湿度がわずかに上がり それはかすかに触れた人肌かもしれないし、人の意志かもしれない。程よい距離を学び 自足の在り方を知る。アイルランドは短編の名手を育む魔法でもあるのかと思う。ヴァレンタインズも好きだった。ウィリアム・トレバー、アリステア・マクラウド...、気温が低い日にまた読みたい。
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哀愁とユーモアに満ちた「アイリッシュ・バラッド」の味わい(帯のキャッチ)
本筋として描かれているのは人……それも少し何かを抱えている。
それだけであれば、他にいくらでもお話はあるだろう。
これが「バラッド」呼ばれる理由は、その小道具にある。
干し草、湿地のサギ、ナナカマドの火
ヘッドライトにおびえて立つキツネ
アカスグリの茂みの香り
山羊の乳とウナギ
オレンジをかじって女のもとへ向かう男
星空に神を問う神父
不安でブーツを履いたまま眠る男
外からの穢れを追い払うように外でおしっこをする女
何をやっているのかよくわからない人たちの話が、こうまで心に残るなんて……。
穏やかで過激で、風のように通り過ぎる物語たち。 -
一編ずつゆっくり読み進めている間、ずっと頭の中でセピア色の映像を見ているような読書体験だった。女性ならではの豊かな感受性に裏付けられた、柔らかく抑制された筆致が最大限の効果を引き出している。良い短編集。
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淡々とした流れで表面的には静かな物語ばかりですが、でも決して静かではなく、どれも人間の業を感じさせるストーリーです。短編の順に沿って徐々に作品に引き込まれ、面白くなっていきます。訳者が言う「語られなかった言葉により大きな意味がある」という言葉がよくわかる作品集です。
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荒涼としたアイルランドの情景浮かぶ短編集。
みんな寡黙なのだけれど、心の中で色々なことを思っている。
きっと読み手はそれを行間から感じるのです。
どこか漂うのは寂しさとピートの香り。 -
暗い…おそらく昼日中が舞台であろうに…暗い…何故だ…
でもその暗さがきっと心地いい… -
4.21/181
出版社(白水社)からのコメント
『封建的で、因習に縛られる男たち、内なる衝動に突き動かされ、息苦しい日常の外へ飛び出そうとする女たち--「ケルト文化」が今も息づくアイルランドの田舎を舞台に、「人間の臭みと神話が融合した世界」を描いた短篇集。
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「青い野を歩く」
結婚の儀式を執り行った神父は、花嫁と過去に特別な関係にあった。花嫁の真珠が糸から抜け落ちる。神父は真珠を拾いあげ、手に彼女の温もりを感じる。思いを胸に秘め、神に問いかけながら、早春の夜、野を横切る。
「森番の娘」
森で働くディーガンは、妻マーサとむなしい結婚生活を送っている。知的障害のある息子、その出生に疑念を抱いている娘とも、うまくいかない。ある雨の日、ディーガンは森で迷った猟犬を拾い、娘の誕生日にプレゼントする。
「クイックン・ツリーの夜」
足を洗った水を外に捨てずに置くと、悪いことが家に入ってくる......。迷信深く、赤ん坊を亡くした経験があるマーガレット、雌ヤギと寝起きする隣人のスタック、ふたりの間にクイックン・ツリー(生命を与える木)の魔法がかかる。
* * *
小池昌代氏が「ぞっとするほどの、透明な悲哀を抽出する。放心した。素晴らしい小説だ」と絶賛する、珠玉の8篇。』(「Amazon」サイトより)
目次
別れの贈りもの/青い野を歩く/長く苦しい死/褐色の馬/森番の娘/波打ち際で/降伏/クイックン・ツリーの夜
原書名:『Walk the Blue Fields』
著者:クレア・キーガン (Claire Keegan)
訳者:岩本 正恵
出版社 : 白水社
単行本 : 225ページ -
悲しい恋の話が多かったかな。青い野を歩く…素敵なタイトルだ。アイルランドの女は強い。岩本正恵さんの訳書を読んだのは初めてだが、とてもいい。亡くなられたが残念で仕方がない。