希望のヴァイオリン:ホロコーストを生きぬいた演奏家たち

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560084786

作品紹介・あらすじ

「これらの楽器は、あの世からの証言なのです。」
 テルアビブの楽器修理人アムノン・ヴァインシュテインは、一族がナチスに全滅させられたことをきっかけに、ホロコーストをくぐりぬけた楽器の修復と再生「希望のヴァイオリン」プロジェクトを立ち上げた。さまざまな人々や遺族・友人が、彼の元に楽器を持ち込んだ。
 それらのヴァイオリンは、あるものはドイツのゲットー内で結成されたユダヤ文化同盟のオーケストラで演奏され、ユダヤ人の強制収容が本格化する直前にパレスチナへ渡った。またあるものは老朽船に定員の3倍から5倍もの難民とともに詰め込まれ、各国間の外交駆け引きのはざまで、約束の地を目前にして地中海からインド洋上までたらい回しにされた。アウシュヴィッツでは、楽器を演奏できることが囚人の生き延びる可能性を高め、ノルウェーでは一挺のヴァイオリンがユダヤ人排斥運動の口実となった。そしてある日出会った楽器は、まさにアムノン自身につながる品だった――。
 メンゲレの誕生日を祝うパーティーで演奏した囚人や、ヴァイオリンの腕前を武器に両親の敵をとった少年など、苦難の時代を楽器とともに生きた演奏家たちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • バイオリンはユダヤ文化において好んで演奏される楽器だった。オーケストラ団員の多くがドイツ製の最高品質の楽器を携えてパレスチナへやってきた。戦後、ホロコーストでドイツ人が犯した残虐行為の数々を知ると、彼らはもはやその楽器を弾こうとしなかった。なんであれ二度とドイツと関わりを持ちたくなかったのだ。そのため一流の演奏家はたちがドイツ製の楽器を弾かなかったので、イタリア製やフランス製のバイオリンが20世紀の後半に名声、価格ともにドイツ製をはるかに凌駕した。偉大なバイオリン奏者にはユダヤ人が多く、彼らがイタリアかフランスで作られた楽器しか演奏しないことから、音楽界の残りが追随して、これらの楽器がもてはやされ、ドイツ製の楽器は顧みられなかった。今日でもドイツ製の楽器はイタリアやフランスで製作された同党の楽器に比べて、ごく安い値段で売られている。

  • 【新着図書ピックアップ!】ホロコーストをくぐり抜け、楽器修理人アムノンの手により修復されたたヴァイオリンと、音楽を力に生き延びたその持ち主たちの物語。
    「これらの楽器をかつて演奏した人々の幾人かは、悲しいかな、ホロコーストで沈黙させられてしまったが、アムノンが愛情を注いで修復したヴァイオリンを通じて、その声と精神は生きつづけている。」P.15
    ”Violins of hope : violins of the Holocaust--instruments of hope and liberation in mankind's darkest hour”の翻訳書。

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