初日への手紙II: 『紙屋町さくらホテル』『箱根強羅ホテル』のできるまで

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560084236

作品紹介・あらすじ

戯曲執筆への果てしない格闘

 「東京裁判三部作」の執筆過程を記録した『初日への手紙』に続き、「ホテル連作」ともいうべき著者の意欲作の創作姿勢を、前著同様甦らせる。
 収録されている『紙屋町さくらホテル』は一九九七年、新国立劇場開場の杮落とし公演として書かれたものである。初めて現代劇を中心に上演する国立劇場の台本を依頼された著者は、七十数年前の築地小劇場に注目する。その杮落としで会場ベルならぬ「銅鑼を鳴らした男」丸山定夫は、「新劇の団十郎」の異名をとる人気役者だった。
 丸山定夫は、戦争中各地に慰問する移動劇団「さくら隊」の隊長だったが、人気女優園井恵子らと広島に滞在していた昭和二十年八月八日、原爆投下によって被災、玉音放送の翌日死去する。
 この事実を背景に、例によって二転三転、最終的な台本になるまでの紆余曲折が続く。
 もう一つは二〇〇五年に上演された『箱根強羅ホテル』。戦争末期、天皇側近が画策したといわれるソ連との和平交渉にかかわる人々が織りなす捧腹絶倒の喜劇。誰が味方か、あるいはスパイか。二重三重に入り組んだ劇構造を創出するための、著者の格闘が浮かび上がってくる。戯曲の原点を知らしめる好著といえよう。

著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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