ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560084519

作品紹介・あらすじ

「官」と「民」の凄まじいせめぎ合いを描いた全米図書賞受賞作!

 本書は、現代中国を「人びとの野望と独裁体制とがぶつかり合う戦場」と位置づけ、大変革の波に翻弄されながらもしたたかに生きる人びとや、戦う姿勢を崩さない人権活動家、若き愛国主義者たちの姿を通して「生身」の中国の本質に迫ったルポである。
 一九七九年に金門島から大陸側に泳いで渡り、のちに中国を代表するエコノミストとなった林毅夫。スクープを連発し政府批判も厭わない『財経』元編集長・胡舒立。自身が作成した愛国主義的な動画がたいへんな人気を博した唐傑。若者の圧倒的な人気を集め、一躍時代の寵児となった作家の韓寒。そして、当局から「好ましからざる人物」と見なされる艾未未や劉暁波、陳光誠――本書には有名無名を問わず、挫折に屈することなく「夢」を追い続ける魅力的な人物が数多く登場する。
 人びとの希求するものを富(カネ、豊かさ)、真実(知る権利、表現の自由)、心のよりどころ(信仰、伝統の復活)とし、国家をも揺るがしかねない深刻な社会問題からくすりと笑えるエピソードまで、一つひとつのストーリーを個人と国家の相克として鮮明に描き出した傑作ノンフィクション! ピュリツァー賞最終候補作。

感想・レビュー・書評

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  • NEWYORKER のライターとして八年、中国に駐在した著者による、同時代中国のレポート。

    取材先の人物が圧倒的に多く、立場も様々。劉暁波・艾未未ら国際的にも著名な反体制派から、市井の路上清掃員まで。それぞれの立場から語られる「中国の夢」の実像、その洪水のようなエピソードの数々が、マジックリアリズムの小説を読んでいるのではないか、という錯覚をもたらす。

    根本に、一党独裁社会に対する不審があるのは見えるが、本書の視点は、著者自身が専制社会をどう思うのかではなく、中国人たちがどう感じているのか、どう将来を展望しているか、にある。非常に良質なドキュメンタリーとして、記憶にとどめたい。

  • 検閲やインターネット規制などで人民を統制する一方、世界第二位のGDPや鉄道空港等インフラ整備を大躍進させた実績。その裏には桁外れの腐敗が蔓延してはいるものの、カネが全ての風潮は急激な経済発展と表裏一体でもある。資本主義先進国が辿ってきた道筋に、(社会主義国家ながら)ある程度まで到達した中国の人々の、次の「よりどころ」は何か、本書には中共と人民間の様々な軋轢のエピソードが出てくるが、本質的な問いかけはそこになる。無論その答えは提示されないが、同じ課題は日本やその他の先進国にとっても共通のもので、その点、他人事としては読めない一冊かもしれない。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=5738

  • 2018年5月22日読了

  • アメリカ人のジャーナリストによる中国レポートであり、「情熱」と「独裁主義」という二つの勢力が衝突するさま(16ページ)が三部構成で描かれている。

    本書の内容は、著者が特派員として過ごした8年間の取材からなるものだ。インタビューの相手は様々で、立場や信条なども違うけれど、一党独裁の国ならではの困難に翻弄されている様子が見てとれる。その一方で、どのエピソードからも中国に対する著者の愛情が伝わってくる。

    外国の生活を描いた本を読むと、その国に行ってみたいという気持ちが湧き上がることが多い。でも本書を読んでもその気持ちにはならなかった。それはやはり、思ったことを口に出せない国は怖いな、という感想による。さすがに住めないな、という気持ちだ。にもかかわらず、その国が世界でもっとも多くの国民を擁していることに、改めて驚いた。

  • #154

  • 著者は北京駐在時代に『The New Yorker』誌で「Letter from China」というコラムを連載していたエヴァン・オズノス。

    著者が中国で暮らし、取材し、接触した多くの人たちの言葉・行動を元に、今の中国社会事情を描き出している。描かれるのは超有名人から彼の住む近所の人までさまざま。

    第2部真実では中国共産党がまさにオーウェル「1984年」のオセアニア政府を地で行く情報操作ぶりに恐怖する。

  • [個欲へ]鄧小平が号令をかけた改革開放後の中国を、「野望の時代」と捉えたノンフィクション作品。富、真実、そして心のよりどころを求めるようになった数々の個人に焦点を当て、中国社会の歩みと今後の行く末を検証しています。著者は、『ニューヨーカー』誌などで中国特派員を務めたエヴァン・オズノス。訳者は、在中国日本大使館で専門調査員を歴任した経験を有する笠井亮平。原題は、『Age of Ambition: Chasing Fortune, Truth, and Faith in the New China』。


    国家レベルの政治やマクロ経済といった俯瞰的な視点で中国を考える作品が一方にあるとすれば、本書は逆に個人というミクロな存在に光を当てることにより中国の「肝」をあぶり出そうとした作品だと思います。著者の幅広いネットワークと透徹した観察眼もあり、その試みが見事な成功を収めているように感じられました。現代中国を考える上でぜひオススメしたい一冊です。


    本書から強く伝わってくるのは、過去とは異った意味で「個人」という単位が中国において立ち昇ってきている(というより一部では既に立ち昇っていたというべきかもしれませんが)という点。人々が「私自身」を気にかけ、「人生の意味」を問い始めるというのは、それだけで社会の方向性を決定づける可能性を有する変化なのではないかと強く感じました。

    〜鄧小平は号令をかけた壮大な民族の徒競走は、かなりの部分、公平な条件ではなかった。労働者にとってグラウンドは平らではなく、傾いていた。つまるところ、彼らがやらされていたのは同じ種目の競技ではなかったのである。〜

    中国モノの良作に多く巡り合えている気がする☆5つ

  • 2005年からの8年間、ニューヨーカーの特派員として中国に在住した著者による、市井の人からアイ・ウェイウェイまで、様々な中国の人を描いたルポ。特定の誰か、ではなくたくさんの個人を描くことによって、中国を今を浮かび上がらせる。

    後半になるにつれて、政治的な話も増えてくるが、例えば中国人向けの海外ツアーの話や、キャリアに迷う若者、マッチングサイトの話など、幅広い話が交差するのが最大の面白さ。

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著者プロフィール

1976年、英国ロンドン生まれ。ハーヴァード大学卒業。在学中も含め、2度にわたり北京に留学した。『シカゴ・トリビューン』の記者・特派員として9.11同時多発テロやイラク戦争を取材したのち、2005~13年、同紙および雑誌『ニューヨーカー』の中国特派員を務めた。現在はワシントンD.C.を拠点に『ニューヨーカー』のスタッフライターとして優れたレポートを発信し続けるかたわら、ブルッキングス研究所のフェローも務めている。処女作である本書は全米図書賞を受賞したほか、ピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)の最終候補となった。

「2015年 『ネオ・チャイナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エヴァン・オズノスの作品

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