デイヴィッド・ヒューム:哲学から歴史へ

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560084854

作品紹介・あらすじ

歴史に向かった哲学者の軌跡

 デイヴィッド・ヒュームの名を知らない者はいないだろう。ジャン=ジャック・ルソーやアダム・スミスとの華やかな交流(スミスはヒュームの存在なしには存在しなかった!)に象徴されるように、彼は18世紀啓蒙主義哲学の輝ける主役と言っていい存在である。
 ただ、意外なことにその実像はこれまでほとんど知られてこなかった。本書は『アダム・スミスとその時代』を著して初めて等身大のスミスを分かりやすく提示した著者が、ヒュームの全体像に迫る好著である。
その際、著者が重視するのは「印刷機から死産」した『人間本性論』ではなく、日本では(そして本国でも)ほとんど誰も取り上げてこなかった『イングランド史』である。
 こうした重心の移動によって浮かび上がってくるのは、〈哲学〉から〈歴史〉へと向かった巨人の姿であり、またそうした営為を生んだ彼の時代である。
 ヒュームに対する評価は、かつてないほど高まっているが、スコットランド啓蒙研究の第一人者による本書は、まさにその中心に位置すると言っていい。今後数十年の座標軸となる決定版。

感想・レビュー・書評

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  • イングランドの歴史を知らず、スコットランド啓蒙を知らず、歴史学者の方法も知らない私には、大変難しい本でした。
    けれども、逆に、ヒュームその人、その哲学、スコットランド啓蒙、イングランド史、歴史学に興味が湧きました。

  • デイヴィッド・ヒュームに対する評価は、かつてないほどに高まっている。数多の哲学者たちの目から見れば、彼は人間の認識に対する、また哲学の本質そのものに対するわれわれの理解の成立を支えた、ウィトゲンシュタインの言語論的転回を予見していた者である。世界についてわれわれが抱いているさまざまの信念や、それらが表出するときの言葉のありように注目することが哲学者の努めであるという主張を貫いたため、ヒュームは現代におけるみずからの後継者と同じく、社会のもつ整合性を浮き彫りにし、人間の行動習性を分かりやすく示すものとして、信念の体系を人類学に基づいて理解するという道を切り拓いた思想家のひとりと思われている。数多の歴史家たちの目から見ても、ヒュームは近代というものを先読みしていた人物だった。

  • デイヴィッド・ヒュームは因果関係ですら単なる習慣の産物でしかないとするほどの懐疑論の哲学者として知られているが、本書は彼を歴史家として見直すことを主眼に置いている。だが、だからと言って、彼の哲学を放っておくわけではない。むしろ、彼の歴史家としての仕事の意義は、若いころのそうした哲学の醸成があったからこそであるとしている。
    ヒュームが歴史叙述で重要視したのは、軽やかな読みやすさでも、絶対的な基準のもとで規定される歴史の読み方・流れでもなく、その時代ごとの人々の意見opinionが歴史を作るという哲学的原理なのだと筆者は主張する。そして彼の歴史を否定することは、彼の徹底した哲学を否定することなしには可能ではなく、その意味で彼の歴史叙述は深く根を張るものである考えているようだ。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=7023

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著者プロフィール

アバディーン大学、ケンブリッジ大学に学び、1967年、ケンブリッジ大学でPh.D.を取得。1965年にエディンバラ大学講師に就任し、後に同大上級講師を務める。現在、同大名誉フェロー。1970年代以降、スコットランド啓蒙研究を一貫してリードしてきた。イグナティエフ・ホント編『富と徳』(未来社)の著者の一人。本書のほか『アダム・スミスとその時代』(白水社)がある。

「2016年 『デイヴィッド・ヒューム 哲学から歴史へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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